2014.03.20

「真央ちゃんに嫉妬してる」 雨宮まみの“穴の底でお待ちしています” 第2回

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穴の底でお待ちしています

誰にも言えない、けれど誰かに言いたい、そんな内緒の悩みやモヤモヤ、しょうもないグチからやりきれないつらさまで、穴を掘ってこっそり叫んでみたい気持ちを発散する、「感情の吹きだまり」……。そんな場所がこのコーナーです。あなたのやるせない気持ちを、安心してブチまけてみませんか? 雨宮まみが聞き手をつとめます。長文の投稿歓迎いたします。

(くりりんさん/20代前半の愚痴)
 私は、異常に嫉妬深い人間です。 彼氏はいないんで、恋愛関係の嫉妬はしたことがないんですが、日常的にあらゆることに嫉妬しまくっています。というか、目に映るすべての人が妬ましく思える時もあります。 カップルを見れば、当然、うらやましく思い、嫉妬します。子供を見れば、この子にはあらゆる可能性があるんだなあと思って嫉妬します。それが綺麗な子とかなら、その子の10年後くらいまで想像して嫉妬します。

 自分が嫌になるんですけど、私は浅田真央ちゃんにまで嫉妬します。オリンピック選手と自分を比べて嫉妬するなんて、普通の感覚では理解できないと思うので、人には言えません。みんなみたいに純粋に真央ちゃんを応援できません。私は真央ちゃんと同じ23歳です。 どうしても、「真央ちゃんって頑張り屋で偉いよね。私も見習わなきゃ」と言おうとすると、泣き出しそうな気分になります。私は真央ちゃんがとても恵まれてる人間に見えるからです。私は何もない。誰も私を見ていないし、応援していないし、必要とされてもいない。それでも私は私なりに毎日、死にたい心を抑えて生きている。私は私なりに頑張って生きているのに、人に認めてもらえないどころか、真央ちゃんのような「理想の娘」みたいな子を見習わなくてはいけないような空気が世間には流れている。同い年の女の子を、尊敬「させられている」という違和感があります。そんなことが辛くて仕方ないのです。

 つまるところ、世間の「真央ちゃん頑張って!みんながついてる!」という空気に嫉妬してるんですね。私だって頑張ってるモン!!とオリンピック選手相手に独り相撲をしている、滑稽な処女なんですね。自分のお姫様気質というか、自己顕示欲に自分でドン引きです。私には才能も、優しさも、美しさも、根性もないかもしれないけれど、誰かに私の頑張りを認めて、好きになってほしい。誰かの1番になりたいんです。私だって真央ちゃんみたいになりたかったです。でもなれなかった。醜く歪んでいて、太っていて、可愛げがない。私は他人が妬ましくて仕方ないです。 長々と支離滅裂な文章を失礼しました。 いつかはこの平穏な地獄から抜け出して、もっと心満たされた生活ができるようになりたいものです。

 えー、まず、よく打ち明けてくださいました。「真央ちゃんに嫉妬してる」。確かに、言ってしまったら全国民を敵に回しそうで、外では言えないですよね! けれど、この投稿を読んで、私は最初に「負けた……」と思いました。だって、「真央ちゃんに嫉妬」ですよ!?

 少々自分の話をさせていただきますが、私がライターとしてデビューしたのは、ある雑誌のライター募集に応募したのがきっかけでした。その応募のために書いた文章は、やはり同世代(正確には年齢は違います)の、「椎名林檎に嫉妬している」という文章でした。彼女の音楽に心惹かれ、「まるで自分の気持ちを歌ってくれているみたいだ」と思いながら、嫉妬で苦しくて普通に聴くことができない。憎しみすら感じるし、まるで大きな苦いかたまりを飲み下すようにしてしか聴けない、そういう気持ちを書いたと思います。

 椎名林檎さんと真央ちゃんのどっちが偉いという話ではないのですが、やっぱり「真央ちゃんに嫉妬」って、「椎名林檎に嫉妬」の何百倍もインパクトがあるんですよね。椎名林檎には、当時鬱屈を抱えたサブカル女子がみんな嫉妬していたと思いますが、真央ちゃんに嫉妬は……。この「みんなが真央ちゃんを応援してる」空気の中、周りの空気に流されない精神の強さを感じるんですよね。

 くりりんさんは、ご自分の嫉妬の気持ちをすごく的確に分析されています。普通の人は、嫉妬をここまで丁寧に解きほぐすことができません。できないというより、しようとしないんです。真央ちゃんに嫉妬の気持ちを抱いたとしても、それが嫉妬だということすら気づかずに「真央ちゃんって、なんか嫌い」。普通はこれで終わりです。なぜ嫌いだと感じるのか、嫌いだと感じる気持ちの奥に何があるのか、掘り起こそうとする人は少ないです。これができるのは、一握りの人間だけです。「なんか嫌い」で済ませない人もいますが、そういう人たちはどうするかというと、イラッと来る気持ちを解消するために「尊敬」に逃げます。「やっぱりすごい。(自分の感情はさておき)尊敬できる」という方向に逃げるのです。醜い嫉妬を尊敬にすり替える。感情ロンダリングです。これをやれば、自分が嫉妬なんかしないキレイな人間だと思い込むことができますが、こういうごまかし方ができない人は、嫉妬をどう消化すればいいのか悩むことになるのです。くりりんさんのように。

 くりりんさんは、真央ちゃんのような才能や能力、立場が欲しかったかもしれません。もしくは真央ちゃんでなくとも、自分以外のうらやましい誰かのような容姿や実力が欲しかった、と思っておられるかもしれません。でも、私から見れば、くりりんさんのこの自己分析能力と嫉妬心の強さは、巨大な才能にしか見えないんです。本気で言ってます、これは油田です。嫉妬心の強さは、そのまま、感情のエネルギーの強さです。これは、使い方によっては人の心までも動かす力のあるものです。そして自己分析能力があるということは、おそらく、間違った使い方や卑怯な使い方はしない、ということなんです。そういうずるいことをしようとすると、くりりんさんは自分のずるさに必ず気づくと思います。これを持っている限り、くりりんさんは人生で道を踏み外すことはまずないでしょう。

 くりりんさんが望んだ才能とは違うかもしれませんが、くりりんさんが嫌だと感じておられるこの嫉妬心の強さは、くりりんさんの持っている能力の一部を象徴しています。長所は欠点の裏返しですし、欠点は長所の裏返しです。それはつまり、「個性」ということなのですが、くりりんさんの持っているこの嫉妬心の強さと自己分析力の深さは、ライターをはじめ、何かを表現するような仕事をしている人であれば、喉から手が出るほど欲しいと感じるものだったりもします。その強い感情のるつぼからしか出てこないものがあるからです。その感情の最中にある本人は苦しくてたまらないのに、それを羨む人もいるのです。きっと、練習がつらいときの浅田選手もそんな感じなのではないでしょうか(勝手に妄想して申し訳ありません)。

 私が最初に「負けた……」と思ったのは、自分の中にもうそれほどの強い嫉妬心がなくなってしまったことを感じたからです。昔はくりりんさんのように、泣くほど嫉妬をしましたし、どう考えても「なれないだろ!」っていうレベルの人にも嫉妬せずにいられませんでした。ジャン・リュック・ゴダールとかお洒落な映画のヒロインを見ては「なんで私はこの人じゃないんだろう」と思って泣いてました。「まずお前、日本人だろ!」って感じですけど、嫉妬って理不尽に湧いてくるんですよね。周りのライターにももれなく嫉妬していて、心穏やかな友人関係を築くこともなかなかできませんでした。丸くなってラクになったとも言えるのですが、正直、単に感情の体力が落ちただけだと思います。もう、ジーン・セバーグやアンナ・カリーナを見ても「ふーん」としか思いませんし、「よく考えたら、私こういう女あんまタイプじゃなかったな」とさえ思うようになってしまいました。いったい何様でしょうか……。

 「真央ちゃんって頑張り屋で偉いよね。私も見習わなきゃ」。そんなこと、言わなくていいです。全国民が言っていても、同じことを言う必要なんてありません。人と違うそのお姫様気質や自己顕示欲をダメなものだと思わないでください。それはくりりんさんが、嫉妬を掘り下げて掘り下げて解体して、やっと見つけた自分自身の輪郭なんですから。ご自分では、何も行動をせずにただ嫉妬ばかりしている毎日だと思っておられるかもしれませんが、このように感情を取り扱う作業を20代の前半でされているのは、とても大事なことです。平穏な地獄と書かれていますが、いいんですよそんな遠慮しなくて。それキツいですよね、地獄ですよね!

 私は今でも嫉妬をしますし、人に対して嫌な感情を抱くこともあります。でも、若い頃に死ぬ思いで嫉妬を解体する練習問題をやってきたおかげで、今はだいぶラクです。まるで受験生を励ますような、しかも後輩に先輩風吹かせてるような文章になって申し訳ありませんが、今くりりんさんがいろいろ考えておられることは、決して無駄ではない、ということだけお伝えしたいと思いました。疲れたらまた、この穴の底に来てくださいね……。


みなさまの愚痴を、雨宮まみが「穴の底」にてお待ちしております。長文大歓迎!
恋愛相手の愚痴も、職場環境にまつわる愚痴も、誰にも言えない愚痴も、「スポーツジムのおじさんの汗がキモイ…」みたいなしょうもない愚痴も、なんでもござれ。大なり小なり吐き出して気を楽にしませんか?
「どうしたらいいでしょう?」のような相談は受け付けておりません。ごめんなさい。


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雨宮まみ
雨宮まみ(あまみやまみ)
ライター。アダルト雑誌の編集を経て、フリーライターに。女性の自意識との葛藤や生きづらさなどについて幅広く執筆。女性性とうまくつきあえなかった頃を描いた自伝的エッセイ『女子をこじらせて』出版後、「こじらせ女子」がブームとなる。他の著書に対談集『だって、女子だもん!!』(ポット出版)、『ずっと独身でいるつもり?』(KKベストセラーズ)、『女の子よ銃を取れ』(平凡社)、『タカラヅカ・ハンドブック』
(新潮社)など。

「キレイになりたい!」と言えないあなたに。

『女の子よ銃を取れ』

他人の視線にビクビクしたくない、自分らしく堂々としていたい、かわいい、キレイと言われてみたい……そう思っていてもどうすればいいのかわからないし、「キレイ」への道が怖くてたまらない。
キラキラした「キレイになりたい」本を手に取ることすら怖いと感じるくらい、「キレイ」が重荷になっている人のための、自意識や他人の視線、自分の視線を解きほぐす本です。

雨宮さんより一言:
何をしても、何を買ってもうまくいかない、変われないしパッとしない……。そんな悩みは、本当は多くの人が持っています。それ以前に何をすれば、何を買えばいいのかもわからない人だってたくさんいます。この間まではわかっていたのに、急にわからなくなってしまった人も。そんなときに、自分を取り戻し、新しい自分を作り上げるヒントや、気持ちの持ち方の軸のようなものがあればいいなと思って書きました。落ち込んだときのおともにしていただけると嬉しいです。

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