占い=迷ったときにそっと背中を押してくれる心強い味方!のはずですが、世の中には人の弱みにつけ込んで金を巻き上げる悪徳占い師も存在します。そんな業界の裏も表も知り尽くした占いバーの店員・蔵石が「二度とだまされないで」という願いを込めて、巷にはびこる詐欺占い師の実態を暴いていきます。
以前、よく見えていたお客様の一人で、とても気の優しいEさんという24歳の男性がおりました。Eさんは4人兄弟の3番目、親戚も子だくさんで、お正月やお盆で血縁者が集まると、毎回すごい騒ぎだったそうです。
そんなEさんが仕事に行き詰まり占いに頼ったのがコトの始まりでございました。仕事の相談が一通り終わると、占い師が「ちょっと言いにくいんだけど……」と前置きをした上で「あなた、水子がいるわよ」と言いだしたのです。
実はEさん、とても端正なお顔立ちですが、あまりにシャイな性格で当時は女性とお付き合いした経験がありませんでした。そんなEさんに水子?!
Eさんは正直に交際経験はゼロだと伝えて、席を立とうとしました。すると占い師は、「うーん、よく見るとお母さんの水子ね。健康に生まれ育ったあなたが憎くて仕方なくて、恐ろしい形相であなたを睨みつけているわ」。
人間とは不思議なもので、水子が自分を憎んでいると言われると意識してしまうようです。Eさんも例に漏れず、兄弟がたくさんいる家系だから、水子の一人くらいいるかもしれないと考えました。占い師はさらに、水子が成仏して憎しみが消えれば、Eさんにも彼女がすぐにできると唐突に言いだしたそうです。彼女ができないのも水子のせいだと……。
水子を成仏させるためにはご祈祷が30万円と、Eさん自身もお祈りする必要があるので一体30万円の仏像を買うようにと勧められました。自分では60万円も用意できないからと、その日は帰宅することに。
帰り際に鑑定料金の1万円を渡したら、霊視もしたのだからと2万円余分に請求されました。頼んでもいない霊視を勝手にしておいて代金を請求するなんて、まさに押し売り。けれどEさんは占いとはこういうものなのかと、多少疑問に思いつつも黙って3万円を支払ったそうです。
帰宅して、一人でいろいろ考えることに疲れたEさんは、率直に母親に聞いてみることにしました。
「うちに水子っているの?」
返ってきた言葉は、Eさんには衝撃的でございました。
「忘れたの? いるよ。あ、ほら帰ってきた」
お母さんがそう言うと、玄関にはEさんの弟、四男の姿があったのです。
20年ほど前、Eさんのお母さんは、Eさんの次の子を流産したのでした。一人で泣いていると、幼いEさんがやってきて「お母さん大丈夫だよ。赤ちゃんちょっと行ってくるって。でもすぐに戻ってくるって言ってたよ」と言ったそうです。お母さんはEさんにまだ妊娠を伝えていなかったので、心からおどろきました。それから半年後、Eさんが「お母さん、ぼくの弟が帰ってきたね!」と言い出し、その月に本当に妊娠していたそうです。
「うちの水子は生まれ変わって帰ってきてるけど、あんたはこんなに仲のいい弟に祟られてるの?」
お母さんの言葉に納得したEさんは、仏像を買いに行くこともなく、詐欺もまぬがれたのでございます。その後、Eさんには無事に彼女ができました。気は強いけれど素直な女性で、お二人で来店されたときには、Eさん、本当に幸せそうでした。
ちなみに水子の祟りというのは、江戸時代のころにお金儲けのために寺社などが考え出したもの。本当に存在するのであれば、戦争があった時代などは水子の祟りであふれかえっていたことでしょう。ありえない祟りだということをぜひ知って頂ければと願います。
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