「嫌い」【石井ゆかりの星の相談室】vol.62

ノリコさんへ

占いに書いてあることが自分に当てはまっていない、と感じられるのですね。
占いに書かれていることが「当たっている！」と思えると人はなぜか、うれしさや興奮を感じます。
一方、見当外れなことが書かれていると、何もわかっていない人から「あなたはこういう人ですね」と言われたような、ある種の誤解を受けたような不快感を覚える、という人も少なくないようです。
占いを読むのがお好きでいらっしゃるなら、そこにピンとこないことが書いてあれば、ガッカリされ、怒りを感じられるのは当然だと思います。

ノリコさんのホロスコープを見ると、確かに、牡羊座の占いは当たっていない、と感じられてもおかしくないな、と思いました。

というのも、まず、多くの星が牡牛座に集まっています。水星・金星・土星がぴったりと牡牛座に重なり、さらに火星もここに位置しています。
これは、単純に「牡牛座的な傾向を強く持っている人」である、と考えることができます。

とはいえ、その牡牛座の星々には土星が重なっています。土星は「簡単には納得しない」星です。
つまり、ご自身の中にある牡牛座的な傾向を、ご自身では簡単には肯定しない方である、ということが考えられます。

ですので、牡牛座の占いを見ても「当たっている」とは思えないかもしれません。牡牛座的な傾向はあまり好きではないと感じる可能性もあります。
土星は、真の納得を得るために、あえて疑問から入る星なのです。土星がいる世界のテーマに関しては、経験を重ねるにつれて少しずつ、肯定できるようになっていきます。

五感を用いること、物質的なこと、物事を味わい楽しむこと、価値を理解し受け止めること、などが、ノリコさんの人生では、歩を進めれば進めるほどに「自分のこと」として受け取れるようになっていくかもしれません。

牡羊座的なものが嫌い、というのは非常に興味深いことだなと思います。
ノリコさんの火星は上記のように牡牛座にあり、土星と同居しています。火星は牡羊座を支配する星なので、ご自身の中にある火星的な部分、すなわち、負けず嫌いな部分や挑戦的な部分、快活で明るい部分、怒り、などに関して、土星的な「否定的な疑問」を抱いているところもあるのかもしれない、と思いました。

また、ノリコさんの「セルフイメージ」を司るポイントは天秤座にあり、月は双子座で、同じ風の星座です。そして、セルフイメージの場所の近くに、天王星が位置しています。

この配置は、非常に個性的で、独立心が強く、他人とごっちゃにされることを好まない配置、と言えます。また、牡羊座とは対岸にあって、とても対照的です。自分自身を客観的に捉えたい、という思いがここにあります。

セルフイメージを扱うポイントをアセンダントと言いますが、ノリコさんのアセンダントの配置を表現しますと、
たとえば
「クールで知的で独立心が強く、時代の先端を捉えながら、常に他者に気遣いを忘れず、洗練されて、優雅で個性的で、美しく、中性的でもある」
「知性を重んじ、客観的なものの見方を心がけ、公平公正に物事を考え、不正を嫌い、新鮮な切り口で物事を捉えようとする」
「強い、不思議な魅力をまとい、人を惹きつける。なぜか人の中で自然に目立ってしまう人」
というようなイメージになります。

この世界観は、牡羊座的な純粋さ・素朴さとは対照的です。おそらく、一般的な「12星座占い」を読むならば、天秤座か水瓶座（天王星は水瓶座の支配星です）の占いがしっくりくると感じられるかもしれません。

天秤座を支配する星は金星で、ノリコさんの多くの星が集まる牡牛座も、金星に支配されています。この金星が、水星や土星という、「疑念」の星とぴったり重なっていることに、なにか、ノリコさんのアイデンティティの複雑さを見る思いもします。

私も実は自分の星と土星がぴったり重なっているのですが、「自分」を象徴する星と、土星とが強く結びついている場合、自分自身のあり方や生き方に、少なくとも人生の早い段階では、ごく否定的な態度を取ってしまいがちなのです。

「自分が嫌い」という人も少なくありません。このあたりも、ノリコさんが牡羊座的なもの、また、自分に当てはまる部分の占いに関して、肯定的な思いを持てないことにつながっているのかな、という気がしました。

また、もしかすると、ノリコさんと深い関わりを持つ人、あるいはパートナーや家族などの中に、とても「牡羊座っぽい人」はいらっしゃるでしょうか。
もし、そういう方がいるとすれば、ノリコさんは鏡に映して自分を見るように、その方の存在を通して「牡羊座的な自分」を生きているところがおありかもしれません。

なぜなら、ノリコさんの牡羊座の太陽は、「一対一で向き合う、自分以外の誰か・他者」の部屋に位置しているからです。
他者との関わりを通して自分を見つける方、と言えますし、他者の中に自分の欠片を見つけて拾い上げる方、とも言えるかもしれません。

さらに、これは私の経験上のことなのですが、「占いが当たっていません」と私に直接意見をくださるのは、8割方、牡羊座の方です。
もちろん、「占いが当たらない」と感じる方は12星座それぞれにたくさんいらっしゃると思いますが、それを占い手に対して率直に「主張する」というのは、ひとつの特徴的な行動だと思います。

たいていは、自分の中で「占いなど当たらない」と考えて終わったり、友だちや身近な人と「占いなんか当てにならないよね」と話して納得したりで、終わることが多いのではないでしょうか。

一般に、面倒くささや、遠慮や、「どうでもいい」という思いなど、たくさんのハードルがあって、なかなか本人に「違うと思う」と伝えるまでには至らないように思います。

納得のいかないことを敢えて「納得がいきません」と、当の本人に主張するのは、とても情熱的で、挑戦的でもあり、パワフルなことです。
牡羊座は、自分の意見をストレートに、物怖じせず伝えることができる、とは、牡羊座の占いにたくさん書いてあります。このご質問を私に投げかけてこられたこと自体が私には、「ノリコさんは、牡羊座らしい方だなあ」と感じられました。

「占いが嫌いだ」ということは、私は、悪いことではないと思います。占いの中に自分の似姿を見つけて楽しむのも決して悪くはありませんが、「自分の生き方はどんな占いの中にも見つからない、自分だけのものだ」と信じられるなら、そのほうがずっと素晴らしいと思います。

私たちは誰もが「他の誰でもない、自分の人生」を生きたいと心のどこかで願っているものではないでしょうか。占いの記事はどうしても、いくつかのカテゴリの中に人を当てはめるような書き方になりがちで、そうしたこと自体に違和感を覚える人も少なくありませんし、むしろ、そのほうがずっと正しい姿勢のようにも思われます。
ノリコさんが「これこそが自分だ」と思える姿を、占いではない、なにか別の世界の中に見いだされるとしたらそれは素晴らしいことだと私は思います。

でも、私は星占いも楽しいと思っているので、もし、長々と書いて参りました上記のことに、ノリコさんにとって少しでもピンとくることがあるならば私は、うれしいな、と思います＾＾）

以上、ご参考になれば幸いです。

石井ゆかり