18歳という若さで中原中也賞を受賞した詩人の文月悠光さん。詩のみならず、今の世を生きる女性として、誰もが感じる“生きづらさ”や“孤独”を綴ったエッセイ集も話題です。
このたび、そんな文月さんによる、12星座別「恋愛詩」の連載がスタート。毎月、月ごとの星座を主人公とした一篇を執筆していただきます。さらに、その詩をモチーフとしたコイズミリカさんの美しいイラストもお届け!
切なくて愛おしくて胸がキュンとする…詩とイラストのコラボレーションをお楽しみください。
「選ばせてあげる」
その泉から現れた女神は
月夜に微笑みながら、
木こりの誠実さを試すのだ。
「あなたを救いたい。
だから、わたしは問いかけるの。
どの愛が本物でしょう?
よく受けとめて、確かめるのよ」
愛し抜くために
欲しいのは、鋭い真実だけ。
あなたは自らを裏切った。
わたしの愛を手放した。
嘘の輝きに目がくらんだのでしょう。
不実な選択は
最後の優しさだったのか。
わたしの正義を憎んでほしい。
たやすくゆるせてしまうくらいなら。
たくみに水辺へ誘いだし、
大切なものを落とすように仕向けた
きたないわたしのことを、
あなたは ゆるしてはいけない。
もういちど選ばせてあげる。
わたしを泉の底から引き上げて
遠く連れだすのよ。
そして腕の中で叱るのです。
かがやく銀の斧を握らせた、
わたしの愛の実験を
ゆるすな。
【次回は7月「獅子座の恋愛詩」】
☆この連載をするにあたって占星術家・まついなつき先生に西洋占星術をレクチャーしていただきました。
「12星座の恋 まついなつき×文月悠光」はこちら
詩人。1991年北海道生まれ。16歳で現代詩手帖賞を受賞。高校3年の時に発表した第1詩集『適切な世界の適切ならざる私』(思潮社)で、中原中也賞、丸山豊記念現代詩賞を最年少で受賞。詩集に『屋根よりも深々と』(思潮社)、『わたしたちの猫』(ナナロク社)。近年は、エッセイ集『洗礼ダイアリー』(ポプラ社)、『臆病な詩人、街へ出る。』(立東舎)が若い世代を中心に話題に。NHK全国学校音楽コンクール課題曲の作詞、詩作の講座を開くなど広く活動中。
★オフィシャルサイト「Fuzuki Yumi Website」
★Twitter「文月悠光@luna_yumi」
イラストレーター。1989年生まれ。
2012年 東京工芸大学デザイン学科卒業。
「言えないこと 見えるもの 彼女たちを通して絵にする」をテーマに、イラストやオリジナルテキスタイル等を制作。
★ホームページ「RIKA KOIZUMI」
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