漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」
このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!
第73回 アクマの辞典 ダ行
【ダ】
➤「ダサい」(ださい)
…「ダサい」と言われていた人が次の日「逆にカッコいい」と言われてたりするので気にしすぎてもしょうがない
今回のテーマはダ行から「ダサい」である。
先日、漫画『クッキングパパ』1000話が無料公開されており、仕事や時間、己が何者かも忘れて読みふけったのだが、何せ30年以上も続いている漫画なので、そこかしこから「時代」を感じる。
肉じゃがをダサいというJDに「肉じゃがにダサいもナウいもないさ」とパパが言い放つシーンがあった。
これは「ナウい」が完全にお亡くなりになっている一方で、「ダサい」が未だに生きているという貴重な資料である。
「ダサい」は、毎年生まれる新語に勝ち抜いてきたディフェンディングチャンピオンであり、それだけ「強い」言葉ということだ。
みんな何だかんだ言って「ダサい」のは嫌なのである。
「ダサくてもがむしゃらに頑張る」と言っている人も、ちょっとは「ダサくても頑張っている自分カッコいい」と思っており「何もないところでコケて、肥溜めに落ちる」など正真正銘ダサいことはやはり嫌なのだ。
しかし、「ダサいのは嫌だ」と思うのは大事である。
なぜなら、ダサいのは「楽」だからだ。
自宅でも化粧をして髪を巻くような生活よりも、「メスゴリラでーす!」と言って男用ボクサーブリーフで登場するほうが遥かに楽な生き方なのである。
ダサい自分を認め、楽に生きることも大事だが、それが過ぎるとただの「堕落」になり、リアルゴリラと化し人間ですらなくなるので、ゴリラの誘惑に耐え「カッコいい人間」であろうとする姿勢はやはり尊い。
問題は、格好をつける努力はしたくないが、ダサいのも嫌だという状態である。
恋愛でも「ダサい」ことはたくさんある。
「近所にいい感じのレストランができたんだ」と、彼女をデニーズに連れて行ってしまうなど、恋愛のダサ行為は多々あるが、やはり、一番ダサいのは「フラれること」だと思っている人は多いような気がする。
フラれるのはダサいから、告白するテクより相手に告白をさせる方法のほうが需要はある。
別れ話を切り出されたとき、本当は寝耳にスプラッシュ・マウンテンだが、フラれたことにはしたくないので、瞬時に「実は俺もそう思っていた」と返して「イーブン」に持ち込もうとしてしまう。
自分の心を守るために必要な行為とも言えるが、恋愛からこの「ダサさ」を徹底的に排したらどうなってしまうだろうか。
まず、絶対フラれたくないし、フラれないために必死になるのもダサいから、相手に求める条件が「イケそう」一点になってしまう。
そして、つきあっても相手に振り回されるなんてダサいので、自分より下に置ける口答えしないタイプを選ぶようになり、万が一相手に口答えされたら「よくも俺様をダサい目にあわせてくれたな」と逆上する。
結果相手に逃げられると、また同じようなタイプを探すようになる。
ここにパーフェクトモラハラ爆誕である。
誰だってダサいのは嫌だ。
しかし、犬の糞を避けようとして肥溜めに落ちるように、人はダサさを避けようとして余計ダサくなってしまうこともある。
【ダ】
➤「ダサい」(ださい)
…「ダサい」と言われていた人が次の日「逆にカッコいい」と言われてたりするので気にしすぎてもしょうがない
【ヂ】
➤「地雷女」(ぢらいおんな・じらいおんな)
…許せないことが多すぎるオタク女ではなく、つきあうと大変なことになる女のこと
「面倒」という点では同じ
【ヅ】
➤「○○尽くめ」(づくめ)
…部屋中キティちゃん尽くめの女より、名もなきクマのぬいぐるみを一つ置いている女のほうが何を考えているかわからなくてコワイ
【デ】
➤「デトックス」(でとっくす)
…「デトックス」「リセット」など「一からやり倒したくなる病」患者は「ノートの1P目だけきれいに書く病」も患っている場合が多い
【ド】
➤「同窓会」(どうそうかい)
…3年間何も起こらなかったメンバーと1日再会して何か起こるわけがない