2014.12.19

「“美人”を使いこなせない」 雨宮まみの“穴の底でお待ちしています” 第14回

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穴の底でお待ちしています

誰にも言えない、けれど誰かに言いたい、そんな内緒の悩みやモヤモヤ、しょうもないグチからやりきれないつらさまで、穴を掘ってこっそり叫んでみたい気持ちを発散する、「感情の吹きだまり」……。そんな場所がこのコーナーです。あなたのやるせない気持ちを、安心してブチまけてみませんか? 雨宮まみが聞き手をつとめます。長文の投稿歓迎いたします。

(マロンクリーム/女性/30代前半)
こんにちは。私の愚痴は「いつも似たパターンでコミュニティを追い出される」自分の性格についてです。パターンは十年くらい前から分かっているし、対処法もうすうす気付いてはいるのですが、それを実行できません。

例を挙げろと言われたら中学生くらいからたくさんありますが、一番分かりやすいのは昨年、正社員として勤めていた会社を辞めることになった顛末でしょうか。私はもともとメンタルが強くなく、新卒で比較的有名な企業に入社したものの人間関係にへとへとでした。たまに死にたくなり、SNSで「死にたいです」と書き込んでは、誰かに慰めてもらう……。そんな恥ずかしいことをよくしていました。

人間関係のストレスは好きなミュージシャンの追っかけで発散していましたが、深夜のライブもあって夜更かしして会社に行くので、会社でうとうとしてしまうことも多々ありました。それでもなんとか続けていられたのは、とにかく上司が寛大だったから。そもそもその会社に勤められたのも、大学の担当教授に超気に入られ、その口利きありきでした。全くやりたい仕事ではありませんでしたが、地方の女子大から東京に出られるというメリットにつられて決めたところがあります。

雨宮さんならもうお分かりだと思います。SNSで「死にたい」と書いて叩かれないのも、会社で寝ていて許されるのも、コネ入社が出来たのも、私が美人だからです。その上お調子者で、ちょっと媚びたり甘えるのも上手い、らしいです(自覚はありませんがよく言われます)。ですが、この「美人」、コミュニティに入る時は有利に働きますが、それ以降は一個も役に立ちません。というか、私は「美人」を使いこなせません。

会社の話に戻りますが、結局その寛大な上司(既婚)と飲みながら人生相談を頻繁にするようになり、ちょっといいなと思い始めたころ奥様にメールを読まれ、不倫を疑われました。別にやましいところはないのですが、相手を喜ばせたい気持ちで書いたメールの文面は読みようによっては不倫、というかほぼ不倫確定な感じで、またこれまでの素行も良くなかったので社内に味方は誰もおらず、退職することに。教授に報告したら(先生のリクエストで毎年バレンタインチョコを送っていましたから、住所は分かりました)、「それは仕方ないですね」とあっさりとしたもの。また、ミュージシャンの追っかけ仲間も、それまではとても親しくしていたのに「前から距離のとり方が苦手だった」(女性)とか「彼女が嫌がるから一切連絡しないで欲しい」(男性)と次々縁を切られました。

まとめると、美人で愛想がいいということでちやほやされ、調子にのり、まわりがうんざりしていることに気付かず、しばらくして誰からも相手にされなくなる。私はこれを延々繰り返しています。「凛としろ」と言われてもどうしたらいいか分からないし、「手に職を」と言われて資格を集めてみたりしましたが、メンタルが弱いとどんな仕事も立ちゆきません。今は細々と派遣の仕事をしています。彼氏がいたこともありましたが、やはり同じパターンで嫌われ、今は恋愛に積極的になりたくないです。声は掛けられますが。自慢のように聞こえたらどうしよう、と思いながら書いています。自分がジコチュウでわがままなのも、自覚しています。でも真剣に困っているし、実際全然幸せじゃないし、むしろまったく望んでいないのに嫌われ者だし、批判されずに愚痴を言いたかった。読んで下さってありがとうございました。

(※投稿内容を一部、読みやすいように編集させていただきました。)

昨日今日、急にしんどい状況が来た、というわけではなくて、長いこと苦しまれているようですね。心の不調で体調を崩す方もいらっしゃいますから、しょうが湯でも飲んでまずは温まってください。やけどしないように気をつけてくださいね。

マロンクリームさんの書かれていることで、気になった箇所は「教授に報告したら(先生のリクエストで毎年バレンタインチョコを送っていましたから、住所は分かりました)、『それは仕方ないですね』とあっさりとしたもの。」というところです。なぜ教授は、おそらくそれまではマロンクリームさんに好意的だったのに、あっさりした態度を取られたのでしょうか。

私は、「バレンタインにチョコを贈ってほしい」というリクエストに、何の下心もなかったとは言えないと思います。マロンクリームさんと具体的につきあいたいという気持ちではなくても、マロンクリームさんのような素敵な女性にチョコを贈られる関係であることや、チョコを贈ってくれる程度の好意はある、ということが嬉しかったのだと思います。それが上司との不倫騒動で退職に追い込まれたとなると、同情よりも先に「他の男とそういう疑いを持たれるくらい親しくしてたのか」という怒りが先に来たのではないでしょうか。

私はこの教授の怒りが正しくて、マロンクリームさんが間違っている、とは思いませんが、どちらが正しいという問題でもないな、と思います。この、「どちらが正しいともいえない」ときに、何をどう選択するか、ということが大事なのです。

例えば誰かに好意を寄せられて、でも、込み入った関係にはなりたくない場合、どうするか?という質問に「正しい答え」はありません。人によっては「傷が深くならないうちに、期待させないよう拒む」が正解でしょうし、「好かれているのは迷惑じゃないのだから、嬉しさを表現する。そのうち好きになることもあるかもしれないし」も正解でしょう。でも、この「正解」が、相手の思う正解と違った場合、人の怒りを買います。

マロンクリームさんが人に嫌われてしまうのは、たぶん「コミュニティの中でもめないために多くの人が実行している正解」とは違う「正解」の基準で行動されているからではないでしょうか。

けれど、私はマロンクリームさんに「そのコミュニティの中での正解を学んで、それに従え」と言う気持ちにはなれません。それは「空気を読め」と言うことと同じですし、嫌われにくくはなるかもしれませんが、自分の基準を持てず、嫌われることにビクビクするだけでは余計に苦しいような気がします。

上司との関係の場合、たぶん初期に上司の好意を拒むようなことをしていれば、マロンクリームさんが会社で居眠りしていることはもっと早くとがめられていたでしょうし、拒まなければ親しくなる機会はいずれにせよ来たのではないかと思います。どちらに進んでも何らかのマイナスはある。どうするのが正解だったかという答えはないし、「そもそも好意なんか持たれたくなかった」と思っても、持たれてしまうものはしょうがない。周囲の人から見れば「愛想良くしなければいいのに」ということなのでしょうが、私がもともと愛想良くないのに「愛想良くしろ」と言われるのが苦痛であるように、愛想がもともと良い人が「その愛想をひっこめろ」と言われるのも、同じように苦痛なのだろうと感じます。

大事なのは、「嫌われないようにすること」ではなく、「人の好意を大切にすること」だと思います。下心から来る好意や、マロンクリームさんが美人だから得られる好意ではなく、マロンクリームさんのことを思ってくれている人たちの好意です。「凛としろ」とか、「資格を取れ」とか言ってくれた人たちが望んでいることは「マロンクリームさんの精神や生活の安定」です。それは「自立しろ」というメッセージでもあります。

できないのはよくわかります。精神的に追いつめられているときは他人を思いやる余裕がなくなりますし、その状態を抜けると憑き物が落ちたようにケロッと元気になってしまうこともあるので、自分が死を考えるところまで追いつめられていたことが、体感として薄れていってしまう。「もう大丈夫」としか説明できないのですが、一晩中心配していた側からすると「もう大丈夫」では納得できないものがあるでしょう。「ありがとう。心配かけてごめんね」という、感謝や謝罪がないと、心配して損したと感じられます。感謝や謝罪ができないことに対しては「メンタルが弱いから」は理由になりません。私もこれで何度か大事な人間関係を台無しにしてきました。学習すればいいのに、うまくできません。自分にとって「甘える」というのは弱音を吐くことですが、それをこういう形でしてしまうと関係が壊れる、というのでは、親しい人、恋人を作ることはできません。

もちろん、何度でも新しい人と出会えるし、新しい人と新しい関係を作っていけます。でも、同じことを繰り返していたら「自分は良い人間関係が作れるのだ」という自信は、ずっと持てないままです。

他人に嫌われることを恐れなくてもいいし、嫌われることを回避するために自分の行動を規制する必要はありません。ただ、人の好意にもっと敏感になってください。「嫌われる」と書かれていますが、最初は好かれているのですよね。好意に甘える前に、自分を責める前に、大事に思われていること、大事に思われていた過去があったことを感じてください。

「美人で愛想がいいということでちやほやされ、調子にのり」という部分は、マロンクリームさんの美点です。人を楽しい気持ちにさせることができる人なのでしょう。マロンクリームさんはそこが欠点であるかのように書かれていますが、欠点と美点って裏表一体なんですよね。個性でもある。誰もが自分の個性と、それゆえの欠点を併せ持っています。好意が簡単に得られるがゆえに、好意に対して傲慢になってしまうというのが、マロンクリームさんの欠点なのでしょう。

何もかも失ってしまう前に、人とちゃんと関係を作っていけるという自信を得てほしいのです。職場の人との関係でもいいし、友達関係でもいい。ネットの人間関係でもいいです。ほっとするようなやりとりができ、一方的によりかからない関係を作れたら、そのとき初めて自分のことを許せるのではないでしょうか。同じことを繰り返す自分にうんざりする日々を、終わらせることができるのではないでしょうか。

「パターンは十年くらい前から分かっているし、対処法もうすうす気付いてはいる」、その聡明さを活かしてください。大切にすべき好意と、そうでない好意を見分け、「わからないときに、利害関係のない相手にアドバイスを求める」という甘え方をしてみてください。

好意は、対処次第で深い愛情に変わることもあるし、憎悪や嫌悪に変わることもある、ある意味やっかいな感情です。好きだった分、がっかりさせられたり、裏切られたと感じると「嫌い」に変わるのです。好意の領域で何が正しいのか判断するのはとても難しいですが、判断に迷ったとき、自分なりの「正しさ」とは何なのか、考えてみてください。

つらさが常態化しているとき、建設的な方向にものごとを考えるのは、もっともつらいことです。死を思うほうがよっぽど楽です。でも、建設的に考えることをどうかおそれないでください。どんなに深く愛されていても、最終的に自分を救う者は自分だけです。破滅的な気持ちになったとき、一度でいいから失うものの少ない道を、勇気を出して選んでみてください。


みなさまの愚痴を、雨宮まみが「穴の底」にてお待ちしております。長文大歓迎!
恋愛相手の愚痴も、職場環境にまつわる愚痴も、誰にも言えない愚痴も、「スポーツジムのおじさんの汗がキモイ…」みたいなしょうもない愚痴も、なんでもござれ。大なり小なり吐き出して気を楽にしませんか?
「どうしたらいいでしょう?」のような相談は受け付けておりません。ごめんなさい。


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雨宮まみ
雨宮まみ(あまみやまみ)
ライター。アダルト雑誌の編集を経て、フリーライターに。女性の自意識との葛藤や生きづらさなどについて幅広く執筆。女性性とうまくつきあえなかった頃を描いた自伝的エッセイ『女子をこじらせて』出版後、「こじらせ女子」がブームとなる。他の著書に対談集『だって、女子だもん!!』(ポット出版)、『ずっと独身でいるつもり?』(KKベストセラーズ)、『女の子よ銃を取れ』(平凡社)、『タカラヅカ・ハンドブック』
(新潮社)など。

「キレイになりたい!」と言えないあなたに。

『女の子よ銃を取れ』

他人の視線にビクビクしたくない、自分らしく堂々としていたい、かわいい、キレイと言われてみたい……そう思っていてもどうすればいいのかわからないし、「キレイ」への道が怖くてたまらない。
キラキラした「キレイになりたい」本を手に取ることすら怖いと感じるくらい、「キレイ」が重荷になっている人のための、自意識や他人の視線、自分の視線を解きほぐす本です。

雨宮さんより一言:
何をしても、何を買ってもうまくいかない、変われないしパッとしない……。そんな悩みは、本当は多くの人が持っています。それ以前に何をすれば、何を買えばいいのかもわからない人だってたくさんいます。この間まではわかっていたのに、急にわからなくなってしまった人も。そんなときに、自分を取り戻し、新しい自分を作り上げるヒントや、気持ちの持ち方の軸のようなものがあればいいなと思って書きました。落ち込んだときのおともにしていただけると嬉しいです。

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