2015.01.03

「死ぬことしか残されていない」 雨宮まみの“穴の底でお待ちしています” 第15回

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穴の底でお待ちしています

誰にも言えない、けれど誰かに言いたい、そんな内緒の悩みやモヤモヤ、しょうもないグチからやりきれないつらさまで、穴を掘ってこっそり叫んでみたい気持ちを発散する、「感情の吹きだまり」……。そんな場所がこのコーナーです。あなたのやるせない気持ちを、安心してブチまけてみませんか? 雨宮まみが聞き手をつとめます。長文の投稿歓迎いたします。

(金づる/女性/30代後半)
初めまして。いつも楽しく雨宮さんの文章を読ませていただいております。 普段お受けされているお悩みより、重たいかもしれません。その時は「私が読む義務はない!」と途中でメールを消去して下さい。

私は35歳の会社員です。年収は同年代と同じ位だと思います。 外見が若く見られる家系のためか、20代半ば~後半に見られます。加えて拒食症のため「不快ではない」外見(157cm40kg)を保っています。 作り笑いは完璧にできるため、人当たりはとてもいいです。昔は「お嫁さんにしたいタイプ」と言われました。

私の穴は「今すぐにでも死ななければならない」「相手や周囲に迷惑がかかるから、結婚や恋愛をしてはいけない」という思い込みが外せない事です。同級生が育児の話をしていたり、会社の後輩が結婚式の話をしていると、この人達とは住む世界が違うから、私が関わったら彼女達に申し訳ない!と思って逃げます。同年代の女性の笑い声が聞こえると、正直、苛立ちすら覚えます。

面倒な事に、プライベートの趣味で私に好意を抱く男性は「女性が10人いたら10人とも嫌がる」ようなタイプの方ばかりです。過去、ストーカーは当たり前、軟禁されたり、犯罪行為に巻き込まれた事もあります。

家庭の事情で借金を数百万抱えています。父母親戚に長年DVを受けてきたため、裁判を起こして絶縁しました。天涯孤独です。私の年齢は、子どもを希望する方なら躊躇するでしょう。そうでなくても、借金がある時点で結婚相手・恋人としては不釣り合いだと思います。会社では使えないと影で言われていることも、承知しています。

借金を返したら、死ぬことしか残されていません。同級生とは絶縁状態、会社でも仕事以外の事は一切話さず、プライベートでも言えず、精神科医にのみ相談する日々が20年続いています。趣味はありますが、そちらでできた友人達は私を20代だと勘違いしている上、こんな訳あり人間だとは全く思われていません。現在、その趣味で知り合った約200人の方々に年齢も素性も誤解されている事が申し訳ないのと、その方々も基本的に信用していない自分に嫌気がさします。自分も信用できないのに。 今までICUに数十回運ばれて、自殺未遂(又は家族知人による他殺未遂)から蘇生されてしまいました。 雨宮さんにお願いです。借金を完済するまでの間「金づる」以外の存在意義を、私に与えて下さい。そうしたら完済の暁には、安心して自殺を完遂できます。

(※投稿内容を一部、読みやすいように編集させていただきました。)

愚痴をお聞きする場所ですので、基本的に「お願い」は受け付けていないのですが、まぁ、新年ですしお屠蘇でもお出ししましょうか。お屠蘇なんか飲んで何が変わるのかって思いますよね。でも、こういうのが案外大事なんですよ。何かが変わるとも思えない、おまじない程度の効力しか感じられないものを、誰かが自分のために用意してくれて、朱塗りの杯なんか出してくれるっていうのは、うれしいものだったりなんかするもんです。

金づるさん、というお名前をお呼びするのは抵抗がありますが、かりそめのお名前ですのでそう呼ばせていただきます。金づるさんの愚痴が「重い」とすれば、それはこの愚痴に私が経験したことのない要素がたくさん含まれているところでしょうね。DVや自殺未遂、ストーカー、軟禁……。いずれも私は経験がありません。想像で語るのは無責任すぎてできないことばかりです。

しかし、私が文章から受けた金づるさんの印象は、ご自分で書かれているものとはかなり違ったものです。つらい家庭環境の中でお育ちになられていますが、自力で行動してすでに(おそらく法的に)絶縁をされている。借金はあるものの、数百万。もちろん少なくはないですが、「完済の暁には」と書かれている通り完済できる額だと思います。そして、趣味で知り合った人が200人以上もいらっしゃる。これらの背景からは、意志も行動力もある人物像が浮かび上がってきます。

金づるさんは書かれている通り、見た目もよければ人付き合いも上手なのでしょう。だからこそ、外部からの評価と内面のズレが起き、外部からどんなにほめられ、好ましいと言われても、「この人たちは本当の自分を知らない。年齢も誤解しているし、こんな事情を抱えていることも知らない」と思い、自分が受け入れられているようには感じられないのではないでしょうか。さらに「プライベートの趣味で私に好意を抱く男性は『女性が10人いたら10人とも嫌がる』ようなタイプの方ばかり」なのですから、もし好意を持たれても、それを警戒しなければならないという状況が長く続いているのだろうと思います。

「相手や周囲に迷惑がかかるから、結婚や恋愛をしてはいけない」と、なぜ思うのでしょう。借金があるからでしょうか。絶縁したとはいえ、ひどい親戚がいたからでしょうか。天涯孤独の身だからでしょうか。私には、金づるさんには何も悪いところはないように見えます。他殺未遂もあるとのことですから、書かれていないことでも、何か過去の不幸や不運が追いかけてくるような出来事があったのかもしれません。けれど、それでも金づるさんは悪くありません。

不思議に思うのは、金づるさんが、趣味で出会った200人以上もの人に、年齢すら本当のことを言ったことがないということです。一度も訊かれなかった、ということは考えにくい。なぜ言えないのでしょう。周囲の人が期待している自分でなければ興味を失われるという不安があるのでしょうか。それとも、迷惑をかけたくないがゆえに本当のことをひとつも言えないのでしょうか。

金づるさんの苦しさは、人を信じられないこと、誰にも心を開けないことですよね。借金や暴力もそれ自体、とても重い苦しみだと想像しますし、苦しさとして理解されやすいのはそれらの言葉でしょうが、それらの行為で何より追いつめられ、苦しいのは心です。こんなこと、精神科の先生に何百回と言われているでしょうね。でも、心の苦しさって本当に、人に説明して理解されるのは難しいことです。だから、多くの人は話すことをあきらめてしまうし、話して、寄り添ってくれる人と一緒にいてすら、自分の気持ちは自分にしかわからない孤独があります。

私が希望を持てたのは、「同年代の女性の笑い声が聞こえると、正直、苛立ちすら覚えます」という部分です。金づるさんのような苦労を知らずに笑っている、当然のように幸せを求める人たちに苛立つ気持ちを金づるさんが持っているのは、まだすべてを諦めているわけではないからだと思います。

怒っても、恨んでも取り返しのつかないことの連続の中に生きている人に、希望を持てと言うほうが残酷かもしれません。けど、その苛立つ気持ちをなかったことにしないでほしいのです。それは、どうして自分だけがこんな思いをしなくてはならないのか、という気持ちですよね。金づるさんは周りに気を遣いすぎるほど遣っているのに、笑う側は金づるさんに気兼ねなく笑っています。笑っている彼女たちに悪気があるわけではない。でも、こんな出来事を起こす神の采配みたいなものに、私は怒りを感じます。なんで金づるさんを、こんな目に遭わすのか。こんなに頑張っているのに、いいかげん幸せにしてやってもいいじゃないかと思います。

金づるさんのような体験はしていませんが、私にも人生を諦めたくなることはあります。期待して叶わないこと、夢見て努力してどうにもならないことが何度も続くと、気力を奪われていきます。普段は運命とか予言とか信じない人でも、「自分は何をやってもうまくいかない人間なのかもしれない」「成功する器ではないのかもしれない」「愛される人間ではないのかもしれない」と思い始めます。そう思うのはつらいことですが、期待するつらさよりもそう思うつらさのほうが受け入れやすかったりもします。期待し行動し続けるというのは、すごくタフなことだからです。疲れ切った人間には、「自分はもともとこうだったんだ」という諦めのほうが優しく、受け入れやすいのです。

つらいときに諦めを考えること、自死について想像することは止めません。それが心を休めることもあります。見知らぬ人間に「生きろ」と言われるのこそ苦痛でしょう。

私は、このコーナーで、愚痴を言われる方の気持ちをなるべく理解したいと考えています。金づるさんの気持ちを、私が正しく理解できているとは思いませんが、想像すればするほど、無責任な言葉は言えなくなります。なので、もう、無責任な言葉を言おうと思います。

金づるさんは、「 作り笑いは完璧にできるため、人当たりはとてもいいです」と書かれていますが、たとえ意図してやっている作り笑いでも、人当たりよくできて、大勢の人と友達になれて、ということは、すごい能力なのですよ。誰にも迷惑をかけたくないから、と自分のことを誰にも話さずにいられるのもすごいことです。

どうせ死ぬなら、それらの、金づるさんが持って生まれた能力や、生きていくために身につけた能力という財産を、全部使ってから死ぬ、ということを考えてくれませんか。借金を返してからでもいいです。人当たりの良さを使って友達を作り、信頼できる人に自分のことを話してみるとか、なんでもいいから「今まで欲しても得られなかったもの」や、「自分が望んではならないと思っていたこと」をしてみてください。

私は、金づるさんが幸せな思いや楽しい思いをせずに死んでゆくなんて許せないんですよ。この世が理不尽なものだと知ってはいても、目の前で理不尽なことが起きるのは耐えられないんです。そんなのは、間違ってる。

悔しいし、怒りも感じます。どんな気持ちだろうと思う。けど、こんなおかしな世の中に復讐する方法は、輝きを発揮することしかないんです。女性が輝くとかそういうあれじゃないですよ。持って生まれたもの、自分に与えられた能力という財産を使って使って燃焼させながら生きていくことです。復讐してください。どんな苦しみも、金づるさんの輝きを消すことはできません。金づるさんの輝きを消すことができるのは金づるさん本人だけですし、活かすことができるのも金づるさん本人だけです。

エモーショナルなことを言うのは簡単です。こんなことを言うのは、勇気は要っても簡単なことです。力強い言葉を言ってくれなくても、ほんの少しでも金づるさんの心の重荷を聞こうとしてくれる人、理解しようとしてくれる人、不器用でも寄り添おうとしてくれる人、そういう身近な人を大事にしてください。強いことを言ってくれる人ではなく、近くにいてくれる人が大事な人です。

死なないでください。私からのお願いは以上です。


みなさまの愚痴を、雨宮まみが「穴の底」にてお待ちしております。長文大歓迎!
恋愛相手の愚痴も、職場環境にまつわる愚痴も、誰にも言えない愚痴も、「スポーツジムのおじさんの汗がキモイ…」みたいなしょうもない愚痴も、なんでもござれ。大なり小なり吐き出して気を楽にしませんか?
「どうしたらいいでしょう?」のような相談は受け付けておりません。ごめんなさい。


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雨宮まみ
雨宮まみ(あまみやまみ)
ライター。アダルト雑誌の編集を経て、フリーライターに。女性の自意識との葛藤や生きづらさなどについて幅広く執筆。女性性とうまくつきあえなかった頃を描いた自伝的エッセイ『女子をこじらせて』出版後、「こじらせ女子」がブームとなる。他の著書に対談集『だって、女子だもん!!』(ポット出版)、『ずっと独身でいるつもり?』(KKベストセラーズ)、『女の子よ銃を取れ』(平凡社)、『タカラヅカ・ハンドブック』
(新潮社)など。

「キレイになりたい!」と言えないあなたに。

『女の子よ銃を取れ』

他人の視線にビクビクしたくない、自分らしく堂々としていたい、かわいい、キレイと言われてみたい……そう思っていてもどうすればいいのかわからないし、「キレイ」への道が怖くてたまらない。
キラキラした「キレイになりたい」本を手に取ることすら怖いと感じるくらい、「キレイ」が重荷になっている人のための、自意識や他人の視線、自分の視線を解きほぐす本です。

雨宮さんより一言:
何をしても、何を買ってもうまくいかない、変われないしパッとしない……。そんな悩みは、本当は多くの人が持っています。それ以前に何をすれば、何を買えばいいのかもわからない人だってたくさんいます。この間まではわかっていたのに、急にわからなくなってしまった人も。そんなときに、自分を取り戻し、新しい自分を作り上げるヒントや、気持ちの持ち方の軸のようなものがあればいいなと思って書きました。落ち込んだときのおともにしていただけると嬉しいです。

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