(※2020年11月15日 11:45 公開記事)
ここは、みなさんの頭の中にあるタロット美術館。
重厚な扉を開け、長い回廊を進むと…、数々のタロットが時空を超えて目の前に現れます。
占星術・タロットの日本における第一人者である鏡リュウジ先生と元美大生でご自身でもタロットカードリーディングをされる女優の鈴木砂羽さん。おふたりが、さまざまなタロットカードを挟んで、10回にわたりその絵柄の中に眠る物語を紐解いていきます!
◎出演者紹介

鈴木砂羽
女優として数多くの作品に出演。その傍ら「さわにゃんこ」名義でタロットリーディングを楽しむ日々。

鏡リュウジ
幅広いメディアで活躍し、絶大な人気を誇る心理占星術研究の第一人者。タロットカードの監修や関連書籍の翻訳・執筆も数多く手掛ける。
発祥の地はエジプト?それとも…タロット誕生の秘密
第1回でご紹介した『タロット占いの秘密』のカードの絵柄には、どこか古代エジプトを思わせる雰囲気がありました。鏡先生によると、「この本が出版された当時は、“タロットの発祥はエジプト”という説が強かったために、そのようなデザインを生み出したのではないか」とのこと。
ん?? 説?
つまり、タロットの発祥にも、いくつかの説があったのでしょうか。
やはりタロットは、人々の心を神秘的に包み込む魅力があったのですね。
第2回は、タロット誕生の秘密と真実に迫っていきます!
今回、鏡先生と砂羽さんの手元にあるのは、現存する最古のタロットのひとつと言われる「ヴィスコンティ・スフォルツァ版タロット」のレプリカ。このカードが生まれるまでにも興味深い歴史があったようです。
タロットの発祥は…いったい、どこ!?
砂羽さん:タロットの発祥って、いろんな説がありますよね。エジプトと言われることもあれば、フランス…、イタリア…って。
鏡先生:そうですね。いろいろありました。でも今は、僕たちが今知っているタロットはイタリアで生まれたという説を疑う研究者はほとんどいません。
砂羽さん:そうなんですね!いつ頃はっきりしたんですか?
鏡先生:1960年代には、タロットの絵札がイタリアの詩人ペトラルカの詩にインスパイアされたものだという説が。80年代には詳細なタロット史の研究がされるようになっています。
おお!なんと、神秘のヴェールは一気にはがされてしまいましたが、どのような経緯で、イタリア発祥だということが明らかになったのでしょう!?
タロットはゲームとして生まれた
鏡先生:もともとアラブ圏で発明された、今のトランプの元になったカードゲームがあるんです。そのカードが、活発になった人々の交流にしたがって、14世紀頃には西ヨーロッパに入ってきました。
そのときは、最先端のハイカラな遊びとして伝わりました。つまるところ、今で言うトランプゲームが広まったんですね。
砂羽さん:うんうん。
鏡先生:そのカードに、ゲームの切り札という形で、今で言う大アルカナがプラスされて、タロットが発明された。これが、1440年代ぐらいのことだと言われています。
こういったことを、20世紀後半からのタロット史の本格的研究がどんどん明らかにしていったんです。
砂羽さん:へぇ、そんな歴史があったんですね。
つまり、小アルカナの原型であったカードゲームが広まり、そこに大アルカナの元となる22枚がプラスされて、タロットが生まれたというわけですね。
当時のタロットは、貴族のための高級品
鏡先生:アラブで生まれたと考えられる、4つのスートのカードにイタリアで切り札が加わり、現代でもよく知られる「タロット」が誕生しました。次いでフランスやスイスでもどんどんタロットが制作されるようになっていったんです。すぐに木版などの大量生産品も生まれるようになっていきます。
ただ、紙が高価な時代ですから、最初は貴族の遊びだったと考えていいと思います。おそらく最初は1枚1枚手描きでカードが作られていて、贈答品として扱われていたんですよ。
砂羽さん:へぇ!贈答品だったんですか!
鏡先生:高級品だったとわかるのは、当時、貴族の家がつけていた出納帳などにタロットらしきカードを注文した記録が残っていたりするからなんです。
砂羽さん:なるほど。カードの絵を描く職人さんに注文した記録が残っていたわけですね。
鏡先生:そうなんです。職人さんの手描きですから、鑑賞用として楽しまれてもいたようです。今よりもこの当時のほうが、絵画的な意味合いも大きかったのかもしれません。
砂羽さん:へぇ、すごい!見てみたいですね。
大興奮の砂羽さんに、鏡先生が見せてくれたカードが、冒頭でもご紹介した「ヴィスコンティ・スフォルツァ」のタロットのレプリカです。
砂羽さん:絵柄がすばらしいですね、本当に!
鏡先生:そうなんです。当時は、カードそのものがアートですよね。
砂羽さん:まさにアート!こんなの、見てみたかったな。
鏡先生:これらのカードは、何人かの職人さんが工房で描いていたんだと思います。けれど当時は、ベンボという名の通った画家が描いていたという推測もあったんですよ。
***ちょっと解説***
ボニファチオ・ベンボは、北イタリアのヴァイオリンの街としても有名なクレモナの画家で、1447年から 1478年の間に最も活躍したと言われています。
鏡先生:ここに家紋が入っているでしょ?
砂羽さん:本当だ!
鏡先生:これらのカードには、ヴィスコンティ家とスフォルツァ家の両方の家紋が入っています。それで、両家の結婚記念に作られたんじゃないか…と言われているんです。
砂羽さん:結婚記念に…!今、こんなに気軽に使えるタロットが、特別なギフトだったというのは、びっくりしました。
※「女帝」「教皇」のカード ヴィスコンティ家・スフォルツァ家の紋章が描かれています
貴族のカードゲームとして生まれ、贈答品としても扱われていたタロット。
次回は、一般の人たちに広まっていった時期の物語です!
株式会社ヴィジョナリー・カンパニー
今回、鈴木砂羽さんと鏡リュウジ先生のおふたりにお話を伺ったのは、タロットやオラクルカードの出版・輸入販売を行う会社、ヴィジョナリー・カンパニーの事務所の一室です。様々なカードが壁一面に並ぶステキな空間からおふたりのトークを届けします。
この記事を読んで自分だけのタロットを探したくなった方は、こちらから↓

鈴木砂羽
女優。1994年映画『愛の新世界』で主演デビュー。同年、ブルーリボン新人賞やキネマ旬報新人賞など受賞。以後も、ドラマ、映画、舞台以外にもバラエティー、マンガの執筆など意外と幅広いジャンルで活躍中。さらに、プライベートでタロットリーディングをするなど占い好きな一面も。
■Twitter:@bom_schedule
■YouTube:砂羽ラボ。

鏡リュウジ
雑誌、テレビ、ラジオなど幅広いメディアで活躍し、絶大な人気を誇る心理占星術研究の第一人者。占星術、占いに対しての心理学的アプローチを日本に紹介し、従来の「占い」のイメージを一新した。英国占星術協会会員、日本トランスパーソナル学会理事、平安女学院大学客員教授、京都文教大学客員教授など多方面で活動中。
■Twitter:@Kagami_Ryuji
■公式サイト