漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」
このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!
第16回 アクマの辞典 ア行
【イ】
▶ 「インスタ」(いんすた)
…インスタ映え目的でも外出するだけ偉い
今回のテーマは再びア行から「インスタ」だ。
今更過ぎるテーマだが、私はインスタをやっておらず、見る習慣もないので未だにインスタグラムがどういう世界か良く知らない。
もちろん、小中高エスカレーター式でスクールカーストのしんがりを守っていた者として「オシャレそうなもの」に対し、気に入らねえと思う気持ちもある、しかしそれ以上にインスタに近づけないのは「俺のレベルで楽しめるものではない」とわかっているからだ。
ちなみに私が大好きなのは、ツイッターだ、短く見積もって一日64時間はやっている。ツイッターの世界は「ぬるま湯」などと言ったら湯さんに失礼なぐらいの「ぬる泥」である。
「ウンコ行きたい」「ウンコ行ってきた」という文字通りクソのようなつぶやきが連日流れ、それが許容されている世界である。
おそらくインスタは「そういう感じ」ではないのだ、そういう感じで行ってもいいのかもしれないが、そのノリでインスタ界の覇権を獲るのは難しいだろう。
何せインスタに触れたことがないので勝手な想像だがインスタというのは「エモい写真を載せて“いいね”をせしめ合う世界」というイメージである。
もちろんツイッターでもバズりとかがあるが、あれは「どう見ても男性器な大根」とかがバカウケするフィールドだ。
インスタは「そういうの」ではなく、可愛いスイーツ、オシャレなファッション、感涙の景色、愉快な仲間とかが“いいね”をいただいている印象だ。
そんなところで生き残れるわけではない、俺は男性器大根の剣とおもしろ看板の盾で戦える戦場に帰らせてもらう。
つまり完全な偏見と被害妄想なのだが、少なくともツイッターより「向いてない」ことは確かだし、冒頭で言った通り「オシャレそうなものに対する憎しみと嫉妬」が邪魔をして手を出せないというのもある。
そういう感情を内に持つのは仕方ないのだが、それをあたかも正義であるかのように臆面もなく出しちゃっている人もいる。
「インスタ女子ディスり」だ。
インスタ映えする写真を撮るために、桜を根元から引っこ抜いて両肩に担いでいた、というならディスもやむなしだし、彼女にはインスタ以外の才能があると思うが、中には「ブスがはしゃいでパンケーキの写真を撮っているのが気に入らねえ」という、どこの法にも触れてないことに対しなぜか怒っている人がいるのである。
100歩譲ってこのシーンで怒っていいのは、至近距離でブスにはしゃがれたパンケーキさんだけだろう。
これは、ブス(若い女)という自分より下と見ている存在が、自分のわからないことで楽しそうにしているのが腹立たしいだけだろう。
このようにインスタだけではなく「なんか楽しそうな女」というのは常にディスの対象である、何をやっても怒られるならなら、そんな声になど耳を貸さず、最高にインスタ映えする平将門の首塚写真を撮ったり、より男性器に見える大根を探す旅に出たりしたほうがいい。
何かに熱中できるというのは、それが何であれ素晴らしいことである。
【ア】
▶ 「アラサー」(あらさー)
…25歳はギャグで使うが34歳はマジで言ってる
【イ】
▶ 「インスタ」(いんすた)
…インスタ映え目的でも外出するだけ偉い
【ウ】
▶ 「腕枕」(うでまくら)
…腕が痺れ、首が疲れる、ルーズルーズの関係
【エ】
▶ 「M」(えむ)
…自称Mは、いじると割とすぐ怒る
【オ】
▶ 「お母さん」(おかあさん)
…ネットに疎いように見えて裏アカまで押さえてくる