18歳という若さで中原中也賞を受賞した詩人の文月悠光さん。詩のみならず、今の世を生きる女性として、誰もが感じる“生きづらさ”や“孤独”を綴ったエッセイ集も話題です。
このたび、そんな文月さんによる、12星座別「恋愛詩」の連載がスタート。毎月、月ごとの星座を主人公とした一篇を執筆していただきます。さらに、その詩をモチーフとしたコイズミリカさんの美しいイラストもお届け!
切なくて愛おしくて胸がキュンとする…詩とイラストのコラボレーションをお楽しみください。
旅をしたい。
たとえば、きみの見ている夢をのぞきに
こっそりと夜出かけてしまいたい。
そこに、わたしがいなくてもいいから。
眠るまぶたをノックして、
わたしの知らないきみを訪ねにゆくのだ。
空を染め尽くす
濃密なネイビーブルー。
思い出すのは、少女のころに
科学館で観たプラネタリウム。
愛と殺し合いの歴史を
星たちは毎夜、紡いでいる。
射抜かれた胸の痛みを
もう眠らせてはおけない。
冴え冴えと醒めた瞳のなかを
星は駆けていくのだから。
冷えていく夜気の鋭さを
弓矢のようにたずさえて、
わたしは夢の世界の使者となろう。
熱いまぶたをノックして、
きみがどんなにまばゆい星か
わたしがきみに見せてあげる。
【次回は12月「山羊座の恋愛詩」】
☆この連載をするにあたって占星術家・まついなつき先生に西洋占星術をレクチャーしていただきました。
「12星座の恋 まついなつき×文月悠光」はこちら
詩人。1991年北海道生まれ。16歳で現代詩手帖賞を受賞。高校3年の時に発表した第1詩集『適切な世界の適切ならざる私』(思潮社)で、中原中也賞、丸山豊記念現代詩賞を最年少で受賞。詩集に『屋根よりも深々と』(思潮社)、『わたしたちの猫』(ナナロク社)。近年は、エッセイ集『洗礼ダイアリー』(ポプラ社)、『臆病な詩人、街へ出る。』(立東舎)が若い世代を中心に話題に。NHK全国学校音楽コンクール課題曲の作詞、詩作の講座を開くなど広く活動中。
★オフィシャルサイト「Fuzuki Yumi Website」
★Twitter「文月悠光@luna_yumi」
イラストレーター。1989年生まれ。
2012年 東京工芸大学デザイン学科卒業。
「言えないこと 見えるもの 彼女たちを通して絵にする」をテーマに、イラストやオリジナルテキスタイル等を制作。
★ホームページ「RIKA KOIZUMI」
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