18歳という若さで中原中也賞を受賞した詩人の文月悠光さん。詩のみならず、今の世を生きる女性として、誰もが感じる“生きづらさ”や“孤独”を綴ったエッセイ集も話題です。
このたび、そんな文月さんによる、12星座別「恋愛詩」の連載がスタート。毎月、月ごとの星座を主人公とした一篇を執筆していただきます。さらに、その詩をモチーフとしたコイズミリカさんの美しいイラストもお届け!
切なくて愛おしくて胸がキュンとする…詩とイラストのコラボレーションをお楽しみください。
風の呼び声に振りかえるたび、
ひるがえる予感の数々。
手放せない選択肢に、胸は惑いつづける。
あなたはわたしを呼ぶだけでいい。
それがプロローグ、物語の合図。
「あなた」との出逢いを思い返しては、
わたしは心の中の筋書きを結び直す。
彼らはわたしの空洞を
何食わぬ顔で通り過ぎていく。
みんなの恋が全部同じならば、
物語はもっと単純に済んでいて
ここで膝を抱えることも無かったかもね。
今は離ればなれだとしても、
かならず この地平線上で逢える。
恋は何度でもよみがえる。
それは、いちど沈んでいった陽が
また輝きながらのぼるのと同じこと。
夜明けの地平線に立てば
光がひとすじ滲みゆく。
黄色い太陽、
わたしから目をそらさないで。
燃える瞳で射抜いてよ。
頼りないわたしの肩を
力いっぱい照らして、抱き寄せるの。
あなたは、全物語の宛先なのだ。
わたしの言葉も、ちょっとした仕草も
あなたが見ることで完成する。
確かにわたしの一部であった、
そのまなざしだけが
今も胸に焼きついて離れない。
終わらない記憶のとびらを叩き、
不意にわたしの名を呼ぶことがある。
☆この連載をするにあたって占星術家・まついなつき先生に西洋占星術をレクチャーしていただきました。
「12星座の恋 まついなつき×文月悠光」はこちら
詩人。1991年北海道生まれ。16歳で現代詩手帖賞を受賞。高校3年の時に発表した第1詩集『適切な世界の適切ならざる私』(思潮社)で、中原中也賞、丸山豊記念現代詩賞を最年少で受賞。詩集に『屋根よりも深々と』(思潮社)、『わたしたちの猫』(ナナロク社)。近年は、エッセイ集『洗礼ダイアリー』(ポプラ社)、『臆病な詩人、街へ出る。』(立東舎)が若い世代を中心に話題に。NHK全国学校音楽コンクール課題曲の作詞、詩作の講座を開くなど広く活動中。
★オフィシャルサイト「Fuzuki Yumi Website」
★Twitter「文月悠光@luna_yumi」
イラストレーター。1989年生まれ。
2012年 東京工芸大学デザイン学科卒業。
「言えないこと 見えるもの 彼女たちを通して絵にする」をテーマに、イラストやオリジナルテキスタイル等を制作。
★ホームページ「RIKA KOIZUMI」
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