ここは、みなさんの頭の中にあるタロット美術館。
重厚な扉を開け、長い回廊を進むと…、数々のタロットが時空を超えて目の前に現れます。
占星術・タロットの日本における第一人者である鏡リュウジ先生と元美大生でご自身でもタロットカードリーディングをされる女優の鈴木砂羽さん。おふたりが、さまざまなタロットカードを挟んで、10回にわたりその絵柄の中に眠る物語を紐解いていきます!
◎出演者紹介

鈴木砂羽
女優として数多くの作品に出演。その傍ら「さわにゃんこ」名義でタロットリーディングを楽しむ日々。

鏡リュウジ
幅広いメディアで活躍し、タロットカードの監修や関連書籍の翻訳・執筆も数多く手掛ける。
ギリシャ神話を描いたタロット
前回のお話は、1970年代、「絵柄だけを見てカードを読めるようになろう」という動きが生まれたこと、そして1980年代には、心理学の視点からさらに自由な解釈が可能になったことでした。
今回、鏡先生と砂羽さんの手元にあるのは、その1980年代に登場したタロットのひとつ、『神託のタロット』。
登場人物は、全てギリシャ神話から
鏡先生:この『神託のタロット』は、1980年代のタロットなんです。ユング派と影響し合ったタロットで、全てのカードにギリシャ神話の登場人物が描かれています。
***ちょっと解説***
心理学者として有名なユングですが、心や無意識と神話のつながりについても深く研究しています。
鏡先生:たとえば、愚者のカードに描かれているのは、ディオニュソスというお酒の神さま。隠者のカードには「時」を表すクロノス。運命の輪のカードには、運命を司る3人の女神モイラとかね。



砂羽さん:あ、本当だ…!
鏡先生:あと、小アルカナが天才的でね。それぞれのスートが、エースから10まで、紙芝居のように物語になっているんです。
***ちょっと解説***
スートとは、「マーク」ということ。小アルカナのカードは、“ワンド”“カップ”“ソード”“ペンタクル“の4種類に分かれていて、それぞれ、エース、2、3、4、5、6、7、8、9、10、ペイジ、ナイト、クイーン、キングの14枚ずつ。この4種類のマークのことをスートといいます。たとえば、「小アルカナには4つのスートがある」「ワンドのスート」などと言ったりするわけです。
砂羽さん:へぇ!
鏡先生:例を挙げると、カップは愛のスートだから、愛の神であるアモルと人間のプシュケーが結ばれるまでの恋物語が描かれています。
砂羽さん:アモルって、恋のキューピッドとも呼ばれる神様ですね。

***ちょっと解説***
アモルとプシュケーの物語
絶世の美女プシュケーに嫉妬した女神アフロディーテの命を受け、プシュケーを殺すために現れたアモル。しかし、誤って恋の矢で自らを傷つけ、プシュケーに恋をしてしまいます。そしてアモルは、己の姿をいっさい見せないままプシュケーと結婚するのですが……
鏡先生:しかも、ウエイト=スミス版に近い構図でストーリーができているんです。
砂羽さん:タロットの意味も押さえながら、上手に物語にしているということですか。
鏡先生:そうなんです。だから、読みやすいんですよ。
ギリシャ神話好きにはたまらない絵柄
鏡先生:この『神託のタロット』、絵もなかなか素敵でしょ?
砂羽さん:はい、繊細で素敵な絵柄ですよね。タロットは、絵柄によって読み取り方がずいぶん違うと感じるようになりました。いろんな方が、タロットの原型に自分の感性を加えて描いていくのでしょうけど、やはり、もともとの意味を忠実に守って描いてあるほうが読みやすいと思うんです。その意味でも、これは名作ですよね。
鏡先生:本当に名作ですし、シックですよね。若いときは、地味で何がいいのかさっぱりわからなかったんですけど、年齢を重ねると味わいがわかってきます。
砂羽さん:確かにシックですよね。死神の絵柄も興味深いですね。
鏡先生:ここに描かれているのは、ハーデースっていう冥界の神さまなんですよ。
砂羽さん:ギリシャ神話が好きな方には、たまらないでしょうね。当然、太陽のカードに描かれている神さまはアポロンですか。
鏡先生:そうです。

砂羽さん:それじゃ、恋人のカードは…
鏡先生:恋人のカードに描かれているのは、パリスの審判の風景なんです。

***ちょっと解説***
ギリシャ神話「パリスの審判」には、《最も美しい女神へ》と書かれた黄金のリンゴを巡り争っていた3人の女神(ヘラ、アテネ、アフロディーテ)の中から、羊飼いの青年・パリスが1人を選ぶというシーンがあります。『神託のタロット』の恋人のカードには、そのときの様子が、描かれているのですね。
砂羽さん:面白いし、味わい深いですね、本当に。この星のカードもきれい!

鏡先生:絵本にできそうですよね。
砂羽さん:そうですね。ちょっとおとぎ話のような感じもするけれど、でも子どもっぽいわけではなくて、憧れちゃうような雰囲気の絵柄ですね。
『神託のタロット』を前に、あれこれとカードを手に取っては話が尽きない鏡先生と砂羽さん。
次回は、「タロット×ジェンダー」がテーマです!
株式会社ヴィジョナリー・カンパニー
今回、鈴木砂羽さんと鏡リュウジ先生のおふたりにお話を伺ったのは、タロットやオラクルカードの出版・輸入販売を行う会社、ヴィジョナリー・カンパニーの事務所の一室です。様々なカードが壁一面に並ぶステキな空間からおふたりのトークを届けします。
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※次回もお楽しみに(日曜更新)

鈴木砂羽
女優。1994年映画『愛の新世界』で主演デビュー。同年、ブルーリボン新人賞やキネマ旬報新人賞など受賞。以後も、ドラマ、映画、舞台以外にもバラエティー、マンガの執筆など意外と幅広いジャンルで活躍中。さらに、プライベートでタロットリーディングをするなど占い好きな一面も。
■Twitter:@bom_schedule
■YouTube:砂羽ラボ。

鏡リュウジ
雑誌、テレビ、ラジオなど幅広いメディアで活躍し、絶大な人気を誇る心理占星術研究の第一人者。占星術、占いに対しての心理学的アプローチを日本に紹介し、従来の「占い」のイメージを一新した。英国占星術協会会員、日本トランスパーソナル学会理事、平安女学院大学客員教授、京都文教大学客員教授など多方面で活動中。
■Twitter:@Kagami_Ryuji
■公式サイト