漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」
このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!
第31回 アクマの辞典 ア行
【ウ】
➤ 「受け身」(うけみ)
…全部受けとめるのも、受け流すのも疲れるのでこれからは「避け身の女」がくる
今回のテーマはあ行より「受け身(の女)」だ。
このサイトは見ての通り、占いコンテンツが充実している。
むしろ何故「占い」をテーマに選ばなかったんだと言うぐらいだ。吉牛に行こうと提案しておいてカレーを頼む奴ぐらい不可解である。
しかし、全く無関係というわけでもない。占い好きな女は「受け身」の傾向があると言われているそうだ。
「受け身」とは決して、現代的な女の生き方とは言えなくなってきている。
自活し、結婚するも出産するも自分で決めるのが今の時代の女であり、「受け身」などという、うすらボンヤリした生き方では、自称「グイグイ引っ張って行くタイプ」の男が運転する軽トラの荷台にしがみついて生きる羽目になる、というわけだ。
しかし「受け身」な態度が全て従属的かというと、必ずしもそうではない。
私は数年前、家を建てた。注文住宅なので、敷地面積と予算の許す限り自由にすることができた。なんでも自分の思い通り、と言えば聞こえは良いが「なんでも」の中には便所のドアノブの色とかも含まれているのだ、正直どれでもよい。
しかし施工主は、どうでもいいことまで全部決める義務があるため非常に疲れた。
「なんでも自分で考えて決める」というのは、意外と面倒くさいのだ。
それよりもっと楽なのは「誰かに決めさせ、気に入らなかったら文句をつける」ことだ。
夕飯はなんでもいいと言いながら「そうめん」と言ったら「え~」と言うポジションである。
「あなたに任せる」と、一見受け身な態度で面倒くさいことは下々にやらせ、最終決定権は自分が持つと言う「従属的」どころか完全に「貴族の思想」だ。
時には他人に決断を委ねたほうが効率的なこともあるし、「乗るしかない、このビッグウェーブに!」という名言があるように世の中の流れに身を任せたほうが良い結果になることもある。
受け身な女は現代的ではないかもしれないが、だからと言って「総攻め」という同人誌でしか見ないような、攻め一方の女も柔軟性がないし、何より疲れてしまう。
戦況によって受けと攻めを変えられるバランス型ファイターが現代的な女と言えるのではないだろうか。
恋愛に関しては「受け身」のほうがモテるらしい。何故なら、モテというのはまず相手に「イケそう」と思わせるのが大事だからだ。
つまり、いくらイイ女でも、難攻不落の要塞の如く攻め入る相手全員を大砲で撃ち落としてそうだと「ムリめ」と思われて挑戦者自体がそうそう現れない、つまりモテない。
逆に「受け身の女」は門が半開きで「来るものは拒まず」「押しに弱い」雰囲気である。そこに「イケるのでは」と思った男が寄って来るのだ。
しかし、このモテは、毎度おなじみ「雑魚モテ」である。鍵をかけてない家に泥棒が入って来るのと同じ原理だ。
よって恋愛においては、意中の男は「受けとめ」、そうでない男は「受け流す」二種類の「受け」を使いわけるのが、デキる受け身の女である。
【ア】
➤ 「頭ポンポン」(あたまぽんぽん)
…漫画やドラマで使うときは「これで喜ぶ女はフィクションです」と明記したほうがよい
【イ】
➤ 「インフルエンサー」(いんふるえんさー)
…インフルエンザのインフルエンサーと言うのを我慢するのに骨が折れる存在
【ウ】
➤ 「受け身」(うけみ)
…全部受けとめるのも、受け流すのも疲れるのでこれからは「避け身の女」がくる
【エ】
➤ 「遠距離恋愛」(えんきょりれんあい)
…同居していても浮気する奴はするので距離は関係ない
【オ】
➤ 「押しに弱い」(おしによわい)
…自分の押しで倒れた相手は、他の奴の押しにも倒れると思ったほうがいい