鏡リュウジ×寺山マル×田波有希~タロット×漫画『サングリアル』座談会vol.3

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2016年、タロットを重要なモチーフとしたファンタジー漫画『サングリアル~王への羅針盤~』が誕生!
9月12日にその第2巻が発売されるということで、帯のコピーを手がけた鏡リュウジさんが、作者の寺山マルさん、監修協力をしている占い師の田波有希さんと初対面しました。

漫画の舞台は中世ヨーロッパ。王族の姫君と、貧民街で暮らす謎めいたタロット占い師の出会いから始まる魅惑のストーリーに興奮を隠せない様子の鏡さんが、寺山さん、田波さん、そして担当編集者の瀬尾さんに様々な質問を投げかけます。

作品づくりの舞台裏はもちろん、タロットの豆知識や歴史的背景、さらには占いとの上手な付き合い方にまつわるお話まで飛び出して…。


前回に引き続き、タロットにまつわる、ちょっと深いお話をお届け。漫画の随所に登場する、美しいオリジナル・タロットカードについての秘話も伺いました!

鏡リュウジ…心理占星術研究の第一人者、圧倒的な支持を受ける存在で、大学で教鞭をとるなど、アカデミックな世界での占星術の紹介にも積極的。

寺山マル…2014年、新人コミック大賞で入選、デビュー。漫画を読むのとガムが好物。

田波有希…プロとしての鑑定歴16年、1万人超の鑑定数を誇るタロットリーディングを中心とした占い師。

「ウェイト版」の謎は小アルカナ

編集部:「ウェイト版」以外のタロットについてはどう思われますか?

田波有希(以下/田波):「トート・タロット」(※1)なんかも面白くて好きなんですけど、やっぱり私は「ウェイト版」派です。

鏡リュウジ(以下/鏡):「ウェイト版」と「トート・タロット」だと、その誕生の仕方からして違うんですよね。「ウェイト版」は「ウェイト・スミス版」とも言って、最初の発表の場は「オカルト・レヴュー」というオカルト雑誌なんですよ。
ウェイトがこれを商業誌で発表したことを、クロウリーは「ウェイトは商売に走った」と批難して、その後に自分でタロットを出したんです。

田波:なるほど。そもそもの方向性が違うんですね?

鏡:はい。ちなみに、ウェイト自身は「ウェイト版」のタロットがあまり気に入っていなかったようで、よりキリスト教神秘主義的なタロットも後に出しています。

田波:知りませんでした。見てみたいです!

鏡:一般的には「トリニック版」と言うのかな?カード化はされていないのですが、本にはなっています。占いに使うものではなく、どちらかというと瞑想用のものですね。

田波:でも絵柄はタロットなんですか?

鏡:ええ。ところで、「ウェイト・スミス版」の謎は、実は小アルカナなんですよ。「ウェイト・スミス版」は、全てのカードが絵札になっているじゃないですか。この絵札についてウェイトは、たぶんあんまり口出ししていないと思うんです。
だから絵を描いたパメラ・コールマン・スミス(※2)の独自の世界観が相当入ってるんですね。ほとんど彼女任せだったと言ってもいいかもしれません。
そして、パメラはこのカードに自分の故郷の風景を入れ込んだとか、友達が飼っていた猫を描いた、なんて説があります。

田波:へぇー!

寺山マル(以下/寺山):友達の猫?面白いですね!

タロットの絵を描くのは難しい!

編集部:今回、漫画に登場するタロットの絵柄は寺山先生のオリジナルですよね?

寺山:はい。頑張って描いています。

鏡:カード化して販売する予定はありますか?

瀬尾亞佑(以下/瀬尾):したいですね。有希さん(田波さん)からダメ出しをいただいて、寺山先生、何回も何回も描き直してるんです。

田波:すみません(笑)。ただ、カードの意味に関するダメ出しは、ほとんどしたことがないんですよ。それより、寺山先生ご自身の魅力をもっと全面に出してほしいと思っていろいろ言っています。
モデルとして何かのカードを見ると、どうしてもそれに捉われて先生らしくなくなるから、「悪いけど、もう少しこういう感じにしてください」「もっと強く描いてください」って。

瀬尾:そのダメ出しの仕方が面白いんです。「バーンってやって」とか、“世界”や“太陽”は「あっぱれって感じでお願いします」とか。

田波:“死”は「もう、一目で“死”ってわかるようにしてください」って言いました(笑)。

鏡:あはは。僕もこれまで、いろんな雑誌やメディアでタロットの監修をしてきたのですが、仰る通り、みなさん、絵を描くのが非常に難しいようです。タロットって少なくとも300~400年変わっていないので、構図としてある意味、完成度高いんですよね。つまり、下手をするとコピーになってしまうんです。

田波:そうですよね。

鏡:なかなかオリジナリティーを出しにくいと思います。逆にオリジナリティーを出しすぎると、今度はタロットじゃなくなるっていう、かなり微妙なところだなと。

田波:今回、監修するにあたっていろいろなカードを見ていて、鏡先生のカードも改めて拝見したのですが、『ソウルフルタロット』(※3)は、カードの象徴をはっきり出して別の絵にしているという意味で、ものすごい成功例だと感じました。

鏡:ありがとうございます。あの絵は独創的ですよね。それから『はじめてのタロット』(※4)の独創性もすごいと思います。さすが、世界の荒井良二さんって感じで。

田波:はい。でも、そういったタロットを見て余計に考えてしまって。もし寺山先生に見せたら、今度はそっちに捉われちゃうかもしれないと思ったんです。なので、オリジナリティーを出せるようにできるだけ縛りは設けず、これだけは入れてほしいポイントをお伝えする、という形にしていきました。「月だけは入れて」「犬だけは必要」と。

鏡:なるほど。

寺山:最初に描いたものを見せたら、有希さんに「先生、悪いけどこれ、アールヌーヴォーです。近代っぽいから、もうちょっと昔っぽくしてください」と言われました(笑)。

田波:今思うと失礼ですよね。ごめんなさい(笑)。

寺山:いえ、本当に助かりました。ただ、確かにアドバイスはかなり抽象的ですよね。「あっぱれ」とか(笑)。
そういうふうに言っていただいたら、じゃあ、どこまで「あっぱれ」にしようかなと考えて、ベースの絵からずらしていく感じで描いています。

田波:怖いカードは「楳図かずお先生の作品くらい怖く」なんてことも言いましたね。

寺山:ふふふ。

編集部:そういうお話を聞いていると、さらにカード化を期待してしまいます。

寺山:ありがとうございます。もし実現したら、また描き直したくなるかもしれません。

鏡:小アルカナを56枚描くと思うと大変ですね。

寺山:確かに…頑張ります!

占いは、占い師と受ける側の共同作業

編集部:『サングリアル』を読んでいる中で、“占いが救ってくれるのではなく、決断するのは自分自身だ”というメッセージがとても印象的でした。みなさんは基本スタンスとして、普段からそういう考えをお持ちなんですか?

田波:それは、最初に占いを受ける側として瀬尾さんが話していたことにつながるかな?

瀬尾:そうですね。先ほど言ったように私、占いが大好きなんです。それこそ中学生の頃からハマっていて、いろんな占いを受けてきました。
あるとき、占い師さんに言われた通りの行動をしたら、大失敗したことがありまして。当時、付き合ってた彼氏に「そんなに放っとくなら浮気しちゃうぞ」と言いなさいって言われて、普段はそういうことを言うタイプじゃないのに、無理して言ってみたんです。そうしたら、それがきっかけでケンカして別れることになって…。

鏡:えー!(笑)

瀬尾:その出来事が自分の中で結構大きなスペースを占めてるんです。自分らしくない発言をしたことも、占い師さんを信じて失敗したことも嫌だし、その人が言ったことをやったから失敗したと責任転嫁するのも嫌だし。
結局、どんな占いを受けても、言われるがままに行動するんじゃなくて、アドバイスの内容をしっかり考えて昇華し、その後どうするか選ぶのは自分自身なんだ、という学びを得たんですね。それは受ける側のスタンスとしてかなり大事なことだと思っています。

鏡:占い師と鑑定される人の共同作業ですよね?

瀬尾:そう思います。ただ受けるだけじゃなく、自分で考えるのが大事っていうのは、寺山先生にお話しした覚えがあります。

寺山:そうですね。熱く語ってました(笑)。

鏡:普通はそこでもう二度と占いしないって思うんですけど、何で今でも好きなんですか?

瀬尾:ただただ好きなんですよね。だから、そのときは自分が悪かったんだなって反省しました。

鏡:偉いですね。偉いと言うか不思議!(笑)。

田波:私は占いをする側のスタンスとして、若い頃は「占いがはずれたら死ぬ」くらいの気持ちでいたんです。それって精神的にはすごくしんどいんですね。他人の人生に関わって、まずいことを言ったら、その人の身に何か起こるんじゃないかと思うのがつらくて。

田波:でも、お客さんって意外とライトな人も多いんです。あるとき、不動産についての相談をしたお客さんに「この物件はやめたほうがいいですよ」と言ったのに、しばらくしてまた来て「先生にダメって言われたけど、あの物件買っちゃった。やっぱり失敗だったんですけど、どうしよう?」と言われまして。
それを聞いて「そうか。個人の責任なんだ」と気が楽になりました。占い師とお客さんがそういう状態でいられるのって気持ちいいなって。

瀬尾:人生の中で占いを友好的に使うというか、占いに振り回されるわけでも洗脳されるわけでもなく、お互いがいい関係であるっていうことを、漫画の中で表現したいなって想いはすごくあります。世の中には「占いなんて信じてるの?」と言う人もいますが、私は占いが好きだし、このメンバーで漫画を作っている以上は「そうじゃないんだよ」ということを伝えたいですね。その想いが作品に出てるといいなと思っています。

編集部:それは絵にも出ているし、「決めるのはお前だ」というセリフからも感じられます。

寺山:うれしいです!

田波:主人公の成長ストーリーというベースがあるので、言われるがままに行動しているようでは、彼も成長できないですしね。占いは飽くまで背中を押す存在であり、頑張るのは彼自身なんです。

鏡:そうですよね。占いは日常生活の中の一つのエッセンスですから。

田波:私、鏡先生や石井ゆかりさんの占いが大好きで、ときどき見るのですが、ヘコんでるときに見ると「よし!」と元気が出るんです。占いにはやっぱり、心の栄養剤というか、自分を奮い立たせたり、慰めたりしてくれるものであってほしいなと思います。

鏡:確かに。読者のみなさんにもそういう使い方をしていただけたらありがたいですね。

【編集部註】

※1 イギリスのオカルティスト、アレイスター・クロウリーがデザインしたタロット。

※2 イギリス出身の画家・作家。「ウェイト・スミス版」のタロットカードのデザインをしたことで有名。

※3 鏡先生の著書。正逆を問わない斬新な解釈と、優しく繊細な色使いの絵柄が人気。

※4 同じく鏡先生の著書。荒井良二氏による美しく独創的な絵柄と、誰にでも読み解ける易しい解説が特徴。

次回予告

漫画家・寺山マルさんを丸かじり?これまでの作品のことや『サングリアル』の今後の展開などを、根掘り葉掘り聞いちゃいます!


陰謀と闘え。運命を選べ。弱い自分を打ち破れ。
禁断の王宮ブラッディー・ファンタジー、誕生。

『サングリアル~王への羅針盤~ 1』 (ビッグコミックス)

鏡リュウジ

1968年、京都生まれ。国際基督教大学大学院修了。占星術研究家・翻訳家。
京都文教大学客員教授。平安女学院大学客員教授。
日本トランスパーソナル学会理事。英国占星術協会会員。
著書に『鏡リュウジ 星のワークブック』(講談社)、『オルフェウスの卵』(文春文庫)、共著 角田光代『12星座の恋物語』(新潮文庫)、訳書にヒルマン『魂のコード』(河出書房新社)、サバス『魔法の杖』(ヴィレッジブックス)ほか多数。

鏡リュウジのルノルマン・オラクルカード

鏡リュウジのコンプリート西洋占星術カード

寺山マル

2014年、新人コミック大賞で入選、デビュー。
「月刊!スピリッツ」で『あいのあいだに(前後編)』掲載後、
本作が初連載作品となる。
漫画を読むのとガムが好物。

★Twitter@terayamamaru

田波有希

多摩美術大学卒業。同大学染織デザイン研究室助手を経て、美術作家として活躍しながら占い師に。
プロとしての鑑定歴16年、鑑定人数10000人以上。
東京、雑司が谷にて古本と占い「JUNGLE BOOKS」を拠点に活動。下北沢「FUTURE DAYS」などでも鑑定を行う。
「サングリアル~王への羅針盤」「神軍のカデット」監修中。


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