2014.10.02

「不倫とニューワールドと消費者金融」 雨宮まみの“穴の底でお待ちしています” 第9回

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穴の底でお待ちしています

誰にも言えない、けれど誰かに言いたい、そんな内緒の悩みやモヤモヤ、しょうもないグチからやりきれないつらさまで、穴を掘ってこっそり叫んでみたい気持ちを発散する、「感情の吹きだまり」……。そんな場所がこのコーナーです。あなたのやるせない気持ちを、安心してブチまけてみませんか? 雨宮まみが聞き手をつとめます。長文の投稿歓迎いたします。

(ほい子/女性)
 はじめまして、雨宮さん。 あまりにもファンタジーな恋愛話で誰にも相談できないので、よろしくお願いします。 わたしはいい歳の独身の女です。 数年前から不倫しています。 話が合い、あっというまにそういう関係になりました。 妻子がいることは知っていましたが、好きになってしまい、自分でも驚きました。 相手のことが大好きで、今まで付き合ってきた男性とは段違いに惹かれています。こんなに好きになれる人はもう他にはいないと確信してしまっているので、絶望もしています。

  とにかく話をしていて楽しいのです。見た目はスーツを着た一般的なサラリーマンですが、実は超マニアックな人。好きなものに対する熱が強くて、そこにわたしも心を打たれてしまっています。他人とは思えないほど考え方や趣味は共通しているのですが、好みは微妙に違うため、話すたびに新鮮な発見があり、深く新たな世界を見せてくれます。 それから、わたしのことをとても考えてくれるというのも今まであまりない経験でした。くだらない話でもちゃんと付き合ってくれるし、わたしが受けた理不尽な仕打ちを相談したら本気で怒ってくれたり、ダメなことを叱ってくれたり。

 あと、ロマンチックなことを結構してくれるんです。誕生日になった瞬間に電話をくれるとか、夜道を歩く時は必ず手をつなぐとか、まめにプレゼントをくれるとか……まあ、わたしはいわゆるこじらせてる女なので、そういう女の子扱いのようなことに慣れがなく、でも実際されてみたらとても嬉しかった、ってことなんでしょうけど……。この前は壁ドンされまして、それはそれは興奮しました。こう書くと今までどんな薄いコミュニケーションで男と付き合ってたのかと思われてとても恥ずかしいですが、とにかく今の彼とは関係が濃密です。今までも同棲したり7年間付き合った彼氏もいたり、男性経験が乏しいわけではないと思いますが、今までの人間関係がいかに浅かったかということがヒシヒシと感じられるくらいです。 セックスの相性も最高です。ヤるたびによくなります。詳しくは省略しますが、ニューワールドと出会わせてくれて感謝しています。本当に世界が変わった感じでした。

  向こうもわたしのことを同じように思ってくれてるとは思うのですが、離婚する気はないようです。のっぴきならない事情でそれはできないと暗に言われました。 わたしは、できれば結婚したいと思っています。 わたしを一番に思ってくれる、人生のパートナーがほしいのです。 このままでは一生無理でしょう。 でも、やめることができません。 彼と別れることで新たな出会いがあるかもしれないけれど、こんなに好きになれる人は彼以外に存在する気が1ミリもしません。 実は、彼は以前にも不倫してバレて修羅場になったそうです。 いまはだいぶ普通に仕事もできるようになりましたが、その時に増えた借金がかなりあるようで、わたしが月に○万ほど渡しています。彼はいつか返すと言いますが、多分無理なので返してもらう気はありません。ちなみにわたし自身の貯金は使い果たし、先月は消費者金融にお世話になってしまいました。

  と、これだけの負の要素があるのにかかわらず、まったくもって彼を思う気持ちに揺らぎはないんです。 彼と一緒にいられるだけで幸せを感じてしまいます。 これがもし友達の話で相談を受けたとしたら速攻やめろと言いますし、どう考えても不幸になるパターンですが、どうしても自分ではやめられません。 彼のいない人生に幸せなんてない、と思ってしまいます。 そんなに稼ぎもないのに給料の半分を貢いで老後のお金を切り崩し、自分とは一緒になってくれる見込みもない男と週に数回、数時間会う人生。 わたしから別れを切り出さない限り、このまま関係は続くでしょう。 わたしも、普通に幸せになりたいと思っています。彼と一緒にいることが幸せなので別れる気はないのですが、やはり辛いのです。彼は家庭の話はほぼしません。でも、絶対に奥さんのことを悪くは言わないし、子どもが何より大切ということはなんとなくわかります。何年か前に不倫がバレて修羅場になった時、もう二度と修羅場はこりごりだと思ったようです(それでなぜわたしとこうなってる?と呆れることもありますが)。なので、離婚を切り出すことはないでしょう。 誰にとっての一番にもなれないって、それはやはり悲しいです。どんな記事や2ちゃんや占いを読んでも、別れた方がいいと書いてあります。だけど、無理なんです……。

  こちらからは緊急の連絡すらできない、彼の都合でしか会えない(大抵その日に連絡がきて会うためわたしは予定をほぼ入れられません)、朝まで一緒にはいられない(彼は一応帰る気でいます。10回に7回は帰れてないですが。お互い意思が弱く)、会う頻度はマチマチということもあり会えば必ずセックス(セックスは大好きですけど、俵万智の「逢うたびに抱かれなくてもいいように一緒に暮らしてみたい七月」、この気持ちほんとによくわかります)……なんでこんなに好きでいられるのか、自分でも不思議です。

  雨宮さんなら、自分からやめようと言えると思います。けど、わたしには無理です。彼のいない人生は考えられないです。毎日辛くても、会えないことになる人生はもっと辛いと考えてしまう。 文章が下手くそですみません。まだまだ書きたいことはあるのですが、流石に冗長なのでやめます。客観的に見てとても○歳の女の悩みとは思えない、気持ち悪い相談ですね。 わたしはどういった心持ちで毎日を過ごせばよいでしょうか。ご意見をいただけたら幸いです。

(※身元がバレる危険を考え、多少表現をぼかしたり、一部情報を伏せさせていただいております。)

 いやー、いつ来るかいつ来るかと思っておりましたよ、不倫の愚痴! この日のために用意しておいたシェイカーを振って、甘くほろ苦いカクテルでもお出しいたしましょう(シャカシャカシャカ)。こちら「Part-Time Lover」というオリジナルカクテルでございます……(トクトクとグラスに注ぐ)。もう一杯お飲みになりたいときは「昼顔」という新作をお作りしますね。

 こういう不倫の愚痴を聞いていて思うのは、不倫をしている人というのは本当に「のろけられない」苦しさがあるんだなぁ、ということです。ほい子さんの愚痴も、よーく読んでみると70%ぐらいのろけが含まれていますよね。「不倫」の文字だけ隠して読んだらもう、すっごいのろけですよね! 「なんでこんなに好きでいられるのか、自分でも不思議です」と書かれてますが、そりゃそうでしょう。ベタ惚れじゃないですか! いやー、穴の底に吐き出すのにこれほどふさわしい話題があるでしょうか。

 ほい子さんの愚痴には、読んでていろいろこう、グッと来るポイントがあります。「絶対に奥さんのことを悪くは言わない」。これは不倫男としては「奥さんの悪口を言う」男よりは明らかに格上です。「妻とはセックスしてない」「妻の悪口」を言う男は、不倫男の中では最下層ですからね。彼のこと、いい男だと言いたいんですよね、きっと。そしていろいろまめに女気分が上がることをしてくれたうえ、セックスの相性は「ニューワールド」、話してるだけで楽しくてたまらない……。わたしには、ほい子さんが誰かに言ってほしいと思っている言葉がわかります。「すごくほい子さんのことが好きなんだね~」「彼は、あなたにとって、運命の相手なんだね」「そこまで思える人なんて、一生に一度出会えるか出会えないかなんだから、大事にしたほうがいいよ!」。そんな類の言葉を、きっと誰かに言って欲しいのですよね。

 誰に言っても即座に「別れなよ」と言われる相手だということですが、まぁ、それはほい子さんご自身がいちばんわかってらっしゃることでしょう。まず、一度不倫がバレていることから、浮気性なのか、家庭や結婚という責任のある関係から逃げ場が欲しいと思ってしまう男性なのか、どちらかだろうと推察できます。それに重ねて、お金にもだらしない。文面から察するに、ほい子さんが払っているお金は、前回の不倫の慰謝料である可能性も高いです。社会的にあまり良い男性だとは言いづらいですし、ほい子さんのことを大切にしているとも言いづらい。ただ、同時にこんなのは別れる理由にならないこともわかります。「いい人間=魅力的な人間」とは限らないですし、社会的に悪い人間が、同時に魅力的であるという例も山ほどあります。その前提をすっとばして「そんなひどい男、別れなよ!」と言われても、おそらくほい子さんは「その通りだ」と思いつつ、どこか釈然としない気持ちを感じられることだと思います。

 私がこれまで発言小町や2ちゃんねるをウォッチしてきた経験によれば、彼が離婚してほい子さんのところに来るという可能性は低いでしょう。一度目の不倫を経験して別れなかった奥さんが、二度目で離婚するとはあまり思えないですし、客観的にこの男性が離婚後、養育費や慰謝料をきちんと払うとは思えないので、離婚するメリットが金銭的にないし、離婚が罰にならないと思います。

 私が個人的に感じている不倫の法則というのがあります。よく、モテ本なんかで「男は女に金を使ったぶんだけ執着するんだから、遠慮なくおごってもらったほうがいい」みたいなことが書いてありますよね。かなり古臭い手法ではありますが、心理としては「わかるな」と思います。時間や労力、お金をつぎこんだ分、何かを「取り返そう」として執着してしまう、という気持ちが人間にはあると思うのです。そして、不倫はその最たるものではないかと。どんなに希望がなかろうと、悪い点が見えていようと、時間も労力もお金も、他の男性と恋愛する機会、そして、結婚する機会も、普通ののろけ話や恋愛話をする機会も、ぜーんぶ捨てて相手との関係だけを選び取っているのですから、捨てたもののぶんだけ、どんどん執着が増していくと思うのです。「いつかは離婚して、私と結婚して」という形で。

 私は、ほい子さんがこの不倫から抜け出すことは、とても簡単なことに思えます。その方法は、ほい子さんが「彼に幻滅したくない」「彼に万に一つでも嫌われたくない」という気持ちを捨て、本当の自分の気持ちを言ってみることです。例えば、「結婚してほしい」と言う。これまで渡していたお金を渡さない、または「返してほしい」と言ってみる。答えは予想できるし、好きな気持ちは変わらない、と思われるかもしれません。けれど、そう言ったときの相手の表情を見ること、実際に返事を言葉で聞き、彼がほい子さんの「本音」にどういう反応をするか見るのは大事なことです。相手の愛情に対し不信感や虚しさが芽生えたあとの会話やセックスは、これまでとはたぶん、少し違ってくるはずです。

 こうしたアドバイスがどんなに不毛で虚しいか、私は理解しています。不倫をしていた人に、何度「そこまで苦しんでるなら別れなよ」と言っても無駄でしたし、具体的に彼の愛情に真実味がないことを言っても無駄でしたし、決意して別れたとしても、他人の言葉をきっかけに別れたところでまた何度でも関係は戻るんです。恋愛は、自分から断ち切る意志を持たない限り、誰に何を言っても、言われても、基本的には無駄なのだと思います。

 ほい子さんは、この関係を終わらせたくないのですよね。ハッピーエンドが迎えられるなら終わらせたいけれど、それが来ない以上、今のほうが彼を失った日常よりは幸せだと思ってらっしゃる。ほい子さんが自分で納得するところまで、行き着くところまで行かなければ終わらないんだろうなと思います。その「行き着くところ」がいわゆる修羅場や慰謝料といったやりとりになる可能性もありますが、これは、できれば経験しないでほしいです。純粋な恋愛だと思っていたものが法ではっきりと否定され、お金で決着をつけなければならなくなり、自分たちの恋愛によって傷ついた人たちの顔を見、あんなに尽くしたのに悪者になり、別れることを自分の意志でなく選ばされるというのは、耐え難いことだと思うからです。その場で彼がほい子さんにできることは、おそらく何もないでしょう。たとえ思い出でも、「素晴らしい恋愛をした」というものが残ればいいですが、そうした現実的な手続きを経てもなお「素晴らしい恋愛」だと思える確率は、ものすごく低いです。

 説教臭いことはなるべく言いたくないのですが、運命の相手だと思うくらい何もかもが合って楽しく、新世界を見せてくれるような相手が、あとで「とにかく早く死んでほしい」と思うほど嫌な人間に見えるようになったことが、私には何度かあります。それは、とてもつらい体験ではありましたが、そんなことがあって以来、私は自分の感情のすべてが絶対だとは信じなくなりました。もちろん、その瞬間には感じていることがすべてですし、全力で好きだと思い、失えば全力で傷つき悲しむのですが、心のどこかで1ミリぐらい「このことも、過ぎてしまえば痛みをあまり感じなくなるのかもしれない」と思うのです。不思議なことに、そのことが希望をもたらしてくれるのです。心が痛む数年の間、ときにはもっと長い間、「いつかは何も感じなくなるときが来る」と思えることが、心の支えになるのです。

 はっきり言うと私はほい子さんが金銭的にも精神的にも追いつめられてしまうことを一番心配しています。俵万智さんの歌を例に出されていましたが、俵さんの小説『トリアングル』はお読みになっているでしょうか。私はあの小説を読んで、恋愛にも才能というものがあること、欲しいものが何かはっきりわかっていない人間の恋愛は、恋愛のうちには入らないのだということを思い知りました。人生の中で強く打ちのめされた小説ベスト10に入る小説です。「自分にはこんな恋愛はできない」とはっきりわかったのです。どちらの恋愛が上かということではありませんが、たぶん、今のほい子さんにも、あのような恋愛は不可能だと思うのです。

 消費者金融の借金を返すことを最優先にしてください。お願いします。恋愛を失って気がおかしくなりそうなとき、お金がなければ心療内科に行くこともできません。命綱を一本、どこかに残しておいてください。相手には命綱があります。ほい子さんには、ない。命綱は自分で用意しておくしかないのです。それは、相手がほい子さんの命綱を持っていてくれないからです。それだけは理解しておいてください。「わたしはどういった心持ちで毎日を過ごせばよいでしょうか」とのことですが、自分の心と生活を最低限守ってください。彼との恋愛だけが、人生でいちばん素晴らしいことなのだと思い込まないでください。いや、思い込むのはしょうがないですけど、彼に人生を預けないでください。私はほい子さんの恋愛の行方より、ほい子さんの人生が心配です。


みなさまの愚痴を、雨宮まみが「穴の底」にてお待ちしております。長文大歓迎!
恋愛相手の愚痴も、職場環境にまつわる愚痴も、誰にも言えない愚痴も、「スポーツジムのおじさんの汗がキモイ…」みたいなしょうもない愚痴も、なんでもござれ。大なり小なり吐き出して気を楽にしませんか?
「どうしたらいいでしょう?」のような相談は受け付けておりません。ごめんなさい。


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雨宮まみ
雨宮まみ(あまみやまみ)
ライター。アダルト雑誌の編集を経て、フリーライターに。女性の自意識との葛藤や生きづらさなどについて幅広く執筆。女性性とうまくつきあえなかった頃を描いた自伝的エッセイ『女子をこじらせて』出版後、「こじらせ女子」がブームとなる。他の著書に対談集『だって、女子だもん!!』(ポット出版)、『ずっと独身でいるつもり?』(KKベストセラーズ)、『女の子よ銃を取れ』(平凡社)、『タカラヅカ・ハンドブック』
(新潮社)など。

「キレイになりたい!」と言えないあなたに。

『女の子よ銃を取れ』

他人の視線にビクビクしたくない、自分らしく堂々としていたい、かわいい、キレイと言われてみたい……そう思っていてもどうすればいいのかわからないし、「キレイ」への道が怖くてたまらない。
キラキラした「キレイになりたい」本を手に取ることすら怖いと感じるくらい、「キレイ」が重荷になっている人のための、自意識や他人の視線、自分の視線を解きほぐす本です。

雨宮さんより一言:
何をしても、何を買ってもうまくいかない、変われないしパッとしない……。そんな悩みは、本当は多くの人が持っています。それ以前に何をすれば、何を買えばいいのかもわからない人だってたくさんいます。この間まではわかっていたのに、急にわからなくなってしまった人も。そんなときに、自分を取り戻し、新しい自分を作り上げるヒントや、気持ちの持ち方の軸のようなものがあればいいなと思って書きました。落ち込んだときのおともにしていただけると嬉しいです。

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