2015.02.06

「仕事が続かない欠陥人間」 雨宮まみの“穴の底でお待ちしています” 第17回

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穴の底でお待ちしています

誰にも言えない、けれど誰かに言いたい、そんな内緒の悩みやモヤモヤ、しょうもないグチからやりきれないつらさまで、穴を掘ってこっそり叫んでみたい気持ちを発散する、「感情の吹きだまり」……。そんな場所がこのコーナーです。あなたのやるせない気持ちを、安心してブチまけてみませんか? 雨宮まみが聞き手をつとめます。長文の投稿歓迎いたします。

(ぽく/女性/20代前半)
雨宮さん、わたしは「自分のやりたいこと」に悩まされています。去年の夏まで私はOLでした。それなりに名の知れている会社で、親の納得も得られた会社でしたが、平凡な繰り返しの毎日と、誰がやっても変わらない業務、頑張ってもだれも褒めてくれない、育ててくれない、そんな社風が、悪くはないのでしょうけど嫌になってしまい退職しました。

その後、元から興味があり、専門学校にも行った映像関係の仕事に転職し、誰もが一度は見たことのあるテレビ番組のADをやりはじめました。好きな仕事だったはずですが、そこで働く人間の適当さ加減や、理不尽さ(真面目に仕事をする人間がいじめられていました)に腹が立ち、尊敬できる人は一人もおらず、そして業界特有のハードな仕事(徹夜など)に心も体も疲れてしまい、4ヵ月ですが昨年いっぱいで退職することにしました。正直、続けられなかった……というより続けたいと思えなかった環境にがっかりしています。親はせっかく専門も行かせたんだからその業界で働いてほしいと思っていたと思います。そしてそういう苦しい環境で頑張れる人のほうがかっこいい感じがするじゃないですか。かっこよくなりたかったです。そうなれなかった自分にもがっかりしていますが、その環境で我慢をして続けることもできなかったのです。

興味のあることはいくつかあります。それを仕事にしてみたいとも考えます。でもまた失敗したら? 親をがっかりさせたら? とも思いますし、親の期待に添えるような職業、要は「そこなら安心」「これならいいか」と思ってもらえるような会社や業種に就かなければと思うのです。そのプレッシャーで自分がどの道を選んだらいいか全くわからなくなり、とても不安です。自分が仕事を続けられない欠陥人間のようにも思えてきます。

大人たちはどうやって仕事を選び、どんな気持ちで毎日働いているのでしょう。好きな仕事に就けて「仕事が大好き!」という気持ちで毎日働いている人は少ないように感じます。その人たちはあきらめているのでしょうか? どのように気持ちに整理をつけているのかわかりません。運命のように突然好きな仕事や環境にありつけたらいいのですが。

(※投稿内容を一部、読みやすいように編集させていただきました。)

2月ですからチョコレートをお出ししましょうか。迷いが多いようですから、頭をシャキッとさせるためにコーヒーも一緒にどうぞ。おいしいチョコレートは香りがぜんぜん違うんですよ。丁寧に作られたものを食べると、心がほっとしますよね。

どのように気持ちに整理をつけて働いているのか……。難しい問題ですね。難しさのひとつは、誰もがこのことについて、自分自身の答えしか持たないことです。私には私の答えしかなく、他の人がどう考えているのかというのは、正直よくわからないところがあります。

ただ、ぽくさんのおっしゃることには、少し気になるところがあります。まず、親の目をすごく気にされていること。そして親以外の目、自分の中の目なのでしょうか、それを気にされていることです。

ぽくさんは、親の期待に添えなかったことを悔いてらっしゃいますし、自分の価値観の中で「かっこいい」自分になれなかったことを悔いてらっしゃいます。

私の親は、私に公務員になってほしいと願っていました。そうでなくても、安定した仕事、恵まれた環境の仕事に就いてほしいと願い、大学まで行かせてくれました。でも、私はこの通り、親の願いとは対極の不安定な仕事をしています。ぽくさんのご両親も、安心できる会社に就職してほしいと願いながらも、ぽくさんを映像の専門学校に行かせてくれたのですよね。映像関係の仕事が不安定だとは言いませんが、親御さんなりにぽくさんの意志を尊重する気持ちはあったのではないかと思います。

ぽくさんの「やりたい仕事」には、今、余計なものが付随しすぎています。親のことはいったん、置いといてください。どこに就職しようと、最初はがっかりするかもしれない。心配だと言うかもしれない。また辞めたとか、なんで続かないんだとか、言うかもしれない。けど、もし親の望む就職先を選んで、そこでつらい目に遭ったらどうしますか? 「自分の選んだ道だから」と思えますか? 親のせいにしないと、はっきり言えるでしょうか。

ぽくさんの職歴は、私から見れば立派ですし、「たった一回の転職」と「二回の退職」でしかありません。そんなこと、やってる人はいっぱいいます。自分に問題があろうとなかろうと、よりよい職場や面白い仕事を求めて転職する人もいます。もちろん、ひとつの会社で長く働き続ける人もいますが、どちらの道が正しいとか、偉いとかはありません。何度辞めてもいいと思いますし、二度辞めたことに罪悪感を感じる必要もないと思います。それに、「興味のあることがいくつかある」というのは、とてもいい状態です。普通は、それを見つけるのにいちばん苦労するのですから。

もうひとつ気になるのは、ぽくさんの価値観が二元論のように、きっぱり分かれているように見えるところです。「仕事ができない=欠陥人間」「やりたい仕事=充実した仕事」のように、かなり単純化して考えておられるような気がしてならないのです。理想と現実をはっきり分け過ぎというのでしょうか。そんな感じがします。

理想を壊したくて言うのではありませんが、やりたい仕事の中にも苦悩はあります。人間関係で嫌なこともあります。楽しさややりがいしかない仕事なんてあり得ないし、尊敬できる人しかいない職場もあり得ないと思います。もちろん、楽しさが多い仕事を選んだほうがいいですし、苦痛が自分のキャパシティを超えて心身を蝕むようなら転職を考えたほうがいいでしょう。「どんな仕事にも苦労はある」という、ありきたりなことが言いたいわけではなくて、「やりがい」とか「やりたい仕事」とか、そういうものは、単独できれいな形で存在しているのではなく、さまざまな複雑なものの上に成り立っているのだということを、私は言いたいのです。

人は、気が重いことの中に面白さを見つけたり、幸せの絶頂の中にはかなさを見つけたりする生き物です。お葬式のあとに宴会をやったりします。そういう複雑さが、仕事にもあります。嫌なことの中に面白さがあったり、楽しさの中に苦さがあったりします。

ぽくさんは、仕事にいろんなものを求め過ぎているのではないでしょうか。自分のやりたい仕事に就くことが、アイデンティティの問題に強く深く関わっていて、だからこそ「周囲に受け入れてもらいたい」ということも含めてこんなに悩んでおられるのではないかと思うのです。

私は今でこそライターという、非常に不安定で、収入も多くない仕事をしていますが、ライターになろうと考えたのは25歳です。それまではなれると思っていませんでしたし、なりたいと考えたこともありませんでした。自分なんかが選択して良い職業だとは思ってなかったのです。でも「文章書いて生きていけたら、楽だなー」と思って、ずうずうしい気持ちでこの仕事を選びました。文章を書くのは、あまり苦にならなかったからです。本が出るまで十年ぐらいかかりましたから、そんなにすごく向いていたわけでもなかったんですけどね。

言うまでもありませんが、私の仕事は、アイデンティティと結びつきやすい仕事です。だからこそ、結びつけすぎると命を縮めます。命を削るようにして書く人の仕事にも価値がありますが、私はそういう能力は自分には欠如していると思いますので、アイデンティティと結びつく部分はあれど、どこかで「仕事があってもなくても、自分は自分」という気持ちを持たなくては、生きていけない気がしています。そもそも、世の中に必要な仕事ではないわけですしね。ライターというのは。

かっこいいことの裏側には、たくさんのかっこ悪さがありますし、誰かの期待に添うことには、いくつもの負担や犠牲があります。そして、「仕事が大好き!」と「あきらめている」の間にこそ、複雑で豊かなものがある、と私は思っています。好きだけどつらいとか、しんどいけどこの瞬間のために生きていると思えるとか、そういうやつはみんな、その間に存在しています。そのわけのわからない複雑さの中に、本当の理想や現実があるのではないでしょうか。


みなさまの愚痴を、雨宮まみが「穴の底」にてお待ちしております。長文大歓迎!
恋愛相手の愚痴も、職場環境にまつわる愚痴も、誰にも言えない愚痴も、「スポーツジムのおじさんの汗がキモイ…」みたいなしょうもない愚痴も、なんでもござれ。大なり小なり吐き出して気を楽にしませんか?
「どうしたらいいでしょう?」のような相談は受け付けておりません。ごめんなさい。


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雨宮まみ
雨宮まみ(あまみやまみ)
ライター。アダルト雑誌の編集を経て、フリーライターに。女性の自意識との葛藤や生きづらさなどについて幅広く執筆。女性性とうまくつきあえなかった頃を描いた自伝的エッセイ『女子をこじらせて』出版後、「こじらせ女子」がブームとなる。他の著書に対談集『だって、女子だもん!!』(ポット出版)、『ずっと独身でいるつもり?』(KKベストセラーズ)、『女の子よ銃を取れ』(平凡社)、『タカラヅカ・ハンドブック』
(新潮社)など。

「キレイになりたい!」と言えないあなたに。

『女の子よ銃を取れ』

他人の視線にビクビクしたくない、自分らしく堂々としていたい、かわいい、キレイと言われてみたい……そう思っていてもどうすればいいのかわからないし、「キレイ」への道が怖くてたまらない。
キラキラした「キレイになりたい」本を手に取ることすら怖いと感じるくらい、「キレイ」が重荷になっている人のための、自意識や他人の視線、自分の視線を解きほぐす本です。

雨宮さんより一言:
何をしても、何を買ってもうまくいかない、変われないしパッとしない……。そんな悩みは、本当は多くの人が持っています。それ以前に何をすれば、何を買えばいいのかもわからない人だってたくさんいます。この間まではわかっていたのに、急にわからなくなってしまった人も。そんなときに、自分を取り戻し、新しい自分を作り上げるヒントや、気持ちの持ち方の軸のようなものがあればいいなと思って書きました。落ち込んだときのおともにしていただけると嬉しいです。

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