天体の動きと歴史上の出来事はシンクロする?マギー・ハイド×鏡リュウジが「ユング心理学」を紐解く

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占術家のためのユング心理学入門

占いを学んでいると、たびたびユングの名前を目にしますよね。精神分析研究の第一人者であると同時に、占星術やタロット・易占にも精通していたユング。でも、ユングと占星術の関わりについて、詳しく知っている人はそう多くはないのではないでしょうか。

「占術家のためにユング心理学入門」を開講

2021年3月、英国の占星術家であり、ユング心理学に造詣が深いマギー・ハイドさんの『ユングと占星術』の刊行を記念し、オンライン占いスクール「URANAI ACADEMY(占いアカデミー)」にて特別講座「占術家のためのユング心理学入門」が開講されました。

著者のマギー・ハイドさんと、翻訳を手がけた鏡リュウジさんを講師に迎えた2日間の講座の内容は、「ユングとはどういう人物なのか」「ユングはなぜ占いにとって重要なのか」「ユング心理学がどのように私たちの占いの理解を深めてくれるのか」といったこと。

マギーさんいわく、ユングは「近代の思想家の中では、ほとんど唯一、占いに真剣に向き合った人物」なのだそうです。「占い師がユングから学ぶことは多い」という前提のもと、マギーさんは、ユングから学べることを噛み砕いて語ってくれました。

講座は「マクロコスモス」と「ミクロコスモス」の2部構成

2日間の講座は、「マクロコスモス」と「ミクロコスモス」(AsAbove So Below)という2部構成になっていました。これは古来の神秘思想や占星術、占いに共通する「大宇宙と小宇宙(人間)は相似形」だという教義にかけた、ちょっと粋な構成と言えるでしょう。

「ユングは“心理学者”なので、個人の心の中だけの問題を扱っているように思われがちですが、実はそうではなかった」とマギーさん。ユングは「人類、特に西洋の精神史、集合的な意識(と無意識)の進歩、変容のプロセスにおける問題(つまり大きなスケール、マクロコスモス)を念頭に置きつつ、個人の心について深く思考を巡らせていた」と言います。

ユングの歴史観と占星術「魚座の時代」

1日目の講座は、時代の枠組みをマクロな視点で捉えることに主眼が置かれました。こちらは「今、なぜ私たちが占いを信じることは難しいか」という問題と深く関わっています。

ユングは自身の内面においても、“近代的で合理的なNo.1の自分”と“前近代的で非合理的なNo.2の自分”という矛盾と葛藤を抱えていたとのこと。この葛藤はユングに強烈なインパクトをもたらした(ユングの幻視体験を記録した『赤の書』に著されている)そうなのですが、ユングにとって、これは彼個人の問題であると同時に人類史の問題でもあったようです。

マギーさんはこんなふうに続けます。
「近代に入ってから、人類の精神は主観と客観を分離し、客観的で合理的な意識を手に入れました。この状況は、占いの“主体と客体が溶け合うような神話的な世界観”と対立しています。

ユングにとってそのような歴史的な変化は、占星術で予測可能なほど、星の動きとシンクロしているとされていました。春分点がゆっくりと黄道の星座たちを逆向きに通過していくのに応じて、時代精神は変化していくというのです。春分点が一つの星座を通過するのに、およそ2000年強かかるため、この2000年単位が“一つの時代精神”となります」

ユングは特に「魚座」を重視していたそうです。なぜなら、天球(観測者を中心とし、天体がそこに貼りついているかのように見える仮想的な球面のこと)上における春分点が、魚座に入った頃にキリストが生まれたから。

「魚は初期キリスト教にとって重要なシンボルでした。魚座は2匹の魚からなる星座で、1匹目は上方に、2匹目は水平に泳いでいます。春分点が上向きの魚を通過したとき、人々の意識は“上向き=神の方向”を向いていましたが、2匹目の魚に春分点が入った頃から近代へと行こうし、人々の心は水平方向、要するに物質主義的になったというのです」

マギーさんはユングの言う、魚座をはじめとする星座と春分点の対応について、東洋の精神にも触れつつ、細かく解説してくれました。“心理学者”のユングが、このような壮大な占星術的歴史観を持っていたということ自体、大きな驚きです。

私たちは、2匹目の魚、つまり近代的な時代(「深みの精神」に対する「この時代の精神」)を生きながら、占いという目に見えない次元を考えるといった、難しい問題に突き当たっていると考えられます。

個人の心「心のマップ」ではなく開かれた心へ

2日目の講座では、マギーさんは「ミクロコスモス」として、個人の内面についてのユングの考え方を解説しました。ユングによる「個人の心の構造(無意識と意識)」のモデルをわかりやすく説いたのです。「自我、シャドウ、アニマやアニムス、セルフ、元型、さらに心の4つの機能と性格タイプ」など、ユング心理学の基本的な概念も登場しました。

さらに、現代の占星術の中でそうしたユング心理学の概念、即ち「心のマップ」と占星術の惑星や星座などの要素を対応させる試みがなされ、いわゆる「心理占星術」を作ろうとされてきた、というお話も。

しかし、驚くのはここから。マギーさんは『ユングと占星術』の著者でもあるので、「心理占星術」の提唱者かと思いきや、それを否定するようなことを語ったのです。

「ユングにとって本来、心とはそんなにわかりやすいものではなく、また型にはまったものではないのではないでしょうか。狐に象徴されるように、もっとトリッキーで自由で予測不能なものであって、簡単に地図は描けません。

心は世界の外側に広がっていて、自然や偶然との出会い、シンクロニシティが起こる中で、私たちの心は大きく揺り動かされるのではないでしょうか。占いとは、そのような機会をつくるものだと思います」

占いでは、予想外の方法で起こるシンボルの動きに付き従うことが重要なのですね。それは、今の時代の合理的な考え方だけでは説明できない、人の心の深い部分とつながっているのかもしれません。

豊富な事例で楽しみながら学んだ2日間

ここまで読んで、ずいぶん難しそうだと思ったことでしょう。でも、2日間のセミナーではシンクロニシティや占いを巡り、長年に渡ってマギーさんが経験してきた出来事の中から、たくさんのエピソードや事例が語られ、その一つ一つが本当に興味深かったのです。

共に太陽星座が魚座だという、マギーさんと鏡さんが醸し出すまろやかな空気感や、聞き手に寄り添うように語りかける言葉も魅力の一つに。2人の親密さや、まるで以心伝心しているかのようなスムーズな同時通訳も印象的でした。

これまでは「占いと心理学」と言うと、占いで心理分析をする、心の中を探る、といったことのみをイメージしていた人も多いはず。でも、今回の講座を通して、本来はもっと大きな事柄がテーマとなっているのだと受け止めることができました。

自分と世界との関係がどのようになっているのか、そして自分の心がもっと大きな何かとつながっているのではないか。そんな不思議な感覚を得た2日間。この学びを深めるためにも、マギーさんの本をきちんと読むことが重要だと言えるでしょう。

(文=ココロニプロロ編集部)

『ユングと占星術』(青土社)
著者:マギー・ハイド  翻訳:鏡リュウジ/2021年2月25日発売
星々の運行とシンクロニシティ――占星術の興味からも心理学の関心からも楽しめる、心理占星学書の決定版

今後のイベントの情報などは、URANAI ACADEMYの公式サイトをご覧ください。

 

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