好きな人に手紙を書いたことはありますか?
想いをしたためたものの、相手に出す勇気が出なかった…そんな経験はないでしょうか。
岩井俊二監督の『ラストレター』は甘酸っぱい思い出を彷彿とさせる、美しい映画と言われています。
文字で描かれる恋愛
裕里(松たか子さん)は姉・未咲の葬儀の場で、未咲の娘・鮎美(広瀬すずさん)から、未咲宛てに高校の同窓会の案内が届いていると知らされます。
姉の死を告げるために同窓会に参加した裕里。そこで、学校のマドンナだった姉本人と勘違いされてしまうのです。
さらに同窓会で、初恋の相手・鏡史郎(福山雅治さん)と再会します。裕里を未咲と勘違いした鏡史郎と文通が始まり、やがてそのことを鮎美に知られることになり…。
面と向かっては話せなくても、文字だとスッと言えるってことありますよね。さすがに手紙を書く人は少ないでしょうけれど、現代はSNSやアプリを通して気持ちを語る男女は多いようです。
親密化過程を踏まない男性と女性
ところで、人はどのような過程を経て親しくなるか、ご存知でしょうか。
1973年、Robert A. Lewis(ロバート.A.ルイス)は、男女が結婚を形成するまでの間、どのように関係を発達させるか、その親密化過程を論文にしました。それによると、人は以下の6つの意識段階を踏んで結婚に至るというのです。 1. 類似性の認知
2. お互いを特別視する、いい関係の構築
3. お互いを知り合う自己開示
4. 得手不得手をうまく噛み合わせる役割取得
5. 役どころがぴったりハマって居心地のよさを感じる役割適合
6. 2人で1つ、といったペアとしての結晶意識
ただ、こういった段階を踏むのは、あくまで「対面による関係作り」の場合。現代のような文字だけのやり取りだと、また違ってくるのです。
というのも文字でのやり取りは、ある種独特な「気安さ」を生みます。それは、1や2の段階をショートカットして、いきなり3へと飛ぶ「気安さ」なのです。
相手の顔が見えないまま「実は私はね…」とぶっちゃけトークをして、言葉上の共感を得る。するとそれだけで、自己開示がうまくいったという錯覚に陥ってしまいます。
実際には相手はロクに理解せず、適当に話を合わせているだけかもしれません。でもそれは、文字からは読み取れないのです。
本当はわかり合っていなくても「相手は自分を受け入れてくれたんだ」と思う。そして、一気に心の距離が近づいたように錯覚してしまう…そんな「誤解」が生まれやすいのが「文字だけでつながる恋」の特徴です。
文字でつながる恋の弊害
お互いの人間性をすり合わせるのに、文字だけではとても足りません。目を見て、顔を合わせて表情を読み、たくさんの時間を費やして言葉を交わし、初めて「自己開示」になります。
しかし、大概はわかり合っていると誤解したまま一線を越え、なんとなく噛み合っていないと感じつつも「そんなはずはない。相手は自分の理解者のはず」と思ってずるずる関係を続けてしまいます。
結果的に、合わない相手にしがみついて時間を無駄にする…といった状況に陥るのです。
確かに文字だと、普段は言えないことも言いやすいでしょう。でもそれは、本当の「自己開示」ではありません。相手と向き合い本心を語って、そうして初めてお互いの本質に触れる付き合いが始まるのです。
まとめ
文字でつながる恋の落とし穴、ご理解いただけましたでしょうか。
相手から思ったような反応を得られず、傷つくのが怖くて本心を見せられないなら、バーチャルな「恋愛ごっこ」しかできません。もし本気で相手と絆を築きたいと思うなら、勇気を出して対面でぶつかるべきです。
あなたにも、好きな人にしか見せない「顔」があるはず。それを、ぜひ出しましょう。そんなあなたを見て、相手は「特別な存在だ」と理解するのですから。
(※2020年7月1日 11:45 公開記事)