漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」
このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!
今回は、ココロニプロロ8周年記念企画にて募集したワードの中から「LINE」「ルームシェア」をピックアップいたしました。
第69回 アクマの辞典 ラ行
【ラ】
➤「LINE」(ライン)
…「LINEを送ったら晒されていると思え」ということわざを国語で教えたほうが良い
今回のテーマはラ行からLINEである。
コミュニケーションツールも多様化の一途をたどっているが、未だに「恋愛」に使われているツールと言ったらLINEが多く、LINEを使った「モテテク」記事もよく見かける。
リアルな場においてトークが上手い人間はモテるが、トークスキルなどそう簡単に磨けるモノではないし、アドリブ力も必要とされるためなかなかハードルが高い。
その点LINEなら、シンキングタイムを設けられるので「今何してる?」に「地引網」など意外性のある答えが返ってきたとしても、「俺、沿岸漁業は定置網しかやったことないけど、地引もマジ興味あるわ」と、一考ののちに相手の興味を引く返信ができるのだ。
よって、最近は対面ではなく、まずLINEで距離を詰めてから交際やワンチャンを狙おうとする者も多い。
しかし、LINEは返答を一考できるが故に「オジサンもカナちゃんの網にかかりたいな、ナンチャッテσ(^_^;)」と、考えた上でドンズベり、という現象もよく起きる。
ネットで見かける“LINEの痛いオジサン”というのは、リアルでは普通のコミュ症オジサンだった者が、LINEというツールを手にしてしまったがために生まれた悲しきモンスターでもあるのだ。
とはいえ、これは中高年男性特有の現象ではない。
私のような中年女でも、一回り以上年下の女子と接する時「さんづけは畏まりすぎているし、かと言って呼び捨ては無礼である」といった思考から何の断りもなく「ちゃん」づけにしたりする。さらに、若者にはとりあえず絵文字を使っておけば、こちらが友好的であると伝わるだろう、という思いから、平素は全く使わない絵文字を入れ、そうは言っても年長者として振る舞わねばという気持ちから謎のアドバイス口調になってしまう。だが、あまりマジに取られても困るので最後に「冗談である」というエクスキューズも入れておきたくなるのだ。
そう考えた結果「これネットで見たヤツだ!」という進研ゼミオジサン講座百点満点、赤ペン先生も無言で花丸をつけるしかない「オジサンLINE」が爆誕していたりする。
このように「オジサン」という概念は性別、時には年齢、下心の有無などと関係なく誰の心にも潜んでおり、いつ出てくるかわからないものなのだ。だから、特に若人と接する時は、オジサンが脇などから出てきていないかチェックすべきだろう。
そもそもオジサンからLINEが来るのは、オジサンにLINEアカウントを教えたということなのだから、教えたほうも悪いのではと思うかもしれない。
しかし、最近は業務連絡用にLINEを使う場合も多いため、職場の上司にLINEを聞かれたら部下は断れないという大問題があるのだ。
また、普通、若い女の個人的なLINEと言えば、ボトルを10本入れて教えてもらえるかもらえないかの代物である。
それを「ボトルを入れないで貰えた」という時点で「脈あり」と勘違いしてしまい、部下の女子に執拗にプライベートを尋ねたり、食事に誘うLINEを送ったりするオジサンは今も多いという。
オジサンにとってLINE文化の発達は、いとも容易く女子の連絡先を入手でき、面と向かっては誘えない食事にも誘えてと、良いことだらけのように見える。
しかし同時に「セクハラの動かぬ証拠」を相手に与え続けることになる、という巨大なデメリットを忘れてはいけない。
これは、オジサンだけではなく、全てが保存され、晒される世の中で生きる我々が気をつけなければいけないことである。
対面口頭は「勇気」と引き換えに「残らない」というメリットがあると言えるが、それも録音されている可能性がなくもない。
今こそ「聞き終わった後、聞いたヤツもろとも爆発する装置」の開発が急がれる。
【ラ】
➤「LINE」(ライン)
…「LINEを送ったら晒されていると思え」ということわざを国語で教えたほうが良い
【リ】
➤「リボ払い」(りぼばらい)
…「リボを使うヤツは情弱」というが「全てを理解した上でリボを使うしかない」人間もいる
【ル】
➤「ルームシェア」(るーむしぇあ)
…同棲よりもさらに気をつけないと、何もしない上にセックスもできない相手と暮らす羽目になる
【レ】
➤「恋愛体質」(れんあいたいしつ)
…股が開きやすいというのは確かに「体質」と言える
【ロ】
➤「ローズクォーツ」(ろーずくぉーつ)
…知らない人はググらないで、そのままそれが必要のない人生を歩むべき