占い＝迷ったときにそっと背中を押してくれる心強い味方！のはずですが、世の中には人の弱みにつけ込んで金を巻き上げる悪徳占い師も存在します。そんな業界の裏も表も知り尽くした占いバーの店員・蔵石が「二度とだまされないで」という願いを込めて、巷にはびこる詐欺占い師の実態を暴いていきます。
ファイル1 霊能版・振り込め詐欺師
コトの起こりは、Мさん(女性・37歳)が自分の将来について自称・霊能者である占い師に電話相談をしたことでした。Мさんは少し脚が不自由で、ご両親は自分たちが先立ったあとのことを考えて、Мさんに３千万円ものお金を残していたのです。Мさんはうかつにも鑑定の際、遺産があると占い師に話してしまっておりました……。
そしてМさんが将来の相談をした翌日、占い師のほうから突然の電話。
「昨夜、あなたのお母さんの霊が現れて伝言を言付かりました」と、いかにも親切ぶって切りだしてきたのです。
自分を気づかう母からのメッセージ、それを伝えてくれる優しい霊能者。Мさんは心酔してしまい、霊能者と伝言のやりとりをすること数回。またしても唐突に占い師から深刻な様子で電話がありました。
「実はずっと、Мさんからとても邪悪なものを感じている。それは親が残したお金に悪いものが憑いているせいだ。今回は特別に無料でお祓いをしてあげる。浄化するから遺産を振り込んできて」
Мさんは何度かに分けて、占い師に遺産を全額送金。振り込むたびに「これはひどい穢れだ」「このままだと、あなたの命も危なかった」と熱弁され、これで良かったのだと暗示にかけられていきました。順次浄化して返すが、浄化には時間がかかる。強烈で邪悪なものが憑いていると言われ、母も浄化に喜んでるという占い師の言葉に、これでひと安心だと感謝すらしていたとのこと。
この占い師の狡猾なところは、初回以外は鑑定料を一切取らなかった点。タダでここまでしてくれるなんてとМさんはすっかり信じたのでございます……。実際にはお金を振り込ませて、しっかりせしめてたんですけどね。
当然のことながら、振り込めばお金は銀行の中で混ざります。こちらが入金したお札が、そのまま相手に届くことはないのです。何が穢れて何を浄化していたのやら、まったくもってインチキすぎます。
Мさんがこれを詐欺だと気づいたのは、なんと占い師が逮捕され警察から連絡があったからでした。このインチキ霊能者、同様の手口で他の人からも多額のお金を手に入れていたのです。結局、Мさんが送ったお金は１円も返ってきませんでした。
先立った親が自分を心配してるという、誰もが気にかけてしまういかにもなでっちあげ。
その上、無料でお祓いをしてあげると恩まで着せる見事な詐欺っぷり。
Мさんには、とんでもなく高い授業料でございました。
- 蔵石美佳理（くらいしみかり）
- クリスティーナ・リッチと同い年。巫女バイト、劇団員、愛人、ペット探偵を経て占いバーに勤務。占い師の体験談やお客様本人の悲喜こもごものエピソード、関係者からの阿鼻叫喚の裏情報に日々耳を傾けている。趣味は古地図コレクション、ハーブ栽培、そして占い。幼少時の夢は探偵で、好みのタイプは『謎解きはディナーのあとで』の執事・影山。
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