誰にも言えない、けれど誰かに言いたい、そんな内緒の悩みやモヤモヤ、しょうもないグチからやりきれないつらさまで、穴を掘ってこっそり叫んでみたい気持ちを発散する、「感情の吹きだまり」……。そんな場所がこのコーナーです。あなたのやるせない気持ちを、安心してブチまけてみませんか? 雨宮まみが聞き手をつとめます。長文の投稿歓迎いたします。
まず、お子さんもいらしてお忙しい中、穴の底にいらしてくださり、どうもありがとうございます。たまには人が淹れた、洗い物の心配をしなくてもいいお茶でも飲んで、一息ついてくださいね。
世の中って、いつの間にこんなに「前向きで明るい人こそ正義」という雰囲気になってしまったんでしょうね。少しでも愚痴を言おうものなら「被害者意識が強い!」と非難されそうで、何も言えなくなってしまいます。
みいみさんは「前向きなシングルマザーでいなければいけない」と思ってらっしゃるそうですが、私も「充実した独身でいなければいけない」と思っています。仕事以外に打ち込む趣味もないこと、活動している時間の80%はだらしない部屋着でいること、ときどき虚しくて寂しくて泣いてしまうこと……。なかなか人に言うことができません。でも、よく考えてみると、「言えない」というよりは「言いたくない」のです。言っても受け入れてくれると思うのですが、自分が惨めな独身女だということを人に知られたくない、という気持ちが強いです。みいみさんも、もしかしたら、前の旦那さんのことを考えてしまう自分、子供がいるのに「全て失った気持ちになっている」自分のことを、「言えない」というよりは、「人には知られたくない」という気持ちがあるのではないでしょうか。「前向きで明るいシングルマザーでいなければ」と思っておられるなら、それは絶対に人には言えない言葉になっていると思います。
でも、「前向きで明るい人」って、そんなにたくさんいるでしょうか。みんなが前向きで明るく生きていたら、満員電車の中はあんなに殺気立った雰囲気にならないでしょうし、Suicaの残高が足りずにゲートがピコーン! と閉まっただけで舌打ちされたりしませんよね。ゲートが閉まっても、両手を広げてアメリカ人のように「Oh~!」ってリアクションして、後ろに並んでた人も「ドンマイ!」ってハイタッチしてくるぐらいの、感じのいい社会になってるはずです。現実がギスギスしてるからこそ、みんな前向きで明るい人の姿を見たいし、そういう人に憧れるんじゃないかな、と私は思っています。
また、お子さんがいらっしゃると、悩みを話したときに、「でも、子供もいるし幸せじゃん!」みたいな、「愚痴封じ」の手を使われてしまうこともあるかと思います。それを言われると何にも言えなくなっちゃう、っていうマジックワード。「離婚してつらい」には「あんなダメ男と別れられて良かったと思いなよ!」、「仕事忙しくてつらい」には「仕事がなくて困ってる人もいるんだから、忙しいのはいいことじゃん!」、「育児大変でつらい」には「子供欲しくてもできない人もいるんだよ!」、「独身で先行き不安」には「自由な時間いっぱいあってうらやましいよ~、好きに生きられるのなんて今だけだよ!」……。そういう単純な励ましが有効なときもありますが、「どんなダメ男でも、家から一人いなくなったっていう欠落がつらいときってあるんだよ!」とか、「仕事あるのはありがたいけど、やればやるほど自分の力の足りなさを感じてつらいこともあるんだよ!」とか、ディテールの面で納得がいかないことも多々ありますよね。
私は自分のつらさを話したときに、「地球上には飢餓に苦しんでいる人もいるのに、君の悩みなんか贅沢な悩みだ!」と説教されたことがありますが、自分よりつらい例を見て「自分なんてまだまだ幸せなんだ!」と、「下を見て安心する」みたいな思考が健全だとは思えません。「今の生活のありがたみを噛み締めろ」ってことかもしれませんが、もちろん噛み締めてますし、それでもつらいことはあるし、そもそも「もっと幸せになりたい」と思うことの何がいけないんでしょうか。人の悩みやつらさを「贅沢な悩み」だと斬って捨てたい勢が、世の中にはたくさんいるんだなぁ、とよく思います。「自分のほうがもっと苦しんでいる!」と言いたい勢も。
苦しみや悲しみって、そんなに簡単に他人に「わかる」ものじゃないです。つらい気持ちっていうのは、すごく個人的で、その細部は自分にしかわからなかったり、自分にすらわからなかったりするものです。
わからない上で言いますが、離婚ってすごくつらいことですよね。自分をすごく苦しめた相手が、今ものうのうとどこかで生きていて、もしかしたら別の女とつきあって幸せ絶頂かもしれないなんて、ものすごい恐怖ですよね。私は、みいみさんが苦しいのは当たり前だと思います。前向きなシングルマザーに、無理してならなくていい、と思います。見た目だけそれなりにしてれば、「前向きなシングルマザー」って思われますから、そう思われたいのなら見た目だけそれなりにして、どこかで一人で泣いててもいいと思います。治療にすごく時間のかかる、深い傷を負ったようなものだと思って、無理して治ったふりをしないでください。少なくとも自分に対しては。
今は恋愛にも自信がなくて封印しているとのことですが、「不倫相手」と書かれているからには、前の旦那さんは不倫されていたのですよね。そんなの自信なくして当たり前じゃないですか。浮気されて、二股かけられて、傷つきもせず自信もなくさない人なんていないですよ。
私はそういうとき、枕抱きしめてふとんかぶって泣きます。できれば誰かの肩や胸で泣きたいから、十五分三千円ぐらいでそういう店があったら行くのに、とよく思います。つらさの真っ最中で、電車の中で泣きそうなときはサングラスをかけますし、トイレの個室に駆け込んで泣いたこともあります。でも、前向きに生きたいといつも思っています。周りを明るくできるような人になれたらいい、と思います。自分がつらいことと、前向きに生きたいことって、矛盾することじゃないです。つらいからこそ、前向きに生きたいし、明るい気持ちになりたい。だから、どっちの気持ちも否定しなくていいんじゃないでしょうか。
「全て失った気持ちになる」とのことですが、みいみさんはさまざまなことを経験されています。今、このように苦しんでおられることも含めて、みいみさんは感受性も、人生経験も豊かな方なのだと感じます。私はみいみさんよりも少しだけ長生きしているので、先輩ヅラして言いますけど、この苦しみを乗り越えるときは必ず来ます。今は想像もできないでしょうが、「苦しみを乗り越えた」ことは、何よりも確かな自信になります。それは自分が前向きに生きた証だからです。いろんな苦しみと戦いながら前向きに生きようと努力しているみいみさんのことを、私は今も十分素敵だと思います。
みなさまの愚痴を、雨宮まみが「穴の底」にてお待ちしております。長文大歓迎!
恋愛相手の愚痴も、職場環境にまつわる愚痴も、誰にも言えない愚痴も、「スポーツジムのおじさんの汗がキモイ…」みたいなしょうもない愚痴も、なんでもござれ。大なり小なり吐き出して気を楽にしませんか?
「どうしたらいいでしょう?」のような相談は受け付けておりません。ごめんなさい。
「キレイになりたい!」と言えないあなたに。
『女の子よ銃を取れ』
他人の視線にビクビクしたくない、自分らしく堂々としていたい、かわいい、キレイと言われてみたい……そう思っていてもどうすればいいのかわからないし、「キレイ」への道が怖くてたまらない。
キラキラした「キレイになりたい」本を手に取ることすら怖いと感じるくらい、「キレイ」が重荷になっている人のための、自意識や他人の視線、自分の視線を解きほぐす本です。
雨宮さんより一言:
何をしても、何を買ってもうまくいかない、変われないしパッとしない……。そんな悩みは、本当は多くの人が持っています。それ以前に何をすれば、何を買えばいいのかもわからない人だってたくさんいます。この間まではわかっていたのに、急にわからなくなってしまった人も。そんなときに、自分を取り戻し、新しい自分を作り上げるヒントや、気持ちの持ち方の軸のようなものがあればいいなと思って書きました。落ち込んだときのおともにしていただけると嬉しいです。
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