漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」
このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!
第50回 アクマの辞典 ナ行
【ニ】
➤「肉じゃが」(にくじゃが)
…好みのタイプ「家庭的」「肉じゃが をおいしく作れる人」は「処女一択」と同じレベルの地雷になりつつある
今回のテーマは、ナ行から「肉じゃが」だ。
それとは直接関係ないのだが、先日テレビでローカル番組を見ていたところ、どこかの市町村が「イクメン表彰式」をした、というニュースが流れてきた。
その地域で育児を頑張っている男性に表彰状を送ったのだという。
てっきり壇上に上がっている男性たちは、赤の他人の子供の世話を無償で頑張ったに違いない、それは偉い、表彰状の一つや二つくれてやるべきだろう、と思ったのだが、どうやら頑張ったのは「自分の子供の育児」のようである。
つまり、当たり前のことをしているだけなのに「偉い」と表彰状を貰っているのだ。
これは我が地域、納得の過疎化、限界集落待ったなしと言ったところである。
おそらく、妻のほうも同じぐらい育児をしているだろうに、表彰されるのは男だけだという。
父親の育児が表彰されるなら、我々全員「息してる」という理由で金一封を貰っていいはずである。
なぜ男が、己の子供を育てただけで讃えられるのかというと、今でも「育てないヤツ」のほうが多いからだ。つまり「珍しい」という理由で褒められているのだ。
希少価値で褒めるなら、もっとイリオモテおキャット様や、マヌルおキャット様とかを讃えるべきだろう。
それと同じように「料理ができる男」も、未だに「すごーい」と合コンに住んでるサーバルちゃんに褒められていたりする。
「得意」とかいうレベルではなく「できる」だけで褒められる対象なのだ。
片や女は「料理ができる」というのは、それこそ「息ができる」と同じぐらいできて当たり前と思われているので「毎日人間が食えるものを作っている」という偉業を成し遂げていても、全く褒められない。
だが昔から、男は胃袋と玉袋をつかめ、お袋(おふくろ)はこっそり殺せ、と言うように「料理上手」は現在でも女のチャームポイントの一つとされている。
そして「肉じゃが」というのは、男が喜ぶ料理の鉄板と言われていた。
なにゆえ「肉じゃが」なのかは諸説ある。
もちろん芋と肉が甘辛く煮てあれば、誰でも泣いて喜ぶに決まっているのだが、それに加え「肉じゃが」が「おふくろの味」という人が多かったからではないか、とも言われている。
今では、おふくろの味もハンバーグやグラタン、ハッピーセットなど多様化しているので、肉じゃがはすでに男ウケメニューとは言えなくなっているのかもしれない。
料理上手をセールスポイントにするのは悪くない。
飯というのはマストなため、それが毎日致命的に不味いと、すぐに精神に異常をきたすので美味いに越したことはない。
しかし、料理ができない女がダメというわけでもない。
ひと昔前まで「嫁がメシマズで」というと、嫁のほうが悪く、夫は同情される側であった。
だが、今ではもう「じゃあ、なんで自分で作らないの」と言われてもおかしくない。
料理ができないなら他のできることを担当すれば良い。仕事も家事も、得意な人がやるほうが効率も良くなるに決まっているのだ。
性別で役割を決めて、ムリヤリ苦手なことをさせるから、メシマズ女や甲斐性なし男という悲しきモンスターが爆誕するのである。
【ナ】
➤「涙袋」(なみだぶくろ)
…たまに目よりでかくなっていることに気付いてない人がいる
【ニ】
➤「肉じゃが」(にくじゃが)
…好みのタイプ「家庭的」「肉じゃが をおいしく作れる人」は「処女一択」と同じレベルの地雷になりつつある
【ヌ】
➤「濡れ髪」(ぬれがみ)
…見るだけならセクシーだが、髪を拭かずにウロウロするヤツとは結婚しないほうがいい
【ネ】
➤「ネット婚活」(ねっとこんかつ)
…ネットで出会った人なんて、というが現実で出会うヤツも結構ろくでもない
【ノ】
➤「ノーメーク」(のーめーく)
…化粧動画は、いかにノーメーク状態がブスか、にかかっている