2013.04.16 10:00

「自分を変えたい」第3回【小池龍之介の恋愛成就寺】お悩み11

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小池龍之介の恋愛成就寺

気鋭の僧侶でありベストセラー作家でもある小池龍之介さんが、悩める女性の悩みにお答えするコーナー「恋愛成就寺」。恋に振り回される女心を諭す的確すぎる回答は、腹落ち感をもたらした後、ボディブローのようにじわじわ効いてきます。

今回のお悩み「自分を変えたい」

(S・T 29歳 静岡県 会社員)

3年間付き合った彼にふられました。私と一緒にいると自由がなく、心がしおれてしまうというのが理由でした。

付き合う前のほうが生き生きして楽しかったと彼は言います。ショックです。長い付き合いなのでわがままも言いましたが、お互い率直に気持ちを伝え合っていると思い込んでいました。気兼ねなく話していたことが、彼にとっては重荷だったらしく、時には強い要望や脅迫にさえ聞こえていたと言われました。

ずっと彼は私のことがとても好きだから、こんなにいろいろしてくれるんだと喜んでました。彼のことはすっぱりと忘れて次の恋に向かいたいと思っています。でも、また同じような結末になるのはいやです。

第1回 第2回 第3回

小池住職からのお返事

同じ過ちを繰り返さないようにするには、子どもじみた甘えではなく、対等な形で本当に率直なコミュニケーションをしていくっていう・・・つまり、大人になれ、といわれても難しくないですか。

難しいですね。

何からはじめればいいですか?

別れた直後で引きずっている状況があるわけですよね。引きずっているからには、しょっちゅう思い出すはずなんですよ。私は率直だったのに、とか、私は自分の気持ちを伝えてただけなのに、とか。

なのに彼がそれを捻じ曲げて受け取って、って思ってますよね、この人、実は。脅迫なんてしてないのに、勝手にそんなふうに受け取ってひどい!とか。

思い出しますよね、しばらくの間。そうやって心の中で反復していることって何かって言うと、自分の正しさに執着したせいでうまくいかなかったのに、うまくいかなかった後にも、あれは正しかったって反復しているんですよ、脳内で。

心の中で反復して焼き付けたら性質が強まるから危険なんです

左側からの小池龍之介

心の中で、それで怒ったり、彼のことをなじったりしていると思うんですけども、その都度、自分がそういう性質を持っていたがゆえにうまくいかなかったことを脳内で反復して、正しかったと思おうとしている。

こうやって、心の中で反復して、心に焼き付けたらもっと性質が強まっていくから、実は危険なことなんです。

こういうときは、自分の心の中にいる子どもをなだめてあげなくてはいけません。

「私は正しかったのにどうして!」って思い出すたびに「ああ、自分が正しかったって思いたいんだね」というふうに自己認知してみるんです。自分がわがままなわけじゃないですか、そうしたら「自分のわがままを押し通したかったんだね」と自己認識してあげる。
「自分は悪くなかったのに彼が変な受け取り方をしていたと思いたいんだね」といった具合に。

子どもとしての自分を大人にしたければ、自分の中にいる子どもを「そういう情けない君なんだね」っていう感じで受容的になでてあげるというか、「自分は悪くないのに相手の受け取り方が間違っていたと思いたいんだね、わかったよ」っていう感じで、受け取めてやるんですね。そういう嫌な感情が出てくるたびに。

自分自身でしか癒せない傷

そうやって、しばらく彼を忘れられない間、繰り返し出てくるネガティブな感情をひとつひとつ受け止めて、自己認知してあげて「自分はこういう歪んだ心を持っていて、自己正当化したいんだなあ」って認識していくことを通じて、だんだん、「自分が正しかったのに」という気持ちが取れていく。

ないし「正しかったんだー!」って泣き叫ぼうとしている子どもは、自分自身で「そうなんだね、わかったよ」って自分であやしてやることで落ち着いていって、落ち着いていくことで大人になる。

他の人に「そうだね」となだめてもらうのは?

生憎変な心理カウンセラーみたいな人に相談して「いや、あなたは正しい、それでいいんだよ」みたいなことを言われたらどうなるかというと、泣いてる子どもは治るどころか、もっと甘える子どもになっていっちゃう。

誰かに相談する裏には「それはそれでいいんだよ」って他者から認めてもらおうとする心があったりしますね。

自分がその赤ちゃんを育ててあげて、大人にしてあげる

右側からの小池龍之介

「いいんだよ」じゃなくて「そういうわがままで寂しい、醜い心なんだね、わかったよ」という感じで、自分であやしてやることで、泣き止ませてあげる。そういう自己主張したい心の中での気持ちが鎮まっていくのと同時に、時間をゆっくりかけて忘れていくわけです。

時間がかかると思うんですが。そういうプロセスを重ねると、あるとき彼のことをあまり気にならなくなっていて、自分が正しかったとか、彼が悪かったとか、なんとも思わなくなります。

こうして心の癖が自分で治せた後に次の人に出会えると、前回の恋愛のショック療法のおかげで、かえって良い結果に結びつく感じになるでしょう。

すべての失恋に通じることですね。「私は悪くない!」とか「彼はひどい!」という気持ちを「そうだね、よしよし」って自分で言ってあげるしかない。

そうなんです。他人ではだめなんですよ。他の人ではなくて、自分がその赤ちゃんを育ててあげて、大人にしてあげるっていう感じですね。

仏教の煩悩のカテゴリーを使ってみるのがいい

他に方法はありますか。

ネガティブな気持ちは、出てくるたびに、その都度見つめるというやり方もありますし、根をつめて集中的に取り組むやり方もあります。

もし、その事柄を集中して整理してみたいと思われるようでしたら、仏教の煩悩のカテゴリーを使ってみるのがいい。

その相手に対して、いまだに要求していることがあるはずでしょう。それを書き出してみる。本当は自分はこういうつもりだったからわかってほしかった、とか、そういうのを図で、自分にはこういう欲求がある、こういう欲求があるって描き出してみる。

次に怒ってる感情を紙に書く。相手に対して怒っているのはこういうのがある、こういうのがある。一方的に自分の話を聞いてくれずに別れを切り出すなんてひどい、とか。

3つめは自分の心の中で整理できてない、混乱している気持ち。 自分でちゃんと整理できてないのはこんなのがある、こんなのがある、っていう感じで。

紙を3分割して、欲求の強烈なものと、怒りの強烈なものと、混乱していることの強烈なもの、ざーっと書いてみて、それらを「自分はこういう感情なんだね」って受け止めていってやる。

その紙につらつらと並べたものが、いわばその恋愛の物語の中で刻まれた傷の数々。その傷を癒すプロセスというわけです。

毒を出してあげる?

そうですね。可視化するような感じです。嫌な感情を直視するのはたやすいことではありませんが、認めることで振り回されなくなる。恋愛以外にもいろいろ役に立ちますよ。

合掌
正座する小池龍之介

小池龍之介(こいけりゅうのすけ)
1978年生まれ、山口県出身。正現寺住職、月読寺住職。東京大学教養学部卒。
2003年、ウェブサイト家出空間 [iede cucan]を立ち上げる。
2003年から2007年まで、お寺とカフェの機能を兼ね備えた「iede cafe」を展開。
それ以後、修行を続けながら月読寺や新宿朝日カルチャーセンターなどで一般向けに坐禅指導をすることに専念。
著書に『考えない練習』(小学館)、『自分から自由になる沈黙入門』『もう、怒らない』(ともに幻冬舎)、
『超訳ブッダの言葉』『煩悩リセット稽古帖』(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)など。
[書籍のご紹介]

恋愛成就寺


 

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