占い=迷ったときにそっと背中を押してくれる心強い味方!のはずですが、世の中には人の弱みにつけ込んで金を巻き上げる悪徳占い師も存在します。そんな業界の裏も表も知り尽くした占いバーの店員・蔵石が「二度とだまされないで」という願いを込めて、巷にはびこる詐欺占い師の実態を暴いていきます。
Sさんは40代後半で介護の仕事をなさっている上品な女性です。以前、何度かご夫婦でご来店いただいたのですが、仲がよかった旦那様は仕事の疲れからウツになり、ついに自死なさいました。
そんなSさんが、ある日何となく入った占いで夫が自殺したと伝えたところ、「成仏せずに、ご主人はまだ家で苦しみ続けている」と言われたのでございます。
Sさんは亡くなってまで苦悩を続けるご主人を救いたい一心で、その占い師の言うまま家に来てもらうことにいたしました。家の中に入ると床の間を見るなり、占い師は唐突に数珠をとりだして一心不乱にお経をあげだしたそうです。それを見て何事かと思っていると、「ここにご主人が泣きながら座っている」と言われたとのこと。
Sさんはびっくり仰天。一緒になって般若心経を懸命に唱えたそうです。
占い師が言うには……。ご主人を成仏させるためには、私(占い師)が週に一度は読経して慰めるしかない。ただ、成仏させるにはとてもエネルギーが必要で、一回の出張で3万円、最初に契約料で20万円。無事に成仏したらお礼に30万円必要だ。ご主人の苦しみはあまりに大きいため半年はかかるだろうと……。自ら「お礼」額の設定までしているあたり、厚かましさがいっそ清々しいような気もしないでもありません。
Sさんにはご両親からの遺産と、ご主人が残してくれた貯蓄が少なからずあったため、翌週からさっそく来てもらいました。最初に20万円と、10回分をまとめて50万円渡したそうです。その後、さらに10回分ずつを2回渡して合計が110万円になったとき、ご主人が夢に現れました。
夢の中でご主人は、「僕はもう楽になってるよ」と優しい笑顔で微笑んだのでございます。
Sさんは、占い師のおかげでご主人が成仏したのだと思いました。お礼の30万円をお渡ししようと来訪を待ち構えていると、占い師がやってきてこう言ったのです。
「今日は玄関をあけるなり、ご主人の嗚咽が聞こえた。今日から少し読経の時間を長くします」
Sさんは混乱しました。ここで初めて、占い師を疑う気持ちが生まれたのです。何かがオカシイ。夢に出てきた夫は、あんなに満ち足りた表情をしていたのに……。とりあえずその日、占い師にはいつもどおり読経してもらい、Sさんはネットで必死に本物と思える霊能者を探しました。この人なら……と思えた人を見つけて鑑定所に行くと、これまでとはまったく真逆のことを言われたのでございます。
「ご主人は生前、いつも窮地を不思議と救われていたはずです。とても徳の高いご先祖様がついていて、亡くなったときにもお迎えにいらしていますよ。大丈夫、成仏していますよ」
この霊能者の言葉を聞いていたとき、ふいに温かい気持ちに包まれ、ご主人がそばにいるような気がしたそうです。夫が喜んでる、この先生のところには夫が導いてくれたのだ。そう感じたSさんはインチキ占い師はすぐに断ることにしました。
支払った110万円はもう返ってきませんが、良い勉強料だったと思うことにするのと穏やかに微笑んでおられました。
インチキ占い師は、断りの連絡を入れると「お経を途中でやめると、あんたも成仏できないよ! 夫婦で永遠に苦しむことになるよ」と言いました。Sさんは「アアソウデスカ」と冷めた気持ちで答えたそうでございます。
ちなみにわたしの知るかぎり、ちゃんとした霊能者の場合は、お支払いは成仏させるためのお経の代金1万円程度と出張費(交通費実費分)ぐらい。本物は決して暴利をむさぼったりしないということを覚えておいていただければと思います。
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