恋愛、仕事、女としての自分をこじらせ、人生に行き詰まっては占いに駆け込む生活を続けてはや五年。自伝的エッセイ『女子をこじらせて』が話題の雨宮まみが、女子と占いの「ほど良い付き合い方」を考えます!
「女の直感は鋭い」。よく言われる言葉です。ピンと来て浮気に気づいた、虫の知らせで家族の危機を察知した……などなど、「直感自慢エピソード」の数々を聞くことも多いですが、そういう話を聞くと、「直感が強いって、なんかこう、野生の女度が高い感じがしていいなぁ……」と、よくわからない羨ましさを感じてしまいます。「直感が強い」って、女としての本能が強そうというか、そういう本能的な魅力で男を惹き付けそうな気がするのです。
私にはそうした鋭い直感はあまりありませんが、「つきあっていることを隠している男女が、同席していた場合」に、なんとなくそれを察知してしまったり、あとは飲食店などのお店で「ここは潰れそう」と思うくらいのことはあります。どちらも、言葉にはできない雰囲気を感じ取っているだけなので、直感とは違うかもしれません。
そういう他人のことよりも、直感を発揮したいのは自分のことです。出会った瞬間に「この人と結婚するかも」と感じるとか、「この人はまともに見えるけど、あとあともめるから絶対近づかないほうがいい」と感じるとか、そういう直感があれば運命の相手を見逃さずに済むし、ひっかかってはダメな相手もわかって最高だと思うのですが、現実にそうした直感を感じたことは皆無です。
一目見た瞬間に、「あ、この人を好きになるな」と感じたことはありますが、その恋はまったく、1ミリもうまくいきませんでしたし、当然結婚もナシ。周りの友人にも「なんでよりによって、あんたといちばん合わなそうなタイプの人を好きになるのかねぇ……」とあきれられる始末でした。もちろん私本人は、その人と「合わない」ことなど、重ね重ねふられて一切の望みが断たれ、恋が完全に冷めるまで気づきもしませんでした……。直感、欲しいです!
恋愛に関しては、このようにまったく当たらない私の直感ですが、仕事や自分の進路みたいなものに関しては、わりと直感で決めたことが良い結果になることも多く、それなりに信じています。
なぜそうなったのかを考えてみると、母がいいトシしてフラフラしている私のことを心配し、占いに行って私のことをみてもらったところ、「この人は自分で、自分のためにいちばんいい場所に行くことができる人だから大丈夫。この人の選択に、絶対周りが口を出したらダメ」と言われた、という出来事が、けっこう大きかったです。
当時、私は会社を辞め、なんのあてもなくフリーになった状態で、果たしてこの仕事が続くのか、いやその前に仕事の発注はあるのか、普通に考えてとても不安な時期だったはずなのですが、実際は会社を辞めた解放感でいっぱいで、危機感を持ったほうがいいとは思いつつ、楽しくて仕方がなく、その話を聞いたときは「あ、今私が楽しくてたまらないと感じてるのは、間違ってないんだな」と思えて、ホッとしたものです。「自分の選択に自信を持ってよい」という根拠が与えられたようにも感じました。仕事をしていく以上、「良い出来の仕事ができなかった」「仕事が減った」など、落ち込むことがあったとき、「この仕事を選んだこと自体、間違っていたのでは?」と根本から問い直したりせずに済みました。いちいちそう考えていたら、心が持たずに数年で辞めていたでしょう。
その後、なんとなく嫌な予感のする仕事をしてみたら、やっぱりものすごく追いつめられたとか、ありがたくない経験も何度かあり、自分の仕事に対する直感だけは、なんとなく信じています。なんとなく感じる良い感じや嫌な感じを、自分の直感として信じられるかどうかは、それが結果的に「当たっていた」という成功体験をしたかどうかによるのではないか、と最近は思っています。
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