旧暦は月の満ち欠けを基準とする暦。毎月第1日目は新月の日と決まっています。そのため2日目は二日月、3日目は三日月、15日は十五夜というように、日付と月の満ち欠けが対応しています。旧暦の日付がわかれば、空に月を探さなくても、その姿かたちを知ることができるわけです。
ところで、「月の名前(呼び名)をあげてみてください」と聞かれたら、最初に思い浮かぶのは何ですか? きっと多くの人が「新月」「満月」と答えるでしょう。けれど新月と満月は、天文学的な意味を含む言葉。呼び名というには、ちょっと味気ないように感じます。
旧暦を使っていた時代の日本人は、月への想いや親しみを込めて、月に名前をつけていました。月の満ち欠けによって、呼び方が変わるのです。自然に対して粋なことをしたものだなぁと、感心してしまいますよね。
特に16日目以降の月には、ユニークな名前がつけられました。月の出が、前日よりも平均50分遅いことを踏まえると、名前の意味や情景がよく理解できます。
■16日目「十六夜(いざよい)」
前日の十五夜に比べて、少し遅い時刻に昇ってきます。昔の人は、月自身が出てくるのを躊躇しているように感じたのでしょう。「いざよい」とは「ためらう」という意味です。
■17日目「立待月(たちまちづき)」
さらに遅れて出てくる月を、まだかまだかと立ったまま待つ様子を表しています。
■18日目「居待月(いまちづき)」
立ったままでは疲れるので、座って月の出を待ちます。
■19日目「寝待月(ねまちづき)」
待ちくたびれて、ごろんと横になって月を待ちます。
■20日目「更待月(ふけまちづき)」
とうとう夜が更ける頃でないと月は昇ってきません。
このような月の名前から、人と月の関係が密接であったことが伝わってきますね。ちなみに今日(11月12日)は、旧暦の閏9月20日にあたるので「更待月」です。月の出の時刻は21時21分(東京)。私たち現代人にとっては、まだ夜も早いうち。ですが、街灯がなかった時代、闇夜を照らすのは月明かりのみ。昔の人にとっては、今でいう深夜のような感覚だったに違いありません。暗闇の中で、人々が月の出をどれほど待ちわび、月の明かりを求めていたことか。暮らしぶりを想像すると、昔の日本人と月が親密な間柄だったことがわかります。
さて、今年も残すところひと月半あまり。大手雑貨店や書店などでは、来年の手帳のコーナーが賑わいを見せていますね。 近年は、西暦の日付の近くに旧暦の日付が併記されていたり、月相図(月の満ち欠けのマーク)が載っていたりと、暦をたしなむための手帳もずいぶんと種類が増えてきました。こうした手帳を使うと、月の名前が自ずとわかるのでとっても便利。「月ともっと親しくなりたい!」という人は、手帳というツールを活用してみては? 月の存在がより身近なものに感じられるようになり、月の見え方も今までとは違ってくるはずです。
(2014年11月13日 10:15)
こちらもおすすめ