いよいよ夏本番。暑くて眠れずバテ気味…という人も多いのでは?
もちろんエアコンに扇風機、涼感寝具など、寝苦しい熱帯夜を快適に過ごすためのアイテムはいろいろあります。
が、忘れちゃいけないのは夏の風物詩とも言える先人の知恵。打ち水や風鈴、そして怖い話で、手軽に気分もひんやり涼しくなりたいところです。
といってもガチな心霊話は苦手な筆者…ここは男女のあれこれを絡めたお話をご紹介したいと思います。
死者とまぐわう…『牡丹燈籠』
日本の怪談と言えば『四谷怪談』『番町皿屋敷』『牡丹燈籠』が有名どころ。とりわけ『牡丹燈籠』は悲恋物語だし、ビジュアルイメージの美しさもあって、どこか切なさを感じさせますよね。
あらすじをざっくり説明しますと。
身分違いの恋を反対され病んで亡くなった娘と、その死を悲嘆して後追いした乳母。死してなお想いを遂げるべく、美しい娘は亡霊となって牡丹燈籠を持った乳母を従え、下駄をカランコロンと鳴らしながら夜な夜な恋人のもとに現われ、まぐわいを重ねます。
男が日に日にやつれていくのを不審に思った従者が男の床を覗くと、男が抱いていたのはなんと骸骨。
慌てて下男は悪霊除けのお札を家中に貼るも、結局は乳母の亡霊に買収され、お札を剥がしてしまいます。
邪魔なお札がなくなりすぅっと家に入っていった二人の亡霊は、ついに恋人をあの世に引きずり込み、永遠に自らの手中に納めてしまうのです。その恋人の死顔は恍惚とした表情だった、ということで…。
ベッドの中に入り込んでくる幽霊や妖怪や悪魔の話は、実は世界各国にあるみたいですよ。
ヨーロッパの淫魔「インキュバス」
もともとはキリスト教の悪魔で、女性に取り憑く淫魔とも呼ばれています。なんと取り憑く相手の理想の男性の姿に化けて夢に現われ、夜な夜な快楽に溺れさせて堕落させるとか。そして最後には悪魔の子を妊娠させてしまうそうです。
もともとは不倫や強姦などで望まぬ妊娠をした際の弁解として、悪魔の存在が言われるようになったとの説が有力。
ちなみに、男性にはサッキュバスという全裸の美女の姿をした淫魔が取り憑きます。
彼女に魅入られると、精も根も尽き果てるまで毎晩夢の中で行為をさせられ、快楽中毒となってやがては廃人化すると言います。
彼らとの愛の交歓は、そりゃもうたまらない快楽とのことですが、それと引き換えに精気を吸い取られ、挙げ句の果てには命を取られてしまうなんて…。
インドの悪魔「カーマ・マーラ」
カーマ・マーラはインドの悪魔。お釈迦さまが悟りを開くために瞑想していたところ、三人の若い美女に化けて誘惑し、邪魔しようとした淫魔としても有名です。
もちろん、お釈迦さまは女体の誘惑などには負けず、悟りを開いたんですけどね。
このカーマ・マーラは人の心の中にもともとある煩悩の権化とも言われています。悟りを開く前とはいえ、あのお釈迦さまにも美女三人分の煩悩があったのか…と思うとちょっと複雑。
中国の化け猫「金華猫」
化け猫の金華猫(きんかびょう)も、美しい異性に変身して若い男女をたぶらかしては人の精気を吸う妖怪。
魅入られると、めくるめく夢のようなときを過ごすことができるようですが、やがて正気を失って眠ったまま起きなくなってしまうのだとか。
治療方法は「金華猫を捕まえてその肉をあぶって食べること」で、男性ならメス、女性ならオスの肉を食べないと即座に死んでしまうそうです。
ちなみに、金華猫にはオスとメスがいますが、人間に変身する際は男女どちらにでも化けられるので、同性の金華猫に憑かれてしまった場合には絶対に助からないとされています。
終わりに
怪談話で気温が下がるかいな、と言うなかれ。
夜、シャワーを浴びるとき、ベッドに入ってまどろむひととき、こうした妖魔のことを少しだけ思い出してみてください。
多少は背筋が寒くなる…かもしれませんよ。いや、むしろ煩悩が芽生えて悶々としちゃうかも?