石井ゆかりの『幸福論』 4. 「帰るべき場所」と幸福(後編)

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石井ゆかりの幸福論

大人気のライター・石井ゆかりさんによる連載コラムが登場! 占いを通して、数々の人生や幸せのあり方を見つめてきた石井さん自身の言葉で紡がれる「幸福論」をお楽しみください。

今回は、「石井ゆかりの幸福論」第4のテーマ「帰るべき場所」と幸福(後編)をお届けします。

4.「帰るべき場所」と幸福。(後編)

私たちは生まれてから成長し、成熟するに至るまで、「外の世界へ、もっと高い場所へ」と、植物が空に向かって伸びるように、ひたすら「ここではない、どこか」を目指します。ですが、そのもっとも力溢れる時間を生きた後で、今度は人生の下り坂にさしかかります。12ハウスの一番最後はもちろん「第12ハウス」なのですが、星占いの世界では不思議なことに、ここが「人生のゴール=死」とは設定されていないのです。この場所は自己犠牲や隠遁、隠れ場所などを意味します。

第12ハウスの先にはなにがあるかというと、「第1ハウス」、即ち「始まりの場所」が位置しています。これは、たとえば長い間組織にあって仕事をして勤め上げ、定年を迎えて引退し、そこで肩書きのない「一個人」として新たな人生に再出発する、というイメージを思い浮かべると、なんとなく納得がゆきます。「一人の人間としてもう一度、生まれかわる」「新しい個性を生きなおす」ような展開が、ここに待っているのです。
誕生し、成長し、成熟し、引退し、枯れて消えるのではないのです。少なくともホロスコープの仕組みにおいては、そうなっていません。人生を終えたかに見えた「引退」のあと、最終的な着地点の手前に不思議な「再生」が置かれています。

生まれてからこの世を発見し、他者とコミュニケーションを交わして「自分」になる、「この世界」と「自分」とのつながりをもう一度ゼロから確かめるプロセス。私たちの老年期にはそのプロセスが待っているのかもしれません。
最後にくるのが第4ハウスです。居場所、家、自分の人生全体を収める器のようなものが、そこに置かれています。

石井ゆかりの幸福論

居場所や家族は一般に、人を温め、守り、育ててくれる場所であり、いざというときに駆け戻れるような安心できる場所です。「家族のために」生きている、という人は決して少なくありません。
ですがその一方で、「家」「家族」は、人を縛り、振りまわし、抑圧し、時には深く傷つけてくる世界となることもあります。逃げたくても逃げられない場所、「逃げたい」と思うことすら許されない世界。「家」によって傷ついた人は、世の中に驚くほどたくさんいます。
生まれおちた「生家」を、私たちは選ぶことができません。
でも、最終的に「帰り着く場所」は、少しは選択の余地があるようにも思われます。もちろん、人生の変転のなかで「ここにいることを余儀なくされる」「外に出ることができない」状態になる人もたくさんいます。ただ「生まれた場所」よりはわずかに、「選べる」部分はあるのではないかと思うのです。

「最終的に帰り着く場所」は、自分の人生の終着地であり、人生の理想が注ぎ込まれる場所、といえるかもしれません。「終の棲家」に憧れ、あれこれと夢を思い描く人は少なくありません。将来こんな家に住みたい、いつかこんな場所で暮らしたい、という願いを叶えた人は、とてもうらやましがられます。

私は(あちこちで書いていますが)、非常に引越の多い人生を送ってきました。生まれたその日が引越の日で、それからよんどころない事情で20回以上も引っ越してきました。夜逃げでもなければ趣味の引越でもなく、不思議なくらい「引っ越さなければならなくなる」人生だったのです。
ですが40歳を越える頃から「最後にはどこにたどりつくのだろう?」という思いが湧いてきました。「終の棲家」があるとすれば、それはどこなのか。それは幸福な場所なのだろうか。この問いは、このところ年々、私の中で重みを増しています。
それは単に「場所・建物」の問題だけに留まらず、「最終的にはなにをして、どう暮らしているのか」という、生活全体のイメージにつながります。つまりは「人生の最後」ということなのです。

石井ゆかりの幸福論

『椿姫』のように、ジェンのように(※前編参照)、私たちは自分の人生において「最終的にたどり着く場所」がなんとか、美しく幸福なものになることを願ってやみません。
金メダルを目指し、社会的成功を目指し、幸福な人と羨まれ、立派な人と尊敬されることを目指した後で、一人の人間として「最後に、本当に欲しいもの」はなんなのか。これは、人生の早い段階で準備できるものではないのかもしれません。でも、そのことを心の中で、常に探し続けることができるとしたら、はまらずに済む落とし穴もあるのかもしれません。

「最後の最後が幸福であれば、人生の全体が幸福の光に照らし出される」「過去がどんなに辛くても、現在がどんなに苦しくても、最後の最後に幸福であれば、この苦しみや辛さが全て報われる」。
この考え方は、私たちが今という時間を、未来に向かって絶え間なく生きようとする上で、決定的な希望です。『椿姫』のマルグリットも、最後の瞬間まで恋人アルマンを待っていたのです。生きている限り、次の瞬間には恋人がやってくるかもしれない、というその希望を胸に抱き、人生の幸福を目指して生きていたのです。
自分にとっての最後の瞬間が「最後の瞬間である」ということを、私たちは知ることができるのでしょうか。それは死んでみるまで、だれにもわからないわけですが、少なくとも「幸福への希望」だけは、最後まで私たちにつきあってくれる可能性があるようです。

>>次回もお楽しみに(10月25日更新)

石井ゆかりの『幸福論』

  1. 「自分が自分である」ということ
  2. お金があれば、幸福になれるか?
  3. 「知る」という幸福。
  4. 「帰るべき場所」と幸福。
  5. 愛と創造について。
  6. 健康第一!
  7. 「パートナーシップ」と幸福。
  8. 自分の人生は「自分だけのもの」なのか。
  9. 旅する幸福。「知る」喜び。
  10. 「自己実現」とは何か。
  11. 「友」と「希望」。
  12. 「幸福」とは何か。

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※Webサイト「筋トレ・週報」より転載。スマホ有料コンテンツ
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石井ゆかり(いしいゆかり)

ライター。星占いの記事やエッセイなどを執筆、「12星座シリーズ」(WAVE出版)は120万部のベストセラーに。Twitterのフォロワー数は30万を越える。著書多数。

 

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