「王子様」みたいな男性っていますよね。整った容姿、素敵に見えてしまう職業、パーフェクトな気がする経歴…思わず恋に落ちそう。でも、それって本当に王子様なんでしょうか?作詞家として華やかな世界もたっぷり見てきた緒田茉莉が、様々な男性を分析していきます。第2回は「姉のいる男」。そう、姉の存在ってなかなかの鬼門みたいです…。
姉のいる男
人の性質や思考というのは家庭環境に大きく影響される。兄弟構成、親の性質や教育方針、経済状況はもちろんのこと、住まい、親の職業、祖父母の有無なども、繰り返される毎日の中で時に微妙な、時に多大な影響力を持つ。
生まれたときから、すでに姉はその男の前に君臨する。女の子は精神的な成長が早いので、たとえ年子であったとしても姉としての自覚はあったりする。幼い頃は年が近いなら、おままごとやプリキュアごっこに付き合わされ、年が離れているなら、その男のためにプラレールを組んでくれたり、積み木で遊んでくれたりしたであろう。
その後、幼稚園や小学校に入れば、姉の存在は大きなアドバンテージになる。その男にとってすでに姉の送迎や行事で行き慣れた場所となり、先生とも顔見知り、在園在学期間が重なれば上級生には姉の友達がたくさんいるのだ。どんな性質の姉であったにせよ、何もかもが初めての第一子に比べたら負荷は少ないに決まっている。
さらに成長していけば、親の留守には姉がご飯を作ってくれたり、忘れたお弁当を届けてくれたりしたかもしれない。一飯の恩は忘れてはならないのだ。そして姉に好きな男ができれば、その恋模様も男は目撃することとなる。バレンタインのチョコを作ったり、おしゃれに気を使ったり、鳴らない携帯を寂しげに見つめたり、吹っ切るために髪を切ったり。女とはこういうものなのかと姉を通して学んでいくのである。
姉の前ではただの弟
姉のいる男にとって、女とは母親と姉である。無意識のうちにその二人を通して、自分の好きになった女を見つめている。そう思ったほうがいい。母や姉と違うタイプを求める男もいれば、同じようなタイプを求める男もいる。どちらにしても彼女たちのことを知ることが、その男の攻略への近道であることは間違いない。
そしてあなたが出会った姉のいる男は、頼り甲斐があって、仕事もできるかっこいい男かもしれない。ただ、人は誰でもいろんな顔を持っているから、長く付き合っていくと違った一面も見ることがあるだろう。少しびっくりするかもしれないが、それもその男の一部であると愛せるなら、その付き合いはより深くなっていくと思う。
私の親戚である姉のいる男もそれなりのイケメンで、英語も流暢に話す商社マンなのだが、先日父親を病気で亡くした。早くに母親も亡くなっていたので、喪主は長男であるその男がつとめた。葬儀にあたって喪主は慌ただしくあちこちへ指示を出しながらも、とても冷静で、物腰柔らかに、弔問客へ対応もしていた。一段落してその男が姉や親戚が集まるところへやってくると「さすがだねー。立派になったもんだ」親戚たちが声をかけた。照れたように笑った顔は昔のまんまだった。
そこへ葬儀会社のスタッフが「喪主様、こちらはいかがいたしましょう?」と聞きに来た。「うーん、ちょっと検討させてください。」と男が答えると、「承知しました。」葬儀スタッフが去って行った。すると男は私の隣にいたその男の姉に「ねーちゃん、どうする?」と不安げに聞いた。姉はため息をつきながら「そんなのいらないに決まってんでしょ。検討する必要なんかない。」と吠えたのだ。…ん???その男は「わかった。そう言ってくる!」と先ほどのスタッフを追っていった。…んんん???「なんにも変わってなんかないのよ。」呆れたようにつぶやくその男の姉はどことなく嬉しそうだった。
ねーちゃんの前ではただの弟。一生懸命にしっかり者の喪主を演じたその男にとって、大切な居場所なんだと思う。
(※2016年9月13日 10:15 公開記事)