大人気ライター・石井ゆかりさんによる、女性の心に寄り添う個人占い。恋愛や人生の悩みにお答えします。
なつさん(31歳女性)
どうかお力を貸していただけないでしょうか。お願いします。私は大学を卒業して約8年ひきこもりのような状況にいます。ずっと抜け出そうと、本を読んで自分を変えようとしたり相談に行ったり、まずはできることからと言われ家中の掃除や料理、河川のごみ拾いなど色々してきました。でも抜け出せず約8年もの時が過ぎました。必ず働けるようになると思っていました。でももう世の中からも周りからも遅れどうにもならないと思え、死にたいです。甘えかもしれません。でもどうしても人や働くことが怖くてたまりません。あまりにも時が遅れすぎもうだめだと感じます。自分が誰かもわからなくなりました。どんな仕事、場所なら生きていけるでしょうか。
なつさんへ
お辛い状況ですね。
「いつかは状況を変えよう・変わるだろう」という気持ちで日々を送っていたら
その「いつか」がこないままに8年も過ぎてしまったことに
ご自身でも強い危機感と恐怖、無力感を感じていらっしゃるだろうなと思います。
本来、行動力に富み、高い知性に恵まれた、大変優秀な方でいらっしゃいます。
周囲の方の気持ちを察する力があり、ご家族の思いにも敏感で、
大切な人を大切にしたい、という気持ちの強い方でいらっしゃるでしょう。
好奇心も旺盛ですし、向学心も人よりも強いものを持っていらっしゃるはずです。
おそらく、子供の頃から「優等生」のような方であったかもしれません。
非常に規範意識が強く、「他者」への警戒心を持っていて、
とても誇り高い方でいらっしゃいます。
失敗すること、完全にできないこと、恥をかくこと、バカにされることなどが
おそろしくて仕方がなく、どう自分を守って良いか解らないままに、
「外の社会に出ない」状態の中にいらしたのではないかなという気がします。
「本を読んだり相談に行ったり、できることから始めたり」された、と書かれています。
そうしたことも一つの「努力」だと思います。自分でなにもしなかったわけではありません。
ここに、行動力もあり、知的でもあるなつさんの姿が現れています。
でも、同時に「出来るようになってからしよう」「失敗しないやり方でやろう」という
強い警戒心とプライドの高さも、表れています。
世の中の仕事というのは、「できるようになってからやらせてもらえる」ことは、
あまりないようにおもわれます。
最初は、だれでも、「できない」状態で、その仕事に取り組むのです。
ゆえに「できるようになってからやろう」「できることをしよう」ということだけでは、
決して、社会に出ることはできないのではないかと思います。
誰もが最初は「初心者」で、何も解らぬまま失敗し、傷つき、
怒られたりしながら進みます。
でも、怒っているその上司も、元々は初心者で、「怒られ組」だったのです。
失敗すること、叱られること、恥をかくことは、たいへん辛いことですが、
でも、社会の中では「許されていること」でもあるのです。
一度失敗したらその先に行けない、ということはありません。
「周囲から遅れてしまい、あまりにも遅れてしまって、
もう遅れを取り戻すことはできない」と、なつさんは感じていらっしゃいます。
そのお気持ちも、たしかに、よくわかります。
ただ、なつさんが「周り」と言っているのは、
いったい、何人位のことでしょうか。
「周りの人がみんなこうしている」「普通の人はみんなこうだ」というふうに
人と自分を比較して自分を規定しようとする人は
実際は、非常に狭い範囲のことしか見ていません。
私は、なつさんのような人をたくさん知っています。
なつさんのような方は、たくさんいるのです。
だから、「みんなから遅れた」と思う必要は無いです。
なつさんのような状態にある方々と比較すれば、
家事やゴミひろいをしているだけでも、優れていると言えます。
自分を規定するために「みんなはこうしている」と言う人は、
本当に社会を客観的に見渡しているのではなく、
ただ、何か自分の窮状を説明するための理由を探しているにすぎないのです。
「でもどうしても人や働くことが怖くてたまりません。」
このお気持ちが全てだと思います。
この気持ちと闘うのは、至難の業だと思います。
「怖い」という気持ちは、消すことができません。
私も、なんども「新人」をやってきましたが、
最初は怖くて仕方がありませんでした。
バカにされるのでは、失敗するのでは、拒否されるのでは。
そんな思いでいっぱいで、身がすくみました。
だれもがそういう気持ちで、働きに出かけます。
最初の一歩は、だれもがこわいし、転んでしまうのです。
もし、なつさんがそのことをおそれて、家から一歩も出られなくても
私は、責める気にはなれません。
そのきもちはよくわかるからです。
あの恐怖心は、本当に辛く激しく、自分を飲み込みます。
ひとつだけなつさんに言ってあげられることがあるとすれば、
それは、「怖がったままでも、動ける」ということです。
怖くなくならなければ動けない
わけではないんです。
ふるえたまま、真っ青な顔のまま、緊張でわなわなしながらでも、
行動を起こすことはできます。
怖くなくなったらやろう
できるようになったらやろう
ではなく、
こわいまま、できないまま、失敗しそうな自分のまま、
そのまま、動いてみてください。
通りそうもない面接に、応募してみてください。
本来のなつさんの優秀さ、賢さ、行動力の豊かさ、責任感の強さがきっと、
花開くときがきます。
そしたら、「あのとき、怖いまま行動を起こしてみてよかった」
と思えるはずです。
石井ゆかり
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