誰にも言えない、けれど誰かに言いたい、そんな内緒の悩みやモヤモヤ、しょうもないグチからやりきれないつらさまで、穴を掘ってこっそり叫んでみたい気持ちを発散する、「感情の吹きだまり」……。そんな場所がこのコーナーです。あなたのやるせない気持ちを、安心してブチまけてみませんか? 雨宮まみが聞き手をつとめます。長文の投稿歓迎いたします。
内容の近い愚痴が二通寄せられておりましたので、二通一緒に掲載させていただきました。
まず、お二人に知って欲しいのは、このように年齢も環境も違っていても、同じような思いでいる人たちがいる、ということです。「えっ、年齢が上になるにつれて、自然とコミュニケーションが上手くなったりするもんじゃないの!?」「環境が変わればうまくいくんじゃないの!?」と逆に絶望されるかもしれませんが、早まったことをするのはやめて、ちょっとお水でも飲んで落ち着いてくださいね(未成年の方がいらっしゃるため、今回はお水でお送りしております)。
私自身、緊張のあまりテンパって変なことを言ってしまったり、ぜんぜん面白くない不快な冗談を言ってしまったりして、家に帰ってから、もうお風呂に入る気力もないほど落ち込むことがあります。特に大勢と接する場に行ったときなど、どうして人の会話を自然にうまく受け流せないのだろう、しゃべらなきゃ、しゃべらなきゃ、と焦ってつまらないことを言ってしまうのだろう、どうすればみんながやっているように、円滑に会話ができるんだろう……とグルグルしてしまい、「『上手にこなせるパーティー会話教室』とかがあるなら行きたい」と思うくらいです。
「話せない」「声をかけられない」こともいまだにあります。それは、好きな人や尊敬している人、仲良くなりたいと思っている人に対して、よく起こります。「嫌われたくない」「自分を印象づけたい」と思うあまり、考えすぎてしゃべれなくなってしまうのです。もう37歳なのに、本当にいやになりますねぇ。だから、まず「みんなが当たり前にできていることを、自分だけがうまくやれない」とは思わないでください。「自分だけ」ではなく、こういうことが苦手な人はたくさんいます。
今なら白状できますが、私は小学校、中学校、高校と、クラス替えや進学の前の春休み、毎晩一時間以上泣いていました。新しいクラスや、新しい学校でうまくやっていく自信がなくて、怖くてたまらなかったからです。バイト先を変わるのも、就職するのも怖かったです。
でも、今は少しそういう苦手意識が薄まってきたと感じるのも事実です。毎日人に会う環境ではない私にそう言われても、説得力はないかもしれませんが、まぁまぁ、もう少し聞いてください。
まずその理由の一つ目は、仕事でインタビューをするようになったことです。インタビューというのは、こちらが質問しなければ始まりません。最初は声がうわずりましたし、緊張のあまり同じことを二度聞いたり、もちろん言葉がつっかえたりもしました。今もします。でも、「何か質問しなきゃいけない」という、強制的にしゃべらなければいけない状況に置かれることが、私にとってはプレッシャーでもあり、少しだけ楽しくもあったのです。だって、質問すれば答えてもらえるし、「あなたの人生で大切なことは何ですか?」なんて、普通に知り合って会話しててもなかなか訊けないようなことを訊いてもいいんですから。失敗も多いですが、今でもインタビューで会話の訓練をさせてもらっている、と感じます。
私は、初めて会う人と話すとき、基本的にインタビューのときに近い気持ちを持つようにしよう、と思っています。まず、相手に興味を持ち、その人がどんな人か観察してみたり、どういうことに興味のある人なのか質問してみること。相手の良い部分を見つけ、そこを正直に褒めてみること。よく言われることですが、人は基本的に自分のことを話したい生き物のようです。質問したり、褒めたりするのは、相手が何かを話しやすくするきっかけを作ることだと思います。
自分のことを知ってもらおう、と思ってしゃべってみて、つまらない感じになるのはすごくつらいですよね。それに比べると、質問形で話しかけてみる、ほめる言葉を言ってみる、というのは、同じく勇気は要りますが、嫌な印象を持たれることはあまりないと思いますし、リアクションがあまりなくても、「話しかけてみる」ことを目標にしていれば、「あー、今日も話しかけられなかった」という後悔は、少なくともしないで済むかなと思うんです。
少し楽になった理由の二つ目は、SNSやメールの発達により、文字のコミュニケーションが手軽になったことです。私が会話で緊張するのは、会話は瞬発力が必要だからです。言われたことを瞬時に理解し、瞬時にリアクションしなければいけない。会話の運動神経がない人間には、それが本当につらいです。SNSやメールに書くことは、瞬時に考えなくてもいいですよね。人見知りであること、人との関係で失敗したことも、SNSにだったら書けたりしますし、同じ気持ちの人とつながることもできたりします。文字でのコミュニケーションや発信を、練習のようにやってみるのもいいかもしれないと思います。うまくいかなかったらアカウントを消せばいいだけですし、うまくいけば自分の好きなことを語って、友達を作ることもできるかもしれません。
最後に三つ目ですが、それは「コミュニケーションが下手な自分」を受け入れられるようになった、ということです。コミュニケーションが下手で落ち込むのは、会話が上滑りしている自分や、話しかけようとしてきっかけが掴めない自分が、すごくかっこ悪くて、情けないからですよね。そのかっこ悪さや情けなさを、自分の一部として認めてしまうんです。「自分ってかっこ悪いんだな」って。周りの人が接しづらく感じるのは、自分のかっこ悪さを必死で隠そうとしている人です。そのかっこ悪さに触れたら、この人は傷つくんだろうなぁ、と思うと、接しにくい、ツッコミづらいと感じるのです。自分でそのかっこ悪さを認めることができたら、そこに触れてはいけないムードが消えていきます。「ぎこちない自分」を、普段の自分として受け入れられたら、何より自分自身がぐっと楽になれます。「ごめん、人と話すの久しぶりだから、口がうまく動かなかった」って笑って言えたら、すごく楽です。それにたぶん、「会話が苦手」だということは、もうとっくに周りの人たちにはバレています。そして、それは致命的な欠点なんかじゃありません。バレていることを認めるだけで、状況は変わると思います。
私の友人で、やはり人見知りが激しく、会話の苦手な人がいますが、その人はそのことを自分で認めているので、「あー、また挙動不審になってる!」「テンパッてるねー」「落ち着きなよ」と、挙動不審ながらも周りに愛されています。本人はいまだに会話が苦手なことを気にしていて、初対面の人とうまく話せなかった、と本気で落ち込んでいるのですが、ごく親しい人たちはそういう部分を理解し、受け入れています。本人が「自分はかっこ悪い」と認めて、かっこつけたいながらも、かっこ悪い自分としてコミュニケーションを取ろうとしている気持ちが伝わっているからでしょう。
みんなに理解され、受け入れてもらうことって、たぶん不可能です。でも、理解してくれる人が一人でも二人でもいれば、生きていくのはすごく楽になります。ほたるさんは退職を考えることもある、と書かれていますし、緑のもちさんは年齢から察するに、たぶん学生さんなのでしょう。どうせ退職したり、卒業したりで離れる人たちなのだと思えば、少しだけ失敗が怖くなくなったりはしませんか? せっかくだから、周りの人が本当はどんなことを考えているのか、少し訊いてみようと思えませんか? しゃべるのが上手にならなくても、訊くことができて、相手の話に耳を傾けることができれば、十分だと私は思います。無理してしゃべらなくても、相手にしゃべってもらうきっかけを作って、きちんと聞いていれば、その姿勢は伝わります。言葉をべらべら発することだけが、「上手なコミュニケーション」ではないんです。こんなにべらべらとまくしたてている私が言うのもなんですけれど……。
人間関係で失敗したことのない人なんて、どこにもいません。上手な人でも失敗は必ずあります。それよりも大事なことは、自分がどう見られるか、人からどう思われるかばかりを気にしていると、他人のことを気遣うよりも先に、自分を守ることを優先する人間になってしまうことです。私がいちばん後悔している人間関係での失敗は、ほとんどこれです。会話が下手なことを気にしているお二人は、周りの人をしらけさせないようにすごく気を遣っている優しい人だと思います。どうか、自分のことを気にするあまり、その優しい気持ち、周りを思いやる気持ちよりも、自分を守ることを優先させる人にはならないでください。それは、会話が下手なことより何より、とても恥ずかしい、忘れられない傷になってしまいます。つらいときは、『君に届け』(椎名軽穂)でも読んで、不器用なりのコミュニケーションの方法の例を見てみるのもいいかもしれないですよ、とおすすめしておきます。
みなさまの愚痴を、雨宮まみが「穴の底」にてお待ちしております。長文大歓迎!
恋愛相手の愚痴も、職場環境にまつわる愚痴も、誰にも言えない愚痴も、「スポーツジムのおじさんの汗がキモイ…」みたいなしょうもない愚痴も、なんでもござれ。大なり小なり吐き出して気を楽にしませんか?
「どうしたらいいでしょう?」のような相談は受け付けておりません。ごめんなさい。
「キレイになりたい!」と言えないあなたに。
『女の子よ銃を取れ』
他人の視線にビクビクしたくない、自分らしく堂々としていたい、かわいい、キレイと言われてみたい……そう思っていてもどうすればいいのかわからないし、「キレイ」への道が怖くてたまらない。
キラキラした「キレイになりたい」本を手に取ることすら怖いと感じるくらい、「キレイ」が重荷になっている人のための、自意識や他人の視線、自分の視線を解きほぐす本です。
雨宮さんより一言:
何をしても、何を買ってもうまくいかない、変われないしパッとしない……。そんな悩みは、本当は多くの人が持っています。それ以前に何をすれば、何を買えばいいのかもわからない人だってたくさんいます。この間まではわかっていたのに、急にわからなくなってしまった人も。そんなときに、自分を取り戻し、新しい自分を作り上げるヒントや、気持ちの持ち方の軸のようなものがあればいいなと思って書きました。落ち込んだときのおともにしていただけると嬉しいです。
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