「好意の返報性」をご存知でしょうか。
相手から好意的なリアクションを引き出す際に活用する法則ですが、こちらには、一歩間違えると「都合のいい女」になってしまうという落とし穴が。
今回は、その理由と回避法をご紹介します。
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「好意の返報性」とは
心理学者のDennis Regan(デニス・レーガン)氏は、ある興味深い心理実験を行いました。まず美術鑑賞の名目で、複数の人に実験に参加してもらったのですが、参加者たちは「絵画を観て評価してほしい」としか言われていません。
鑑賞は2人ずつ行われ、片方は被験者、もう片方はデニス博士の助手です。なお、被験者はAグループとBグループにわかれています。
Aグループは、助手が鑑賞中に自分の分だけコーラを買い、鑑賞後に被験者に対して「福引券を購入してくれないか」と頼みました。一方、Bグループは、助手が被験者の分までコーラを買ってプレゼントし、その後で「福引券を購入してくれないか」とお願いします。
さて、AとBとどちらのグループで、より多くの福引券が購入されたでしょうか。そう、Bのグループの購入率が圧倒的に高くなったのです。
この実験を通し、人は「与えられた好意に対して何らかの方法で報いようとする」という心理傾向があることがわかりました。これが「好意の返報性」になります。
ただ、円滑な人間関係を築く上でよく活用される「好意の返報性」は、次に紹介する心理テクニックと合わせると非常に危険なものになるのです。
ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック
アリゾナ州立大学のRobert Cialdini(ロバート・チャルディーニ)教授は、実験を通して「door‐in‐the‐face technique(ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック)」を提唱しました。
どのような実験かというと、大学生に対して「非行少年の相談役として、無償で毎週2時間、2年間にわたってボランティア活動をしてほしい」と頼むのです。当然、多くの人が断りますが、その後で「では、1回だけ1日1時間できないか」とお願いします。
その結果、最初から「1日1時間を1回」とお願いするより、こういった段階を踏んでお願いするほうが、承諾率が50%近くもハネ上がったのです。このことから、最初に過大な依頼をした後で本命のお願いをすると、ストレートにお願いするより実現性が高くなる、ということが判明しました。
断りにくい心理への導き
例えば、自分に対して優しくしてくれた男性に「10万円貸して」と言われても、なかなかOKできないですよね。でも、断った後で「じゃあ2千円だったらどうかな?」と言われたらどうしますか?
以前、よくしてくれているし、最初の申し出を断った罪悪感があるし…ということで、承諾しやすくなってしまうのではないでしょうか。相手が彼氏や気になる相手だと、なおさらですよね。
「好意の返報性」と「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」が合わさると、人によっては「断りにくい心理」が作り出されます。そういう人は、小さな好意で大きな借りを延々と作られる「都合のいい女」になってしまうのです。
このような「落とし穴」にハマらないために必要なのは、次の3点になります。
・相手からの好意は、誠意をもって受け入れる
・相手からもらった「好意」を、「負い目」と思う必要はない
・相手から要求があっても、気が進まないなら「自分が返したい内容とタイミングで返せばいい」と思いなおす
相手からいただいたものは感謝して受け入れますが、そこに罪悪感を必要はないのだ、と気づくことが「都合のいい女」にならないための回避法なのです。
まとめ
「好意の返報性」の落とし穴とその回避法、ご理解いただけましたでしょうか。
タダほど高いものはなし、と言いますが、これは本当です。
もちろん、すべての好意を疑う必要はありません。ただ、何かで返してもらうことが前提になった瞬間、それは「好意」ではなく「作意」になりますので、ご注意を。
(※2019年11月23日 12:50 公開記事)