占い=迷ったときにそっと背中を押してくれる心強い味方!のはずですが、世の中には人の弱みにつけ込んで金を巻き上げる悪徳占い師も存在します。そんな業界の裏も表も知り尽くした占いバーの店員・蔵石が「二度とだまされないで」という願いを込めて、巷にはびこる詐欺占い師の実態を暴いていきます。
実家に泊まったときだけ気分転換にと来店されるGさんは、小学生のお子さんを持つシングルマザー。もともと神仏に興味があり、あちこちの寺社をめぐって歩くのが趣味なのだそうです。そうして方々の寺社をめぐるうちにとある尼僧に出会い、いつしか先生と呼んで師事するようになりました。
その先生は運勢の鑑定もおこない、鑑定は一回5万円。質問は一つだけ。最初に渡されるメモ用紙に聞きたいことを書いて渡せば、その質問に答えてくれます。しかし回答は決まっていて「霊が憑いてるから」。そのため結果的には除霊にさらに10万円。これが毎度のパターンでした。
また、この先生の弟子としてのメインイベントは、月に一度の護摩焚きです。参加費用はなんと一回5万円。これに参加しなければ弟子として認めてはもらえません。参加するだけで5万円、先生にお礼を最低1万円。これは心づけと言われて金額に決まりはないとのこと。金額が多いほど、次の会では優遇されます。さらに線香代が1本500円。10本単位での購入なので最低でも5000円。ロウソクが1本3000円。毎月68000円が必要になる会だったのでございます。
Gさんの子どもが熱を出したと言えば祈りが足りないからだと言われ、成績が下がったのも、親の言うことに反抗するのも、すべて信心の心が足りないからだと言われたそうです。
けれどGさんは朝晩の勤行も欠かさず、本当に信心深いタイプ。Gさん本人もこれ以上何をすれば良いのかわからず、先生に訊ねました。すると先生はこう言ったのです。
「お金に決まってるじゃない」
Gさんは自分の耳を疑いました。けれど、先生は続けたのです。
「仏様がどうして言うことを聞いてくれるかわかってる? お金を払うから聞いてくれるのよ。わたしの言葉は仏様の言葉よ。もっと信心を深めたいならお金を持ってきなさい」
Gさんはここでようやく、この先生はオカシイと思うようになりました。けれど、どうしても怖くて逃げ出すことができなかったのです。それは日頃からその先生が言っていた言葉が原因でした。
「わたしを裏切ってこの会から離れようとした人はみんな歩けなくなったり、命を取られてきたわよ。わたしに逆らうと仏様がお怒りになるからね」
歩けなくなった人も、命を取られた人も、Gさんは直接見ていません。実際にいるのかもわからない。けれど、そんなことを言われ続けたら怖くなるのも無理はないでしょう。自分のことはともかく、子どもに悪いことが起こったらと考えると、どうしてもその先生から離れられなかったそうです。
そんなGさんにある日、お子さんが核心を突いた一言をおっしゃいました。
「お母さんの神様は、ぼくがさみしがってても救ってくれないよね。本当に神様なの?」
Gさんは脳天をガツンとぶん殴られたような衝撃を受けたそうです。一番大切にすべき愛息子を孤独にさせてまで、毎月必死に通ってどうするんだろう。子どもにおもちゃやお菓子を我慢させて節約したお金を持って、夜に一人で留守番をさせて、いったい今までなにを祈っていたのだろう……。
Gさんは目が覚めて、会を抜ける決意ができました。当然のことながら、会を抜けたあとには息子さんが以前よりも笑顔でいることが増え、親子仲が格段に良くなりました。反抗的な態度も急速になくなったそうです。
本物の仏様は、息子さんに宿っておられたのかもしれません。Gさん親子が末永く幸せでいるように、わたしも願ってやまないのでございます。
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