18歳という若さで中原中也賞を受賞した詩人の文月悠光さん。詩のみならず、今の世を生きる女性として、誰もが感じる“生きづらさ”や“孤独”を綴ったエッセイ集も話題です。
このたび、そんな文月さんによる、12星座別「恋愛詩」の連載がスタート。毎月、月ごとの星座を主人公とした一篇を執筆していただきます。さらに、その詩をモチーフとしたコイズミリカさんの美しいイラストもお届け!
切なくて愛おしくて胸がキュンとする…詩とイラストのコラボレーションをお楽しみください。
会議室を後にして
廊下の壁に踊るわたしの影絵。
壁際を器用についてきて、
わたしよりも、わたしみたいだ。
誰より軽やかなかたわれへ
ひとり微笑みかける。
今夜、タイムカードと引きかえに
影絵のわたしに交替するの。
飼い慣らせるものなら、
飼い慣らしてごらん。
まなざしは管理できない。
きみを照らすためには
光だけだと強すぎること、
ちゃんと知っているから。
ときには影となって
忍び寄っていこう。
この目にすべてを確かめさせて。
わたしをきみから引き離してよ。
きみは光の速さで抜き去って、
わたしをもっと駆り立てるの。
けれど彼方から振り返ること、
忘れては厭。
視線と視線で戯れたなら
影は光に追いついて、
ふたりの距離はゼロとなる。
ただ激しく 競うように見つめて
恋の閃光に破れていく。
(※2019年5月21日 13:15 公開記事)
☆この連載をするにあたって占星術家・まついなつき先生に西洋占星術をレクチャーしていただきました。
「12星座の恋 まついなつき×文月悠光」はこちら
詩人。1991年北海道生まれ。16歳で現代詩手帖賞を受賞。高校3年の時に発表した第1詩集『適切な世界の適切ならざる私』(思潮社)で、中原中也賞、丸山豊記念現代詩賞を最年少で受賞。詩集に『屋根よりも深々と』(思潮社)、『わたしたちの猫』(ナナロク社)。近年は、エッセイ集『洗礼ダイアリー』(ポプラ社)、『臆病な詩人、街へ出る。』(立東舎)が若い世代を中心に話題に。NHK全国学校音楽コンクール課題曲の作詞、詩作の講座を開くなど広く活動中。
★オフィシャルサイト「Fuzuki Yumi Website」
★Twitter「文月悠光@luna_yumi」
イラストレーター。1989年生まれ。
2012年 東京工芸大学デザイン学科卒業。
「言えないこと 見えるもの 彼女たちを通して絵にする」をテーマに、イラストやオリジナルテキスタイル等を制作。
★ホームページ「RIKA KOIZUMI」
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