2016.06.23

「自分の気持ちを押し殺すことに疑問を持たずに生きてきた」雨宮まみの“穴の底でお待ちしています” 第36回

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穴の底でお待ちしています

誰にも言えない、けれど誰かに言いたい、そんな内緒の悩みやモヤモヤ、しょうもないグチからやりきれないつらさまで、穴を掘ってこっそり叫んでみたい気持ちを発散する、「感情の吹きだまり」……。そんな場所がこのコーナーです。あなたのやるせない気持ちを、安心してブチまけてみませんか? 雨宮まみが聞き手をつとめます。長文の投稿歓迎いたします。

(かぼちゃ/30代前半/女性)

はじめまして。私の情けない話を聞いて下さい。私は会社で出会った夫と結婚して4年半、1才になる娘がいます。

もともと、私は真ん中っ子で、上と下の兄弟が自己主張が強かったこともあり、控え目で真面目でいい子、というキャラクターで育ちました。顔立ちや声は可愛いと言われることもあるのですが、あまり自分に自信がなく、女子校育ちで、恋愛も不得手でした。

好きな人に彼女がいたり、自分の好きな人を他の誰かも好きだと感じると(その人がそう言わなくても、少しその気持ちを察知しただけで)、一歩引いて我慢するところがありました。

毎日顔を合わせる人だから告白しにくいとか、向こうから連絡がないからとか、色々考えて機を逃すこともあり、後から他の人に「何でアタックしなかったの? あなたなら告白したら絶対付き合えたのに」と言われたりして、後悔して泣いたりもしました。

そんな中、私を好きだと言ってくれ、他に障害もなさそうな今の主人と付き合いだしました。私は付き合ったら夢中になりやすいので、彼の良いところばかりを見て、20代後半だったこともあり、早々に結婚を意識していました。

付き合いが長くなる内に、徐々に彼の好きじゃないところも見えたり、あれ? と思うこともありましたが、結婚をはばむような大問題はなかったので、両家挨拶や式場予約も済ませました。

入籍日が近づくうちに憂鬱になっていたのですが、同じ会社の人だということや、式場も押さえてるのに今さらキャンセルしたら周りに迷惑がかかるし、そこまでして辞めるべきことなのかわからず、そのまま入籍予定日に入籍しました。

ただ、私は入籍してもやはり幸せな気分になれず、入籍して嬉しそうな主人を見て、「本来私もこんな気持ちで結婚をしたかった」と、落胆していました。

結婚とは別の話になるのですが、私はずっと、会社の上司のことで悩んでいました。

最初はセクハラがありました。上司は既婚ですが、誘われたり、メールがきたり、必要以上に触られたり。一度止めてもらうよう伝えたら謝られたため、特に誰にも相談していませんでした。その上司はパワハラなところもあり、自分の思う通りにいかないと攻撃的になるのですが、そのスイッチがわからず、いつもビクビクしながら接していました。

ただ、働いていたらこれぐらいの悩みは付き物だと考えていたし、希望部署で働かせてもらっている責任感や、仕事内容は好きで続けたい……そんな考えから、上司に反抗せず、周りにも相談せず、我慢し続けていました。

その人の下について数年、あるときまた上司から理不尽なことを言われた際、体が震えて止まらなくなり、話せなくなってしまいました。そこからカウンセラーの方にお世話になり、体が震えたのは拒否反応で、私は鬱状態なので、傷病休暇をとるように言われました。

私は「我慢したら乗り越えられる」と信じていたので、自分が鬱で休むことになったのは、青天の霹靂でした。でも確かに、朝起きられない、動機が激しい、涙が止まらないなど、みるみるうちに症状が出てきて、会社に行けなくなってしまいました。

でも、これをきっかけに、私は今回の上司のことだけでなく、他のことでも、いつも正しさや周りがどう思うかに気を取られ、自分の気持ちを押し殺すことに疑問を持たずに生きてきたなと気付きました。

そして、過去の恋愛でも、しっかり好きな気持ちと向き合い、アタックしていたら……。自分の気持ちにもう少し素直になっていたら、幸せだったのでは、といつも思います。

主人に物足りなさを感じ、色々要求してしまう自分が嫌ですが、自分の気持ちに素直に生きてこなかった自分がいけないんだから……と思うことをよく繰り返し、半年に一度は絶望的な気分になります。

結婚当初からこんな気持ちで、子供は考えられなかったのですが、今は子供を産み、けれどいつか主人と別れるのでは、と思うと、子供を泣きながら抱き締めたりしています。

これからは、ある程度、自分の気持ちに素直になれたら……と思います。

考えの甘い話をすみません……。ですが、雨宮さんに聞いていただきたかったです。

(※投稿内容を一部、読みやすいように編集させていただきました。)

自分の気持ちを吐き出すために良い飲み物って何でしょうか。お酒以外に思いつかないのですが、たぶんお酒ぐらいじゃどうにもならないくらい自制心が強いから、このような状況になられているのですよね。お酒に頼るの諦めて、マスカットティーをソーダで割りますね。ミントの葉っぱも入れちゃいます。

「自分の気持ちに素直になれない」とかぼちゃさんはおっしゃってますが、その問題には、3つの段階があるように思えます。まず1つ目は、自分の本当の気持ちに気づきにくいこと、2つ目は、気づいたあとでもそれを主張しにくいこと、3つ目は常識的な思考、「これぐらい普通だろう」という基準に合わせすぎてしまうことです。

かぼちゃさんは、これらのことをご自分の欠点として、いまとても苦痛に感じながらも向き合って、克服されようとしていますよね。私はそれはとてもいいことだと思いますし、身体に症状が出るほどの我慢をされてきたこれまでのことを思うと、つらい気持ちになります。

ただ、かぼちゃさんほどではないにせよ、多くの人がこんなふうに周囲に気を遣ってしまって言いたいことが言えなかったり、理不尽な境遇に甘んじたり、そういう「自分の気持ちを押し殺す」経験は、多かれ少なかれされていると思います。

そして、こういう我慢は、おそらくかぼちゃさんの周囲の人からは「美点」と捉えられてきたんでしょうね。控えめで周囲に気配りのできるいい人、問題を起こさない良い子だと。まるで優しい呪文のように、それらの言葉がかぼちゃさんを「そうしなければいけない」と縛り付けてきたさまが思い浮かぶようです。

ご結婚についても、多少後悔されているようですが「自分の気持ちに素直に生きてこなかった自分がいけないんだから……」とご自分を責めてらっしゃるところが気になります。

はっきり申し上げておきたいのですが、「自分の気持ちに素直になる」というのは、清らかなことでも、正しいことでもない場合があります。極端に言えば、周りの気持ちよりも自分の気持ちを優先させるエゴイストになる、ということに近いです。もちろん、主張はして、折衷案を取る、というような解決策もありますので、一方的にひどい人間になるとは限りませんが、いま思うことは、本当に「自分の気持ちに素直に生きてこなかった自分がいけない」と反省することなんでしょうか? 

旦那さんも、いい方なんでしょう。そんなに文句を言うところもないというか、世間的に見れば十分に恵まれた結婚だし、かぼちゃさんやお子さんを愛してもくれているのでしょう。でも、嫌なら嫌だと、好きじゃないなら好きじゃないと、思ってもいいのですよ。たとえ相手に非がなくても「愛せない」ということは、あるんですよ。それはとてもつらいことかもしれませんが、正直な気持ちというのは、いつも自分にとって都合のいい気持ちだとは限らないのです。「こんな気持ちさえ持たなければ、私は幸せでいられたのに!」と叫びだしたくなるようなものが「本当の気持ち」だったりすることもあります。
やっかいなことですが、自分の気持ちに正直になることで得るものが、世間一般で言う「幸せ」とは違うことも多いです。

そして、「自分が本当に心から望んでいること」を認識する、っていうことも、案外難しいものなんですよね。私は心から望んだ職業に就いていますが、望んでいるということに気づくまでに7年はかかっています。なぜ気づけたかというと、図々しくなったからです。「自分にはこんな仕事、できるはずない」「自分がクリエイティブな仕事をしたいなんて、おこがましい」という気持ちより、「自分よりヘタクソなライターもいるんだから、私がライターやったっていいだろ」という気持ちが勝ったとき、初めて「なりたい」と思えました。
そして、なった今では幸せか、というと、幸せだと感じるときもあれば、どん底でもう死にたいと思うこともあるし、毎日は、わりとただの日常だったりします。

それでも、私はかぼちゃさんに悔いのない人生を送ってほしいと思います。もう、いい子でいなくていいと思います。誰かの望むかぼちゃさんではなく、自分がこうありたいと望むかぼちゃさんの姿というものを考え、手にしてほしいと思っています。

まさにいま、実感されているでしょうが、「あれをしなかった、これをしなかった」という後悔は、あとから埋めようがないんですよね。「あんなことしなきゃよかった」という後悔も消しようがないですが、いまのかぼちゃさんは、例えるならば「転び方を知らないまま大人になった人」なんです。転び方を知らないまま、違和感をこらえて走り続けてたら急に動けなくなってた、みたいな状態なんだと思います。

自分の気持ちに向き合うと、混乱するし、何が本当の気持ちかわからなかったり、矛盾するいくつもの感情が同時に存在していることに気がついたりもします。どうするか決めて行動を起こしても、まっすぐ前に進んでいる実感を得られなかったり、周囲を落ち込ませたりすることもあるでしょう。でも、かぼちゃさんはこれまで慎重さについて、周囲を傷つけない方法については、学びすぎるほど学んでいます。そのノウハウはものすごく身についているはずです。

それを全部捨てて変わろうとするのではなく、自分の気持ちはこうだとわかったときに、その「穏便にものごとを済ませるテク」を駆使しながら、自分の意志を通そうとしてみてください。転び方を知らないと言っても、転ばずに済むなら転ばずに済んだほうがいいと思うんです。

そして、転んでしまったら、すごく痛くて辛い思いをしたら、それがやっと得られた「自分の意志での経験」なのだと存分に味わってください。

何か、自分の意志で行動することについて、デメリットばかりを書いてしまったような気がしますが、悪いことが必ず起きる、という意味ではないんです。ただ、人の気持ちって、自分のものでさえとてもやっかいで、傷つくとわかっている道を望む場合もあるし、大変だとわかっている道にどうしても進みたいと思う場合もあるということをお伝えしたかったのです。

「幸せ」という言葉が、必ずしも周囲の言う通りのものではないと気づかれたかぼちゃさんには、おわかりいただけると思いますが、周囲が大変だと言うことや、非常識だと言うことも同じように必ずしも「不幸」ではないんです。

いろんな経験をして、これが自分の幸せだと思えるものを掴めたら、そんなに素晴らしい人生はないんじゃないでしょうか。楽な道ではなくても、得られるものは必ずあります。かぼちゃさんの行かれる道に、どうか幸運がありますよう、ささやかながら祈らせていただきます。



みなさまの愚痴を、雨宮まみが「穴の底」にてお待ちしております。長文大歓迎!
恋愛相手の愚痴も、職場環境にまつわる愚痴も、誰にも言えない愚痴も、「スポーツジムのおじさんの汗がキモイ…」みたいなしょうもない愚痴も、なんでもござれ。大なり小なり吐き出して気を楽にしませんか?
「どうしたらいいでしょう?」のような相談は受け付けておりません。ごめんなさい。


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雨宮まみ
雨宮まみ(あまみやまみ)
ライター。AV雑誌での執筆を経て、女性性とうまく向き合えない生きづらさを書いた自伝的エッセイ『女子をこじらせて』 (ポット出版)で書籍デビュー。以後、エッセイを中心に書評などカルチャー系の分野でも執筆。近著に『東京を生きる』(大和書房)、『自信のない部屋へようこそ』(ワニブックス)など。

「穴の底でお待ちしています」が、ついに本になりました!

『まじめに生きるって損ですか?』


鮮烈なデビュー作『女子をこじらせて』から5年。 対談集『だって、女子だもん!!』から4年。 雨宮まみが、今度は、崖っぷちに立つ女子たちの愚痴を真っ向から受け止めます。
彼氏ができないのは「努力が足りないから」だと言われ続け、「努力っていったい何なんだよ !?!?」と吐き出す20代後半の女性。 家事も子育て、さらには仕事も完璧にこなしているのに、夫から愛されない。「もう頑張れない」とつぶやく30代後半の女性。 小沢健二似の美しい元彼との恋愛でズタズタになっても、やっぱり「美しい人」に惹かれてしまう20代前半の女性。
努力、恋愛、見た目、生き方──、20代、30代の女子たちが抱える人生の愚痴15編。

雨宮さんより一言:
ただの悩みなら自分で解決してるし、人に解決してもらえるようなことなら最初から悩まないよなぁ、という思いから始まったのが、この「穴の底でお待ちしています」という、ただ人の愚痴を聞く連載でした。そこから生まれたのがこの本です。
始めてみると、人の愚痴には、本当に解決しづらい問題や、社会の構図まで含まれているよううなところがあって、しかもみんなただ愚痴っているわけじゃなくて、がんばりにがんばり抜いた末に愚痴っていたりして、だんだん「これって世の中のほうが間違ってるんじゃないですか?」という気持ちになってくることもありました。
正しい人が救われるとは限らない世の中だからこそ、読んでほしい本です。

試し読みはこちら


 

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